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語り、読み、話すことで大切な本との出会いをしなおす。green drinks 原宿「books for Lifeにもっと近づく夜」[イベントレポート]

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9月22日、ソーシャルラウンジAJITOで、若者のためのgreen drinks Harajukuのvol.3「【gd books】~books for Lifeにもっと近づく夜」を開催しました。

gd Harajukuとは「何かアクションを起こしたい!でもきっかけがない!」というくすぶる若 者に、火をつけて、行動につなげていこうというもの。原宿で若者のためのコミュニティを広 げていこうというgreen drinksのカタチなのです(毎月第4土曜日の夜に開催)。

今回のgd Harajuku vol.3では、今までのスタイルとは異なる、本を題材にした「gd books」 を企画しました。この企画運営の中心になったのは、いつものオーガナイズメンバーではな く、gd Harajuku vol.1、vol.2の中で知り合った若者の6人。まさに、gd Harajukuからきっ かけを得てプロジェクトに進んだ オーガナイズチームだったのです! はじめての運営を手さぐり手さぐりで行いました。お一人おひとりに支えられて出来上がったあの夜「gd books」のふりかえりを。

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5色のグループに分かれて、しばしのサンドウィッチタイムから始まる「gd books」。軽食と してサンドウィッチをお出ししたことに、実は意味があります。それは、かつて生きた読書家たちが片手で本を読み、もう片手で手を汚さずに食べることのできたサンドウィッチを好んだ、という話を聞いてのこと。

また、飾りBONと呼ばれる本が壁の至るところに飾られるなど、27 日のAJITOは、books for Lifeを想像させるブックスペースにデザインされていました。そんな100冊以上の本に囲まれる中で行われるのは、OSHIBONシェア。OSHIBONとは、書店 に平積みされた1冊ではなく、あなたとのストーリーが詰まって、あなただけの1冊になった本のこと。それはもうすでにただの紙ではなくなり、あなたにきっかけを与え得る力を持ちます。

gd booksは、「本と、であう。人と、であう。」というテーマのもとに、OSHIBONを語る、 読む、話す、3つのシェアワークを通して、あなたが本と「であいをしなおす」こと。さらに、 あのOSHIBONを持ってきた「あの人」との出会いをもたらすことを目指しました。お越しいた だいていない方も、ぜひ文章を追って想像して、あの夜を味わっていただければと思います!

まずは、本と切っても切り離せない関係のおふたりにゲストとして、OSHIBONのお話をしてい ただきました。おひとり目は、塚田 有那さん。有那さんは『BRUTUS』『Hanako FOR MEN』などの記事の編集からアート関連イベントのコーデ ィネートまで、フリーランスのエディター・ライターとして様々なお仕事を手がけていらっし ゃいます。

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塚田 有那さん

さらに、科学と異分野をつなげるプロジェクト「SYNAPSE Project」のエディター・コーディネーターさんでもあります。このSYNAPSE Projectは、専門家だけが理解できるものと感じられがちの科学を何かとかけ合 わせることで、学問の魅力をより身近に、より魅力的に、より多くの人に届けようとするも の。社会・環境・アート・デザイン・建築・メディア等の専門領域×科学×編集が繋がる可能性 について、有那さんは話してくださいました。

特に、デザインの力・編集の力を通して科学を伝えるフリーペーパー「SYNAPSE」は、 プロジェクトの中心になっています。vol.1は「パターン・カタチ・リズム」、vol.2は 「光」のテーマが組まれており、きれいな画と、科学に馴染みのない人にも興味を惹かせる問 いかけが、ページを捲る度にすっと視界に入り込みます。

入門書のように単に易しい表現で科 学を伝えるのではなく、そしてもちろん敷居の高い科学ではなく、読み手の知的好奇心をあら ゆる方面に拡張させる科学が編集されているのです。当日もSYNAPSEを手にとった方から、 「ファンになった!」という嬉しい声をお伺いしました。

SYNAPSE

さらに、SYNAPSE Projectについてのお話に負けず劣らず、OSHIBONトークにも刺激的なフレ ーズが投げ込まれます。有那さんのOSHIBONは、『三島由紀夫レター教室』。この本は、5人 の登場人物の手紙のやりとりだけで全編が構成されているという珍しいスタイル。手紙の文章 や余白から、人物同士の関係性、人となりや嗜みを、読み解いていくのが非常に面白いのだと 言います。

