坂茂(ばん・しげる)氏は、日本を代表する建築家のひとり。紙を使った建築を考案するなど、独創的な建築を生み出している一方、世界中の被災地域で、様々な復興プロジェクトにも、積極的に取り組んでいます。このほど、2009年のイタリア中部・ラクイラ地震の復興に向け、仮設音楽ホールが落成しました。
この仮設音楽ホール「L’Aquila Temporary Concert」は、坂氏の代名詞のひとつでもある、紙の建築によるもの。資材には、鋼鉄、ガラス、ダンボール、コンクリートと粘土が使われています。大型の赤いカーテンに包まれたホール内は230名を収容できる楕円形の空間で、外観はシンプルなピラミッド型の屋根がついた四角形。アコーディオン型のドアは開閉式で、広々と開放的な雰囲気となっています。また、この700平方メートルものコンサートホールの最大の特徴は、分解でき、他の場所に移動可能であること。恒久的な施設が整備されれば、このホールを丸ごと撤去できるというわけです。
2011年5月7日には、日本人指揮者・西本智実さん指揮によるオーケストラ演奏で、オープニングセレモニーを実施。これから、この場で奏でられる数々の音楽が、現地の人々を癒し、励まし、支えてくれることでしょう。
坂氏は現在、東日本大震災の被災地において、「東日本大地震津波支援プロジェクト」を進行中。限られた敷地により多くの住宅を建設しようと、3階建てコンテナ仮設住宅の建設に取り組んでいるとか。日本はもとより、世界の災害復興に、建築という具体的なソリューションで取り組む坂氏の活動に、これからも要注目です。
[via Inhabitat]