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一番近くで島を見つめる”第三の目” NPOエクスブリッジがデザインするたくさんの小さなつながり [コミュニティデザインの現場から]

渥美さんの滞在は9月で終了。プレハブは、久高島振興会が活動を加速させるために採用するスタッフを待っています

渥美さんの滞在は9月で終了。プレハブは、久高島振興会が活動を加速させるために採用するスタッフを待っています

連載「コミュニティデザインの現場から」久高島編の第三回は、沖縄本島に拠点を置くソーシャルイノベーションカンパニー NPOエクスブリッジが島にもたらす、新しい風をお届けします。

「おはようございます!」島の宿泊交流館の中庭に建てられたプレハブからさわやかに出勤するのは、学生最後の夏を”島インターン生”として過ごす渥美明夏(さやか)さん。前回登場した伊豆和さんのもとで、交流館の受付業務などをこなしながら、「農村体験プログラムの企画を10本つくる」というミッションの達成にむけ、島の魅力を探す日々を送っています。

このミッションは、渥美さんの所属先であるエクスブリッジのミッションでもあります。エクスブリッジは、農林水産省の「食と地域の交流促進対策交付金」から予算を獲得したり、渥美さんのようなインターン生と協力して、伊豆さんや坂本さん(連載第一回第二回参照)が目指す島の進化を外から加速させるチャレンジをしています。

事業統括ディレクターの深田友樹英さんは、
「地域が元気になれば、日本が元気になる」と考え、この仕事に取り組んでいるそう。久高島以外に南城市でも、市民が主体的に自治に関わり、自立した地域社会が作られていくことを目指し、外からサポートするプロジェクトを手がけています。

琉球大学産学官連携推進機構が主催した、第2回沖縄県コーディネート活動ネットワーク推進会議で、久高島での活動を紹介する深田さん

琉球大学産学官連携推進機構が主催した、第2回沖縄県コーディネート活動ネットワーク推進会議で、久高島での活動を紹介する深田さん

「久高島に行くたびに、感謝の気持ち、人のつながり、幸福感など都市で失われがちな大切なものがたくさん残っていることに感動します。自治が保たれ、独特の文化、信仰の中で急速な開発がされなかったおかげなんだと思います。また、坂本さんや伊豆さんのような志ある地域の方が本当に魅力的。人生をかけて島づくりに取り組む姿勢に心を動かされます。私の人生のテーマは『人と自然が調和した幸福な地域づくりと、そこに必要な仕事を生み出していくこと』です。島の方の想いと共振していると感じるシーンが多く、同じ方向に向かって活動に取り組めている実感があります。私たちの役割は島の課題解決と明るい未来づくりに向けて、地域の当事者と外とのつながりをデザインすることです。志ある当事者に、資金や人、情報など必要なリソースをつなげ、地域資源と当事者の想いを仕事にしていく。そうすることで島の明るい未来に向けての推進力を生み出したいです。急速な社会の変化により、多くの離島、中山間地域が衰退しつつある中で、久高島が独自の道を見い出し、島の人も外の人も幸せでいられる場として、日本やアジアの離島、中山間地域のモデルになっていく。そんなことを描きながら活動に取り組んでいます。」

具体的には、

    ・ 島の歴史と文化、自然、暮らしを生かした交流プログラムづくり
    ・ 定期的に島を訪れる、農産物を買い支えるなどして、外から島を支えるパートナー集め(イベント「久高に集う日」)
    ・ 島を元気に、島で元気に。久高島パートナーの相互のつながりを深めるためのコミュニティ化(久高島パートナーホームページfacebookグループ「久高島パートナー」でいこう
    ・伊豆さん、坂本さんの右腕を採用する(東京仕事百貨に掲載 ※現在、募集は終了)
    ・ 島のおじい、おばあと親交を深め島内での連携づくり
    ・ 島の人が気づいていない島の魅力を見つけて記録する
    ・ 島の魅力を、メディアを使って発信する
    ・ 島総出で行う行事(公共スペースの清掃など)を手伝う、人を集める

