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離島に根付いて11年の先輩チェンジメーカーが語る「久高島にしかない幸せな未来への鍵」 [コミュニティデザインの現場から]

Some rights reserved by hrassy

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田舎の自然に元気をもらい、おばあちゃんの屈託ない笑顔に癒されて心の洗濯完了!そんな休日を過ごしたとき、誰もが湧き出るような感謝の気持ちに浸るはずです。

そして、忙しい日常に戻ってからも、日本の古き良きコミュニティが、いつもどこかに存在してくれていることの豊かさは、きっと、見えないところで私たちを支えてくれているのではないでしょうか。

ところが。

そんな都会人の「無責任な期待」とは裏腹に、農山漁村や離島など、自然とともにある小さなコミュニティの崩壊は、確実に進行しています。一方で、劣化を食い止めながら、コミュニティの新陳代謝を高めて新しい息を吹き込み、地域の未来を守ろうとするムーブメントがあちらこちらで産声を上げてもいます。

連載【コミュニティデザインの現場から】では、文字通りコミュニティの現場から、「地域とともに生きること」に向き合うチェンジメーカーたちの生の姿やグッドアイデアをお届けしていきます。

島に根付いて11年の先輩チェンジメーカーが語る「久高島が教えてくれる幸せな未来への鍵」

今回の舞台は、沖縄本島の東の沖合約5kmに浮かぶ人口250人の離島、久高島です。

沖縄県には39の有人離島があり、久高島もその一つ

沖縄県には39の有人離島があり、久高島もその一つ

沖縄本島の東側に位置する安座真港から船で約15分

沖縄本島の東側に位置する安座真港から船で約15分

琉球の祖神アマミキヨが降り立ち初めて五穀がもたらされた場所として崇められ、今もなお、年間20回以上もの祭りを通して神話が伝えられている島。神聖な魅力に惹かれ、年間約1万2000人以上の観光客が訪れるこの島もまた、他の多くの地域コミュニティと同じように、過疎高齢化によるさまざまな課題を抱えています。

朝焼けをにじませる涙はどこから?  答えのない問いをめぐって心に静けさを取り戻し、ただ生きていることを感じる時間がこの島にはあります

朝焼けをにじませる涙はどこから? 答えのない問いをめぐって心に静けさを取り戻し、ただ生きていることを感じる時間がこの島にはあります

——島の暮らしを守ることの意味

「この島の未来に、私は多くのものを重ね合わせて見ています」と語るのは、久高島留学センターを主宰する坂本清治氏。ソーシャルイノベーターの走りとも言えるgreenz世代にとっての大先輩は、11年前に久高島留学センターを立ち上げました。センターでは、全国から小中学生を受け入れて共同生活を営み、島の小中学校に通いながら自律性を身につけさせる山村留学サービスを提供しています。

久高島留学センターを主宰する坂本清治氏

久高島留学センターを主宰する坂本清治氏

ここから島の小中学校に通う小中学生は現在15人。設立以来10年間で140人の卒業生が巣立ち、今では「小中学校の存続は留学センターにかかっている」と言われるほど、島の運営にとってなくてはならない存在になっています。

留学センターは、設立当初は島の宿泊交流館を間借りして始まりました。2004年から現在の専用施設で運営

留学センターは、設立当初は島の宿泊交流館を間借りして始まりました。2004年から現在の専用施設で運営

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久高島留学センター。15人の小中学生が寝食を共にする

15人の小中学生が寝食を共にする

ここにしかなく、今ならまだ間に合うけれど、間もなく消え去ろうとしている—坂本さんが「あと2年が勝負」と捉え、守ろうとするものとは一体何でしょうか?

 答えは、「コミュニティ」という言葉の根幹に切り込んだ「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」という概念の中にありました。ドイツの社会学者、フェルディナント・テンニースが提唱した、社会類型を定義する言葉です。

「生きる」ことへの学びを深める図書室。蔵書のひとつひとつが坂本さんの実践の奥に潜む知識の深さをうかがわせます

「生きる」ことへの学びを深める図書室。蔵書のひとつひとつが坂本さんの実践の奥に潜む知識の奥深さをうかがわせます

——ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

ゲマインシャフトとは、地縁・血縁・友情などにより自然発生し、深く結びついた有機的な社会集団のこと。対するゲゼルシャフトは、近代国家や会社、大都市のように利害関係に基づいて人為的に作られた社会を指し、テンニースは、人間社会が近代化するとともにゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ変遷していくと考えました。

坂本さんは、久高島の共同体を、「人間が疎外感を感じずに生を全うできるゲマインシャフトの名残がまだ死に絶えていない。」と見定め、山村留学活動の地に選んだといいます。現代社会に張り巡らされた「境界線」が強調するありとあらゆる疎外感を、和らげてくれる存在としてのコミュニティ。坂本さんは、久高島の共同体のあり方の中に、手放してはならない幸せな未来への鍵を見出しているようです。

そんな久高島の状況は、坂本さんが島に根を下ろしてからの11年間で確実に悪化してしまいました。
「たとえば、みんなで雑草を刈ったり道をきれいにしたり、共有のスペースの手入れをする。そういう、共同体の絆をつくってきたたくさんある小さな行事ひとつひとつが、高齢化し、人数が減ってしまって手が回らなくなってくる。そうすると、現実問題として、木が茂り過ぎてしまって通れない道が出てきたりする。畑も担い手がいなくなり、草がボーボーになっていく。そうやって、どんどん廃れさびれていくんです。」

字清掃の日。朝9時に集合場所に集まって、区長の指示で班ごとの持ち場をきれいにします。こういった小さな行事ひとつひとつが、地域の絆を育てててきたんですね

字清掃の日。朝9時に集合場所に集まって、区長の指示で班ごとの持ち場をきれいにします。こういった小さな行事ひとつひとつが、地域の絆を育てててきたんですね

台風で倒れ、道を遮る倒木。人の手が入らなければ、暮らしの場は自然に風化し廃れていきます

台風で倒れ、道を遮る倒木。人の手が入らなければ、暮らしの場は自然に風化し廃れていきます

この現状をなんとかしようと、坂本さんは引退したおばあから畑を預かって耕し、本島から草刈り機を調達してグラウンドや広場を整えたりしながら、自分の後に続く子どもたちを叱り育てています。
「今、都市の若者がシェアハウスなどで生活を共にし始めていることは、社会がゲゼルシャフトの先のゲマインシャフトに向かっている象徴だと思います。未来は若者や子どもたちがつくっていくもの。自分にできることは、自分が考えるよりもいい未来をつくってくれるはずの子どもたちに力をつけさせることです。これからは、『自然に触れたい』というだけではなくて、島や社会の未来をつくる責任あるリーダーとなる子どもを育てなければならない。」

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こう語り実践する坂本さんを始め、島の外からやってきて根付き、自分なりの立ち位置でコミュニティをサポートしたいという人がいます。

次回は、観光や介護の面から島をサポートしたいと話すNPO久高島振興会の伊豆さんのお話です。

なお、久高島留学センターでは、スタッフを若干名募集中です。期間は9月14日まで。ご興味のある方は東京仕事百貨の求人ページ「未来の島」をご覧ください。

久高島のパートナーになって島を応援しよう