北極海に浮かぶ国、アイスランドをご存知ですか?
昨年の火山噴火で、欧州の航空事情が乱れたニュースを思い出す人もいるでしょう。
日本ではなかなか話題にのぼらないこの国で、2008年から発生した経済危機を乗り越えるために、「女性の価値観」を積極的に導入している金融機関があります。TEDで講演する女性起業家、ハッラ・トーマスドッティル氏の物語をご覧ください。
経済危機の渦中で
限られた資源の中で「金融」という産業が高度に発達したアイスランドでは、サブプライム問題の影響を受け、2008年には国全体が破綻寸前になるほどの深刻な経済危機に陥りました。その渦中に、米国の金融機関に務めていたハッラ氏はアイスランドに戻り、投資会社Audur Capitalを立ち上げました。「ビョークファンド」の設立でも知られるこの会社は、「女性の価値観」を金融ビジネスに導入することを目指しているといいます。
「女性の価値観」とは?
さて、女性の価値観 “feminine values” とは何でしょうか?講演中では、次の4つが挙げられています。
Risk Awareness
リスクを考慮する——理解出来ないリスクに対しては投資を行わない
Straight Talking
シンプルな言葉で、包み隠さず話すEmotional Capital
数字が支配する金融業界で、人間の感情を尊重するProfit with Principle
信念を持って利益を生み出す、社会や環境へのプラスの影響を目指す
こうした「女性の価値観」を取り入れることで、意思決定における多様性が「よりよい意思決定」を導き、ビジネスチャンスが広がったといいます。男性か女性かの選択ではなく、「調和する美しさ」を尊重しながら、よりよいビジネスをすることが重要だと、ハッラ氏は説きます。このような価値観が、男性中心で進められてきたが故に「硬直化した」世の中を変えていくのです。
アイスランドとTEDWomen
この講演が行われたTEDWomen(テッドウィミン)というカンファレンスは、2010年12月にワシントンD.C.で、TEDで初めて「女性の生み出す未来」をテーマに開催されました。そして、ハッラ氏が生まれたアイスランドという国は、このテーマとの親和性がとても高い国です。人口30万人程度の小国でありながら、世界に先駆けて、女性が国家の重要なポジションを担ってきました。
1980年に就任したヴィグディス・フィンボガドゥティル氏は、直接選挙で選ばれた「世界初」の女性大統領。また、経済危機を受けて国有化された2つの銀行に就任した新CEOは、それぞれエリン・シグフースドッティル、ビルナ・エイナルスドッティルという2人の女性でした。
他にも様々な視点から「女性」にまつわる講演がありました。例えば、Facebook社のCOO、シェリル・サンドバーグ氏による講演「何故女性のリーダーは少ないのか」も人気のある映像です。まだ日本語訳の付いていないものもありますが、TEDWomenの講演を観ることで、「女性」という視点から、世界がどう動いていくのかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
ハッラ氏の講演のページはこちら (2011年2月より日本語字幕付き)