以前、紹介した「太陽光を何に変えよう」コンテスト。株式会社ノーリツが主催するこのコンテストでは、まだまだみなさまからアイデアを募集しています。普段から太陽の恵みをたくさん感じているのなら、太陽に再生可能エネルギーの可能性を感じているのなら、ぜひこの機会に太陽光が私たちの暮しにしあわせをもたらすようなアイデアを考えてみませんか?
とはいえ、「自由にアイデアを出そう!」なんて言われても、急には難しいかもしれません。そこで今回は、コンテストの審査員を務めるThink the Earthの上田壮一さん、株式会社アクシス/多摩美術大学教授の宮崎光弘さん、そしてgreenz.jp編集長のYOSHの3人で座談会を開催。アイデアをどんなふうに出せばいいのか誌上レクチャーしてもらいました!
審査員を引き受けたきっかけは?
YOSH 今日はおふたりに、「太陽光を何に変えよう」コンテストにアイデアを出すにあたって、どう考えればいいのか、伺いたいと思っています。よろしくおねがいします!まずお伺いしたいのですが、上田さんと宮崎さんは今回、どのような経緯で審査員を引き受けたんですか?
右から上田さん、宮崎さん
上田 僕は今回、コンテストを主催するノーリツさんと一緒に、再生可能エネルギーをテーマとした社員や親子が対象のワークショップをつくっています。
ノーリツさんは太陽光発電・太陽熱利用システムをつくっているメーカーですから、当然、再生可能エネルギーへの想いがとても強い。そのおかげでワークショップは充実したものになりました。今回審査員を務めるのは、このコンテストがその活動の延長線上にあり、社員と外をつなぐ機会として企画されたものなので、喜んで参加させていただいています。
宮崎 僕はアイデアが生まれる現場にいたいという想いが常にあります。今回もどんなアイデアが集まるのか、そこにどんな可能性を自分なりに見出せるのかと思って参加させてもらいました。
YOSH 宮崎さんを審査員に推薦されたのは上田さんですよね。ポイントはどのあたりだったのですか?
上田 宮崎さんは多摩美術大学の教授を務めていらっしゃるのですが、学生からのアイデアを引き上げ、育てながら、最終的にデザインとして形に落とし込んでいくプロセスを常日頃から実践されています。そのプロセスをご一緒させていただく機会があったのですが、学生との関係をほんとうに上手に構築されています。それで、今回の審査員にぴったりなんじゃないかと思いました。
積み上げるアイデアと切り崩すアイデア
YOSH 宮崎さんは、大学の授業で学生さんからどんなふうにアイデアを出してもらっているんですか?
宮崎 学生にはじめから優れたアイデアを求めるのは難しいので、アイデアの芽のようなものをたくさん出してもらいます。たとえば興味のあるものを尋ねてみると、ある学生は『太陽』と言い、別の学生は『ウーロン茶』と言う。それがひとつだけだと発展しないのだけれど、太陽とウーロン茶を組み合わせることで、なにか生まれる可能性が出てきます。
YOSH なるほど。ちなみに、宮崎さんがこのコンテストに応募するなら、どんなアイデアを出しますか?
宮崎 う~ん、そうだなぁ。今度ゆっくり考えさせてください(笑)。あ、そうそう、いま話したのは何かを積み重ねることでアイデアを出す方法ですが、逆に最初から漠然としたゴールをイメージしてアイデアを生む方法もあります。“太陽光をつかって、こんなことができたらいいなぁ”という結果を最初に考えて、どうすればそれを実現できるか掘り下げていくという方法です。
シーンからアイデアを探っていく方法も
YOSH 僕の場合は、シーンから考えるようにしています。例えば『KINFOLK』という海外の雑誌があって、さまざまな小さな集まりのシーンが提案されているんです。たとえば、みんなでアウトドアウェディングをやってみようとか、手作りでジャムをつくってみようとか。そんなふうに、太陽光の力を借りて、みんなで目玉焼きをつくるとか、そんなシーンを考えてみるものいいヒントになるのかなと。
宮崎 それ面白いですね。情景を伝えられると、すごくリアリティが感じられます。子供の笑顔が浮かんできたりしてね。デザインをするときは、誰が使うんだろう、どんなふうに使うんだろうってイメージすることはとても大事なんです。具体的な情景があれば、審査員としてコメントもしやすい気がしますね(笑)
小さな太陽光パネルを使ってもいいんじゃない!?
上田 このコンテストのハードルがちょっと高めに感じられるのは、“太陽光パネルを利用したアイデア”というくくりがあるからなのかなと思っています。でも、太陽光パネルの形自体も固定概念から抜け出していいのではないでしょうか。
YOSH たとえば、ミニチュアサイズの太陽光パネルを使うとか?ペットボトルに小さな太陽光パネルをつけたら、遠足のときにウォーマーとして使える、みたいな。
上田 そうそう。あと、今回のコンテストの応募要項には外れてしまうけど、太陽光パネルが景観を美しくしているか、という課題はあると思うんです。パネル自体もデザインできるならデザイナーにとっては興味深いコンテストになるでしょうね。
宮崎 パネルそのもののデザインは今後より重要になってくると思います。
上田 技術者への挑戦状みたいなユニークな提案を見てみたいですよね。
アイデアを考えると、わくわくしてくる!
上田 アイデアの角度はいろいろありますが、一番わかりやすいのは、まず最初に、電気や熱を使うものってなんだろうかと考えて、その供給源を太陽光にしてみるという発想かもしれませんね。太陽光を使ったトースターとか。
宮崎 使う人を限定して考えてみるのもいいかもしれませんよ。たとえば、「家族の中でお母さんしか使えないエネルギーがあるとすれば、それは何か」とか…。
YOSH 限定って面白いですね。スマートメーターが広がれば、どこでできた電気なのかもわかるようになるので、太陽光で充電しないと聞けないラジオ番組とか、そういうプレミアムな展開も面白そうです。
上田 コミュニケーションディレクターの佐藤尚之さんが書いてたんですが、「自分ならどうする?」と考えると限界がありますが、「別の人ならどう考えるだろう」と発想すれば、アイデアは無尽蔵に湧いてくるって。
YOSH たとえば、オバマ大統領だったらホワイトハウスで太陽光を使って何をするか考えてみるのもワクワクしますね。
コンテストが終わったあとも大事!
YOSH 今日はアイデアを出すためのヒントがいろいろ出てきて、僕自身とても楽しませていただききました。ありがとうございます!
ただ、最後に少しだけ思うことを…いつも審査員をやっていて思うのは、たくさんのアイデアを受け止めるまではいいですが、コンテストが終わった後、それらのアイデアはどうしたらいいのか、いつも気になったりもします。その後のプロセスまで考えておくのも審査員の責任なのかなって。
上田 それなら、たとえばアイデアを応募した人だけが参加できるワークショップを開いて、まだデザインとして完成していないアイデアを参加者同士がブラッシュアップしてもいいんじゃないかと思います。ノーリツの社員の方にも参加してもらって、みんなで考えたらおもしろそうですよね。
YOSH 確かにそうですね。こういうコンテストでは、「完成されたアイデアを出さなくちゃ」と思いがちですが、一つひとつの小さなアイデアのいい部分を組み合わせれば、あっと驚くようなアイデアに生まれ変わることもあるかもしれません。「太陽光を何に変えよう」といういい意味で広いテーマだからこそ、ささいな思いつきでもいいので送っていただくのもいいかもしれません。
というわけで、「太陽光を何に変えよう」コンテストは、まだまだアイデアを募集しています。小さなアイデアこそウェルカム。たくさんのご応募、お待ちしています!