みなさん、9月21日は何の日かご存知でしょうか? 今年はあの9.11から10年、9月11日という日付は世界中の人が様々な形で記憶に留める日付となっていますが、その9.11が起きた2001年、9月21日こそが特別な日になるはずでした。しかし、一人の平和を願う男が待ち望んだその日は9.11の陰に隠れ、世界の注目を集めることはできませんでした。しかしその後も「平和の日」実現のために活動を続けるジェレミー・ギリを追ったドキュメンタリー『ザ・デイ・アフター・ピース』が9月11日から21日までの間、各地で上映されます。
映画は2002年のエジプトからはじまりますが、物語の始まりはそのさらに4年前に遡ります。役者をやっていたジェレミーは「平和」についての映画をつくろうと考え、同時に世界には平和な日が一日もないことに気づきます。国連は9月の第3火曜日を「平和の日」と定めるものの、特にイベントをやることもなく全く普及していませんでした。そこでジェレミーは「平和の日」を特定の日にちに決め、その日には全世界が1日だけでも停戦できるような日にしたいと考えるようになるのです。
そこからジェレミーの長く苦しい戦いがはじまります。国連に掛けあって「ピース・ワン・デイ」という活動を始めますが、その発足式に集まったのは友達ばかり114人、報道もされず、活動資金は自前、スタッフは両親という無力さ。
それでもジェレミーは諦めません、世界中を飛び回り、内戦や戦争に苦しんでいる人に会い、ダライ・ラマなどのノーベル平和賞受賞者に会い、国連人権高等弁務官に会います。実際に交戦地帯で平和活動をしている人たちにも会います。そこで誰もがいうのは「そんな日が実現したら素晴らしい」ということ、そしてついに国連決議を改正し、平和の日を9月21日に定めることに成功するのです。しかし、初めての平和の日を前にしたセレモニーが行われることになったのは2001年の9月11日。まさにセレモニーが行われようとしていたニューヨークで9.11が起きてしまいます。
それでもジェレミーは諦めずに活動を続け、とにかくいろいろな人に会います。特に平和のための活動をしている国連の職員や内戦に苦しんでいる人たちなどまさに戦争のただ中にいる人達に会い、その人達の声を危機、それを伝えるのです。アンジェリーナ・ジョリーやジュード・ロウというセレブも登場しますが、それよりもそういう当事者たちや国連で実査に行動している人たちの声が非常に心に響きます。
そして、そういう人たちと長い時間をかけて関係を築き、一歩一歩運動を前進させていくジェレミーに感心し、応援したくなってしまうのです。
そして終盤のハイライトになるアフガニスタンの旅には異常なほどの緊張感が漂います。その緊張感から見えてくるのは、みなが平和を望んでいるのに、どうしてそれがたとえ一日であっても実現しないのかという疑問。そして、その疑問を投げかけることによってジェレミーが浮き彫りにするのは、単純なはずのことを突き詰めていくと複雑で手に負えないものになってしまう現実の不条理さ、表面的な物事に捉えられ本質を見失ってしまっている人間の愚かさなのではないでしょうか。
「人が人に対して暴力を振るわない」という誰もが望んでいる状態に少しでも近づくために努力を続けるジェレミーの歩みが小さいながらも一歩を踏み出す時、じわじわと感動が生まれる。9月21日は、この映画を観てぜひ「平和」について考えてください。
※9月11日~21日のあいだ「UFPFF 国際平和映像祭2011映像ウィーク」と題して、この『ザ・デイ・アフター・ピース』の上映が各地で行われます。各地の上映予定はこちら。
2008年/イギリス/81分
監督:ジェレミー・ギリ
出演:ジェレミー・ギリ、ダライ・ラマ、ジュード・ロウ、アンジェリーナ・ジョリー、アニー・レノックス