妊娠について、どうしても「男性は経験できないもの。だから男の人はいろいろ理解してくれない!」とされてきました。女性は、妊娠するとだんだん身体が変化し、それに伴って、心も変化していきます。そのそばで、男性ができるのは見守ることだけ。
しかし、男性でも、おなかの中の赤ちゃんとコミュニケーションをとったり、だんだん重くなっていくお腹や、そのあたたかさ、はじめて赤ちゃんがお腹を蹴ったときのよろこびを感じたい!という方も、少なくないのでは?そこで、お母さんと“いっしょの経験”ができるように開発されたのが、妊娠体験システム「MommyTummy」です。
80%のお母さんが「実際の胎動によく似ている」と回答!
神奈川工科大学 情報学部情報メディア学科 小坂研究室で開発されたこのシステム。出産経験のあるお母さんたちにも体験していただいたところ、なんと80%の方が「実際の胎動によく似ている」と答えています。男性だけでなく妊娠経験のない女性から子供まで、世界中の約1,700人の人が、”お母さん”体験をしてきました。
ポイントは、赤ちゃんの“重さ”だけではなく、映像・音・視覚・そして体感できること。それにより、ママたちの苦労とよろこびを一段と感じることができるのです。
今までの妊婦体験ジャケットは、実際のところ赤ちゃんの“体重”だけでした。例えば、妊婦さんが大変と感じている、寝ている体勢からの起き上がりも、筋肉のある成人男性だと「えいっ!」っと難なく起き上がってしまいます。これでは、妊婦さんの大変さも理解できないし、赤ちゃんの実感が体験したとはいえないかもしれません。
「MommyTummy」の素敵なところは、「妊婦さんの身体的負担」だけではなく「妊婦さんのよろこび」も体験できること。赤ちゃんのぬくもりや、お腹の中の赤ちゃんからお腹を蹴られる感覚、そして赤ちゃんと一体になっていることで行われるコミュニケーションをも体験ができます。
秘密は”水”
その秘密は、水を使っていること。
水槽からジャケット内の水袋へ水を流すことによって胎児が徐々に重くなっていくことを表現しています。この水は羊水と同じ37〜38度と温かく、胎児の体温を感じることができます。他にも振動を使って胎児が動いているように感じられるなど、本物に近い感覚を体験できるのです。
このシステムの体験時間は約2分間。短く感じられるかもしれませんが、妊婦さんが十月十日かけて、命を宿し、育んでいくまでの道のりがずっしりと詰まっているのです。
「いっしょの、経験をすること」の大切さ
妊婦さんの大変さを味わい、妊婦さんを助けるというのはもちろんですが、それだったら、お仕事で疲れているパパだって同じ気分かもしれません。でも負担だけでなく、うれしい気持ちやよろこびを“いっしょの”経験として体験できたとき、もしかしたら世の中はもっとすてきな連鎖が起こるでしょう。
「いっしょに、経験をする」と「いっしょの、経験をする。」これらは似ているようで、異なる二つのこと。“いっしょの経験を、いっしょに経験”したとき初めて、人はより深く共感し合えるのではないでしょうか。
このシステムを開発した小坂助教授の夢は続きます。それは、胎動通信の機能を持った「MommyTummy」を完成させること。妊娠中のママの胎動をそのまま反映させて、同時にパパも同じ胎動を感じられるようなシステムをつくったら、本当に“いっしょの経験を、いっしょに経験できる”日も、そう遠くはないかもしれませんね。
これからパパやママになるあなたも、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか?