都内近郊では代々木公園をはじめ、大きな公園で週末ごとにおこなわれているフリーマーケットやフェスティバル。音楽だったり、様々な国にフォーカスしていたりと個性あるイベントも多いので、行ったことがあるという人も多いのではないでしょうか。
でも、もし「こんなイベントがあったら、もっと楽しいのに!」と、わくわくしてしまったら、あなたならどうしますか。
イベントに限らず、周りを見渡してみると様々なモノやサービスなどが提供されているので、なかなか自分でつくってみるという発想自体が無くなってしまっていたりするもの。でも、自分で何かをつくり上げるということはとても刺激的で、なにものにも変えがたい楽しみです。そう、規模を考えなければフリーマーケットやフェスティバルだって、自分たちだけでも開催できちゃうんです。
今回、自分たちでマーケット(マルシェ)を作っちゃおう!という試みを行ったのは、NPO法人「パーマカルチャー・センター・ジャパン」に関わるメンバーが中心になって作られた「Art & Green Project」。
6月30日(土)に、都内のキャンプ場で「第1回Art & Green Marche ~好きなことを分かち合おう!わくわくがこだまする1日~」と題して開催されたこのマルシェは、第1回目ということで関係者を中心としたものの合計83名(!)が集まり、賑わいを見せました。その様子をレポートします。
「気持ちが込められた作品を作り、出品する」という楽しさ
押し花キャンドルやポストカードも自分で作りました!
梅雨真っ只中とは思えない晴れ間が広がる緑豊かなキャンプ場。絶好のマルシェ日和となったこの日、参加者を楽しませていたのは、果実ドリンクの「ヒナタノ食堂」、酵素ジュースと野草茶の「やまののみものプロジェクト」、フェアトレードのスパイスを使ったカレーを作った「トランジションタウンよこはま」などの飲食系をはじめ、カイロプラクティックやマッサージなどのボディケア系、そしてモノ部門では、流木と植物を使った雑貨や押し花キャンドルなどを作って持ち込む方も。
また、以前greenz.jpでも紹介した「Nieve(ニーブ)」も新島たまねぎバーガーを提供していました。
そのラインナップを見ただけでもそれぞれの個性を感じますが、実はこのマルシェのテーマのひとつは、「気持ちが込められた作品を作り、出品する」こと。マルシェそのものだけでなく、提供する品物自体も自分で作り、それを喜んでもらうことは、ただのモノの売り買いだけでは得られない充足感を感じることができます。
「気持ちが込められた作品を作り、出品する」というテーマがあったことで、はじめて自分の作品を作って人に何かを提供する側になったひとも多くいたようです。たとえば、フィンランドの伝統装飾「ヒンメリ」を作ってきた方もそのひとり。
自分は今まで人に喜んでもらえるようなものは何も作れないと思っていたけど、このマルシェで何が作れるかと考えて、わずかでも作品を作ることができ、しかも欲しがってくれる人がいてうれしかった。
自分でもやればできると思えたし、作品を作っていた時間はすごく楽しいひとときだった。このマルシェは次に繋がり、広がる可能性がある場だと感じた。
お金さえも自分たちで作る?
マルシェで使われた地域通貨
「Art & Green Marche」では、出品者が提供するものを自分で作ること以外にも、既存のマーケットのあり方に自分たちらしいアイデアを加えて、新しい市場としての可能性にも挑戦していました。
それが地域通貨の導入です。地域通貨とは一般的に普段私たちが使っているお金とは違い、顔の見える地域のコミュニティなどで発行、使用されることがあったもの。通貨としての価値が、使用する人同士の信頼によって成り立っているという意味では、普段使っているお金とまったく同じです。
私も「Art & Green Marche」で地域通貨を使ってみたのですが、これが面白い!私と同じく地域通貨をはじめて使ったという参加者からはこんな声も。
経済のことはよくわからないけど、地域通貨のことを聞いて、お金って自分たちで作れるんだと思った。今のままの仕組みではリーマンショックやギリシャの債務危機の問題は解決できない。地域通貨のような選択肢があるのはとてもいいこと。
地域通貨というツールはおせっかいみたいに、誰かに思いやり、思いやられることに似ているように思った。人と人との助け合いのイメージ。
なお、今回の地域通貨は次回のイベント時にも引き続き使用可能とのこと。参加者にとっては持続可能な経済のひとつの形と、その可能性を感じることができる貴重な体験となったようです。
「つかいびと」から「つくりびと」へ
イベントの最後にはキャンプファイヤーを囲み、NPO法人「パーマカルチャー・センター・ジャパン」共同代表の設楽清和さんと、地域通貨についての著書や「プロジェクト99%」の活動で知られる安部芳裕さんの対談「新しい市と経済」が行われました。
設楽さん モノを作る「つくりびと」とモノを使う「つかいびと」という言葉で言うと、今の人の多くは人が作ったものを使う「つかいびと」。「つかいびと」はモノを使って使えなくなったら捨ててゴミになる。でも「つくりびと」になるとすべてが素材になるからゴミはなくなる。しかも、「つくりびと」は何かに依存しなくていい。食べものも、家も、着るものだって作る。
そうすると大きなシステムがいらず、自分のまわりのものだけで生きていける。自分の周りのローカルでつくれないものは市(マルシェ)に出て交換する。これをベースに経済を考えていけばいいと思う。
安部さん (これからの経済については)基本的になるべく小さな経済で生きていくことが必要だと思っている。人と人が助け合って生きていける、小さなコミュニティ。
本当は、農家は食べ物ができればできるほど豊かになるはずだけど、市場経済だと作れば作るほど値崩れして、作ったものを捨てなければならないというおかしな事になっている。今はそれらすべてをひとつの経済の中に入れて世界で競争しようとしている。これで世界中の人がうまく生きられるわけがない。
だから、何を消費するかということが日常のなかで一番大事なことになる。なるべく有機農業でつくっているお百姓さんから買う、あるいは自分で作る。その日常の消費と生産活動が世の中をかえる大きな力になると思う。
マーケットも、出品するものも、お金も、そしてこれからの経済のありかたも自分たちの手で作っていくこと。こうした楽しさと豊かさのひとつのカタチを提案する「Art & Green Marche」が、回を重ねるごとにどのように育っていくのかがとても楽しみです!
NPO法人「パーマカルチャー・センター・ジャパン」公式HP
「Art & Green Marche」設楽清和さん×安部芳裕さん対談「新しい市と経済」