などの打ち手を進行中。あの手この手で、小さなつながりづくりを積み重ねています。

そんなエクスブリッジの存在を、「志ある当事者」である伊豆さんや坂本さんはどのように捉えているのでしょうか。

「9年この島に住んでいても、僕は『島の人』ではない。一緒に課題を解決していくためには、境界線を溶かす必要性を感じています。エクスブリッジには、僕ら久高島振興会と『島の人』のつなぎ役を期待したい」とは伊豆さん。

9月23日〜25日に行った「久高に集う日その3」での一幕。参加者が島のおばあに家庭料理を教わりました

9月23日〜25日に行った「久高に集う日その3」での一幕。参加者が島のおばあに家庭料理を教わりました

「たとえば、9月の中旬にコーディネートしてもらった短期インターンの大学生3人が、イベントでおばぁに料理教室の先生をやってもらうために、振興会の人間として無邪気に島の人たちに入りこみ、話をし、巻き込んでくれました。」と学生インターンの働きに可能性を見出しています。また、「島の『観光スポット』ではなく、『コミュニティそのもの』に興味を持つ人が島にこれだけ来るんだ、ということを示すことで、島の人の意識が変わり、外の人が土地を借りられないという課題を解決する糸口できたらいいですね。」という期待も。

8月19日〜21日に行われた「久高に集う日その2」のメインイベントは、イラブーの燻製に使うアダンの実の採集体験

8月19日〜21日に行われた「久高に集う日その2」のメインイベントは、イラブーの燻製に使うアダンの実の採集体験

一方の坂本さんは、
「『久高に集う日』がきっかけとなり、外の人を迎える準備のために区長と小中学校の校長が膝を交えました。これが実は、島の日常にはないめずらしいこと。そして、島の人々総出で外の人をもてなし、一緒に島の未来を考えよう、という計画を共有することができました。島の人たちどうしで危機感を共有できていない現状に、さざ波を起こすことができたのでは」と、島の人どうしの「連帯」や「意識」に言及しています。

渥美さんとともに久高島プロジェクトに参加するインターン生の新嘉喜りんさん

渥美さんとともに久高島プロジェクトに参加するインターン生の新嘉喜りんさん

住民総出で共有スペースの手入れをする字清掃には、エクスブリッジのメンバーも全員参加

住民総出で共有スペースの手入れをする字清掃には、エクスブリッジのメンバーも全員参加

主役はあくまでも島の人。一時的に人手不足を解消したり農産物を売るだけでなく、島の人たち自身がチェンジメーカーに変身し、自ら進化を継続させていくための土壌づくりが、エクスブリッジの真髄なのかもしれません。

島や地域の未来、日本の未来、地球の未来をジブンゴトとして語れる仲間が、久高島にいます

島や地域の未来、日本の未来、地球の未来をジブンゴトとして語れる仲間が、久高島にいます

エクスブリッジ代表の今津新之助氏は、「久高島には今の日本が見失っている何かがある。」と言います。その何かとは、「見えないものに価値を置く文化」。

「以前、島に来て、『何もないけど、ここにはすべてがあるよね』と言った人がいました。実存する『モノ』があるから幸せなのではない。損得勘定的な生き方から転換した先にある、満たされた幸福感。それこそが、今の日本が求めているものなのではないでしょうか?そういう意味でも、これからの日本のモデルになれるし、したいと思っています。」

作家 池澤夏樹氏に「日本の根は沖縄にある。沖縄の根は久高島にある。」と語らしめた島から日本の再生をリードする。そのための「つなぎ役」に徹するエクスブリッジの活動を、今後も継続的にお伝えしていきます。

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【コミュニティデザインの現場から:久高島編】次回は、映画「久高島オデッセイ」プロジェクトで島を伝える大重監督を紹介します。(仮)