恋愛、嫉妬、裏切り、借金など愛憎溢れる手紙が飛び交う中で「人間ってこうなん だ」という納得や、二者間に生まれる独特の関係性・人物像があるということ、密封された手 紙は一人だけの世界なのだということを思わせられる1冊だそう。ちくま文庫の出す三島由紀夫の本(その他に『命売ります』など)は他とひと味違うのだという有那さんのお言葉が心に残り、 あれから書店でチェックした方は多いはず!

さらに、「みなさんOSHIBONって選べましたか?私は無理でした、1冊に絞るなんて。」と言い、もう1冊。それは、写真家ダイアン・アーバスの写真集『dianc arbus』。スタンリー・キ ューブリック監督の『シャイニング』の原型となった双子の写真が表紙を飾る写真集です。

有那さんは、

双子が並んでいるだけなのに、とても違和感を感じたんです。中にもそういう写真が多くて、社会の一端を担う普通の人ですらなんだかすごく見えるときがある。ああ、人間はある一瞬こういう顔をするなって思う。嫌だな、気持ち悪い、と思って、写真がひっかかるんです。

と話してくれました。有那さんの「いちばん見返した」本であり、「死ぬ前にぼけて色々なことを忘れても、この本は死ぬ前に思い返すと思う」本だそうです。

次に、タナカホンヤ店主の田中さんにお願いしました。タナカホンヤは、根津にある古書&ギャラリー。味のある本屋さんの多い根津に、 田中さんが本屋さんを構えたのは今年の5月のこと。田中さんは、2010年の秋、那覇の世界一狭い本屋「とくふく堂」のスペースに、1か月限定の古書店を開きました。その1か月を皮切りにうずうずし出した田中さんが、はりきって開いた本屋さんです。

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田中さん(左)

タナカホンヤの特徴は、多くの古本屋さんのように買取をした本を売るのではなく、田中さんの言葉をお借りすると「自分の持つ本をそのまま持っていって、ただ売っているだけ」 というところ。田中さんの道すがらであった本がお店に持ち込まれているので、お店の本棚 を見ると田中さんの本棚を見せてもらっているような気分になるお店です。田中さんのおおらかな人柄によるところが大きいと思うのですが、とても居心地が良い、町に開かれた本屋さんです。

「近所の子どもたちもよくお店に来てくれるんです。あ、そう、OSHIBONですよね」と言う田中さんのOSHIBONは、ある神田の古本屋さんで購入したという『サハラ幻想行』。

たまたま手に取ったんです。古本屋さんって、色んな本がわさわさあって、興味がないような本とも出会えますよね。そこが古本屋さんの好きなところです。

写真集のような砂漠の旅行記をめくって、

過酷な環境でこそ、人は色々と生きることについて 考えます。世界がどうあるかではなくて、世界があることがまず凄いのだ、って。写真がとて も神秘的なんです。旅が好きでね、砂漠に行ってみたいなぁ、と本屋さんで思いました。

田中さんもお話しながら、古本屋さんでであった日を思い出しているよう。旅と写真が好きな田中さんにかちりと焦点が合い、田中さんを砂漠にスリップさせた1冊です。

最後に、「古本屋さんを開きたいと思っている人に一言アドバイスは?」と伺うと、

買取だと古物商の資格(古物を売買する資格)が必要だけど、古本屋さん同士のつながりかな?それなら紹介します。あとは、一箱古本市をきっかけにして、実際に古本屋さんを始める人もいるな。うん、がんばってください。

という田中さんらしいお返事に、聞き手のみなさんも和みます。

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そして、いよいよ本好きたちのワークタイムが始まります。 まずは「語る」シェア。ここでは、大きなえんぴつをトーキングスティック、砂時計を時間の 目安にして、各グループでそろそろとOSHIBONとのストーリーが語られます。ここで忘れないでいてほしいのは、OSHIBON「の」ストーリーなのではなく、OSHIBON「との」ストーリー だということ。OSHIBONを人に勧めることはしないでください、「この本は」「この本が」で はなく「私が」という主語を使ってください、語るシェアはそう説明されます。

