みなさんは、日本にも難民がいることをご存知でしょうか?難民は、遠く離れたアフリカの地だけにいるのではありません。母国で迫害を受けて、命からがら日本へ逃げ延びて来た人がたくさんいます。
今回は、そんな彼らの相談役となり、支援をするNPO「難民支援協会」主催、丸の内の環境発信拠点エコッツェリアのものづくり研究会「3*3ラボ」共催の、日本で暮らす難民の故郷の料理を味わうチャリティーイベント「丸の内で囲む世界の食卓」についてレポートします。
世界の珍しい料理がずらり
会場に入ってみると、テーブルの上には日本のレストランでは味わえない珍しい料理がずらり。例えば、エチオピアのパン「インジェラ」は、野菜や煮込み料理などを載せて食べるのだそう。
こちらはミャンマー北部の山間に暮らすカチン民族の伝統料理で、ティラピラという川魚の蒸し料理です。
パキスタン料理の「バターチキンカレー」は、たくさんのスパイスのほか砂糖や牛乳、バターを加えたまろやかなカレー。同じくパキスタン料理の「ビリヤニ」は、結婚式などのお祝い事で食べられる、米と具材を混ぜた炊き込みご飯です。
クルド料理の「イチリキョフテ」は、クスクスでできた生地にトマトペーストと牛ひき肉の炒め物を包んで揚げたもの。イラン料理の「ザクロライス」は、サフランで色づけしたライスに鶏肉と乾燥ザクロを乗り付けた色鮮やかな料理…。日本のレストランで味わえない珍しい料理には長い行列ができるほどでした。
会場ではあちこちで乾杯の声が。ひとりで参加された方も多く、どんなきっかけでこの会場に足を運んだのかなど、様々な意見交換などが行われました。
また料理だけでなく、ミュージックパフォーマンスも。オリジナル曲とパワフルなコーラスが活気ある会場をさらに盛り上げてくれました。
居場所のない難民たち「5分が限界だ」
料理に音楽。楽しい雰囲気の中、難民支援協会の川勝さんから支援活動の現状についてお話をいただきました。
川勝さんによると、日本における難民支援は、とても厳しい現実なのだそう。2011年は1,867人が難民申請をしましたが、同年、難民として認定されたのはたったの21人。2012年は、既に2,100人を超えているそうですが、申請が下りるにはおおよそ2年、長くなると5年以上もかかるのが現実で、多くの難民申請者は過酷な生活にさらされながら、こうした期間を何とか過ごしていることを知りました。
ある難民申請者が、「5分が限界だ」と言っていました。この寒い時期に寝る場所もなく、体を温めるために夜中じゅう歩き続けて、ほんのわずかな暖をとるためにコンビニエンスストアなどに入る。でも、お店のなかにいる時間は5分が限界だと。あまり長くいると怪しまれてしまいますし、何か購入するお金も持ち合わせていないので、すぐにお店を出なければいけない。
実は今朝も、難民支援協会の事務所の前には、何人もの申請者が空く前から待っている状態でした。こうした現実があることを知ってほしいのです。
難民支援協会では、一人ひとりの難民に寄り添い、どんな状況にあるのかを丁寧に聞き、難民申請の援助をするほか、炊き出しの場所をご案内したり、無料で診断してくれる病院を紹介するといった、医・食・住の確保に向けた生活支援も行っているのだそうです。
「知ることから始めてほしい」
また、難民としての認定を受けた、イラン出身のマスードさんからのお話もありました。得意だという料理は、すべてお母さんから学んだそうです。10歳ぐらいから手伝っていて、母親とキッチンで過ごすのが好きだったとのこと。
難民支援協会は今月、難民の方のレシピを集めた料理本『海を渡った故郷の味-Flavours Without Borders』を発売する予定ですが、そのなかにイランのザクロライス、イエローライスプリンなど、マスードさんのレシピも掲載されているとか。
イランのザクロライス、イエローライスプリンは両方ともどこでも目にする事ができるパーティー料理だということも教えてくれました。材料である乾燥ザクロは、日本ではなかなか手に入れることが難しいのですが、味はちょっと梅干しに似ているのだそう。
1998年のクリスマスの時期に日本に来ました。当初は難民としてではなく、仕事をしに日本に来たのですが、そのあと知り合ったパートナーがクリスチャンで結婚後に改宗しました。母国はムスリムで、母国ではクリスチャンであることで迫害を受けてしまうんです。母国に帰れなくなり、難民申請をしました。
現在は難民申請を得て、リフォーム会社を経営しています。会場のみなさんにお伝えしたいのは、まずは知ってほしいということ。そこから始めてほしいと思います。
さらに、難民支援協会の事務局長である石川さんからお話をいただきました。
私たちは、日々“簡単ではない”現場にいるのですが、みなさんと今日お話させていただいてもらった元気を、難民の方に寄り添う支援の力に変えていきたいと思います。ぜひみなさんにも、難民支援の輪のなかに入っていただきたいと思います。
ボランティアといった方法もありますし、一日50円で始めていただける継続的な支援という方法もあります。それから、日本にいる難民のことや、こういった私たちの活動、今日のイベントのことを他の方に伝えていただくというのも、もちろん支援になります。より多くの方に支援の輪のなかに入っていただければと考えています。
難民の方のレシピを集めた料理本『海を渡った故郷の味 – Flavours Without Borders』は、レシピの聞き取りから撮影まで、難民の方と一緒に作り上げたもの。故郷の味を再現しようとすると日本では手に入らない食材もありますが、こうした方が美味しいんじゃないか、と手を加えながら、ここにしかないレシピになっています。
さらに、すべてのレシピにコツが掲載されているほか、食を通じて難民の方を知ってほしいということで、その料理にまつわる思い出も掲載されているのだとか。書籍の売上は難民支援活動に使われます。発売情報など、事前にお知りになりたい方はウェブサイトからお申込みができます。
ぜひみなさんも食べることから、難民支援について考えてみませんか?