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“使わなくてはならない”から“使いたい”へ!福祉機器の価値観を変え、コミュニティをデザインする次世代型パーソナルモビリティ「gp1」

gp1

このマシーンは一体何でしょう?
実は、パーソナルモビリティ(一人乗りの電動車椅子)なんです。

株式会社グラディエがデザインした、このモバイルモビリティ「gp1」は、従来の高齢者や障がい者が利用する電動車椅子や電動三輪車・四輪車とは異なり、新しいマーケットにむけてデザインされています。

同社はデザイン・建築設計の豊富な経験、そして欧州のモビリティや共生居住の研究活動をベースに「パースナルモビリティ事業」「シェアライフコーディネーション事業」「地域デザインブランド事業」を進めています。

高齢者になったとき、ポジティブに使えるパーソナルモビリティ

Creative Commons: Some rights reserved by Marcel Oosterwijk
Creative Commons: Some rights reserved by Marcel Oosterwijk

日本の電動車いすや電動三輪車・四輪車といった福祉機器の課題として大きく2点挙げられます。

1つめは大きくて幅をとるため、コンパクトな空間で暮らす都市生活では不便な面が多いということ。電車やバス等の公共交通を頻繁に利用する都市生活においては、そのまま乗り入れが出来なかったり、エレベーターを活用するためには大きく迂回をしなければならなかったりします。また家の中の置き場にも困ってしまいますよね。
 
一方、「gp1」は折りたためて、簡単に持ち運べます。都市部でのパーソナルモビリティの普及促進につながるはずです。

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折りたためて簡単に持ち運べる「gp1」

2つめの課題はデザインです。既存のもののほとんどは「カッコいい」とは言い難く、車いすに乗ることに抵抗感を抱く方は少なくないそうです。中には、「車いすに乗るくらいなら家の中にいる方が良い」と閉じこもってしまう方も。
 
それに比べて、「gp1」は圧倒的にスタイリッシュです。若者も「乗ってみたい」と思います。自分のおじいちゃんやおばあちゃんが乗っていたら、自慢したくなっちゃいますね。

実際、2012年東京デザイナーズウィークにて発表した際には60代の男性から「何ですかこれ?面白いし、格好いい」、70代の男性からは「今の電動車椅子は格好悪いけど、これなら良い」というポジティブな意見をいただいたそうです。


東京デザイナーズウィーク

移動を「楽しい」ものに

「gp1」が普及すると、個人の価値観だけでなく社会全体も変わっていきます。
まず、“移動する”ことを楽しむ人が増えるでしょう。

欧州で心筋梗塞を患った74歳の高齢者が電動四輪車にステッカーを貼って、フェラーリのオリジナルウェアを着て時速6キロで走りを楽しむという微笑ましいエピソードがあったそうですが、たとえ低速であったとしても移動の喜びは代えがたいものです。


フェラーリ風の電動四輪車

日本でも、パーソナルモビリティが普及すればどんな状況になっても“移動する”ことを楽しむ人が増えるでしょう。そうすれば、自然と外へ出る人が増え、経済効果や社会全体の活性化も期待できます。

また、個性的なパーソナルモビリティはコミュニケーションを生み出します。前方から素敵なモビリティに乗っている人を見かけたら「かっこいいですね」と思わず話しかけたくなるかもしれません。

実際、つくば市では、高齢者がセグウェイで地域の見守り活動をしたところ、子どもたちの人気者になり、声を掛けられることが多くなったそうです。住民の地域への関心が高まり、地域活性につながる。さらに、見守りをしている高齢者も仕事にやりがいを強く感じるようになったそうです。「gp1」 の普及はこのようなパーソナルモビリティによるコミュニティデザインの起爆剤となるかもしれません。

デンマークの福祉機器との出会い

「gp1」は一体どのような思いがきっかけとなってデザインされているのでしょうか。株式会社グラディエ代表の磯村歩さんにお話を伺いました。


磯村 歩さん

私はもともと、富士フイルムにプロダクトデザイナーとして20年間勤めていました。退職直前の2年間、ユーザビリティデザイングループ長として、社内外におけるユニバーサルデザインの普及促進に携わりました。

その中で、高齢者や障がい者と関わる機会が増え関心が強くなったのと同時に、利便性ばかりを追求する日本のユニバーサルデザインに疑問を抱くようになりました。「本当の意味での高齢化社会に向けたユニバーサルデザインとは?」を海外から日本を俯瞰しながら考えたいと思い、福祉先進国であるデンマークに留学しました。

デンマークには「ホイスコーレン」という別名「スクール・フォー・ライフ」と呼ばれる人生を考える学びの場があり、その中でも「エグモント・ホイスコーレン」という障がい者と健常者が24時間生活を共にしながら学ぶ学校を留学先に選びました。そして欧州の福祉施設や福祉機器展を数多く視察しました。

そこで多種多様なパーソナルモビリティに出会ったのです。楽しそうに様々な目的別に色や形の異なるパーソナルモビリティを障がい者が活用していることが印象的でした。中にはゴルフやアーチェリーができるもの、旅行先に持っていけるもの、川の中にも入っていけるものなどもありました。


デンマークの福祉機器

留学前にホームヘルパー2級の資格をとったのですが、その実習中に感じた日本の介護施設における電動車椅子や車椅子の活用シーンと比べ、それはとてもポジティブで快活な印象でした。

日本は超高齢社会を向かえ、これからパーソナルモビリティを活用するシーンも増えてくるでしょう。いつまでも生き生きと暮らしていける社会をつくり上げていくために、もっとポジティブに“使いたくなる”福祉機器が必要となってくるはず。そこで株式会社グラディエを起業し、パーソナルモビリティの事業をスタートさせました。

モビリティを身近に!

磯村さんはこうした経緯で起業し、「gp1」のようなパーソナルモビリティが自転車やバイクのような感覚で購入できる商品になり、広く普及していくことを目指しているそうです。そのために必要なことについてこう語ります。

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魅力的なパーソナルモビリティをデザインすることと同時に、交通環境の整備も不可欠だと考えます。そして地域住民のパーソナルモビリティに対する理解をひろめていくことも必要でしょう。パーソナルモビリティの進路を塞がないように、自転車やお店の商品の置き方などの気配りが街にあってこそ、パーソナルモビリティは普及します。

株式会社グラディエでは、次世代の街づくりを考える異業種連携団体「クリエイティブ・シティ・コンソーシアム」の活動の一環として、東急電鉄、セグウェイジャパン、WHILL、三菱総研とともに、二子玉川(東京都世田谷区)を舞台に試乗会やイベントを通じてパーソナルモビリティの理解と活用を広げていくための地域モビリティ検討コミュニティ「QUOMO(クオモ)」の活動を進めています。

今後も「パーソナルモビリティがある未来は楽しいかも」という気持ちを醸成していきたいと思います。

「パーソナルモビリティがある未来」は誰もがどんなときもアクティブでいられるもの。考えるだけでワクワクしますね。みなさんも一緒にそんな未来を創造しませんか。