そのため、語られるストーリーはとてもパーソナルなお話に辿り着くことが殆どです。字の通 り、人それぞれとしか言いようがありません。両親が教えてくれたこと、奥様とのなれそめ、 めざす人生、他者との関わり、本の余白に感じるちからの話。1冊のOSHIBONがあなたにとってどんな世界のトビラになったのか、それぞれ丁寧にストーリーが紡がれてゆきます。

その場で語られる言葉に耳を傾けていると、出会ったばかりの方のOSHIBONがなんだかすごい 1冊に思えてきます。ただ、それは本だけの力ではありません。本を語るべきすごいものに読み解いたのは、間違いなく読み手の力であることも感じさせられます。

語る声でAJITOがいっぱいになったころ、次の「読む」シェアに向けて準備を始めます。それは、OSHIBONに挟むしおりとmy obiという帯作り。しおりには、そのOSHIBONのいちばんぐっときた一節をページナンバーとともに書き込みます。また、my obiには文字や絵を自由に書き込みます。

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OSHIBONとのストーリーを言葉で語った後、次にobi 作りをすることで、これまでOSHIBONに感じてきた感慨をもう一度深めます。「読む」シェアの際には、まだ出会わぬ誰かがこのobi を頼りにOSHIBONを手に取って読んでくれるかもしれないのです。OSHIBONを、「あなたが紹介する本」として伝えるために、それぞれ手を動かす時間です。

そして、準備が終われば、おまちかねの「読む」シェアの始まり!窓側一面のOSHIBON棚に、30冊のOSHIBONが並べられるのは、なんとも思い入れ深い情景です。しかし、思いに浸る暇もほどほどに、手書きのフレーズが巻かれた本はみなさんの食指が伸びる本ばかり。気になった本を手に取り、ゆっくりと椅子に座って読むのです。

そこで、惹かれた本には、その本の持ち主カードに、いいね!の付箋に名前を書いて貼ってお きます。それは、あなたのFacebookメッセージに後日贈りもののようにお届けする「あなたが いいね!をしたあの人の本」「あなたの本にいいね!をしたあの人」リストに繋がります。

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そして、実は「読む」シェアと同時に「話す」シェアも始まっています。 誰かのOSHIBONを読むとき、持ち主カードに自分のリーディングカードを同時に貼ることで、 誰が自分の本を読んでいるのか分かる仕組みになっています。ふらっとOSHIBON棚の前に行くと、自分のOSHIBONを誰かが読んでいるのが分かり、嬉しくなるのはもちろんのこと。さらに、その読み手が近くの椅子で自分のOSHIBONを読んでいたりするのだから、話しかけたくな るというわけなのです。

「話す」シェアは人と話すこと、自然と知り合ったふたりの間に「どのOSHIBONを持ってきているの?」なんて話題も繰り出されます。OSHIBON棚と飾りBONに囲まれたAJITOで、誰かの本をひとり読む、1冊の本のページをふた り捲る、本を片手に会話が弾む。こうして、本と人がであう夜「gd books」は幕を閉じました。

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お越しいただいたみなさま、応援していただいたみなさま、そして有那さん、田中さん、本当にどうもありがとうございます。やっぱり本っておもしろいな!と再認識するきっかけや、 本との出会い、人との出会いをみなさまにお届けできていたら、それは本当にこの上なくうれしいことです。

本が好きだという気持ちで「何かできるんじゃないか」この思いつきを信じて、 gd books企画チームは今後「BON BON FACTORY」という名前で、books for Lifeを掲げて活動していきます。応援をどうぞよろしくお願いいたします!

次回のgd Harajuku vol.4は通常営業に戻り、ゲストの方より思いつきを形にする方法を学びます。みなさんの中にくすぶる火種を刺激できるように、新たなプロジェクトをまた生み出す ことができるように、精進してまいります。次回も第4土曜日、11月24日19:00に原宿AJITO でみなさんにお会いできますように!

(Text::Saki Sugahara, Photo:山本 遼)

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