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『フードインク』 – アメリカの食糧生産における2つの「行き過ぎ」 〜映画で「食の社会見学」〜

(c) Participant Media、『フード・インク』1月22日(土)、全国順次ロードショー、配給:アンプラグド

(c) Participant Media

「食が危ない」といわれ続けています。ここ数年、あるいは十数年、もしかしたら数十年、食は危機にさらされています。しかしその危機はいっこうに去らず、むしろ迫ってきているように感じられます。その危機とは一体何なのか、そのことを考える材料になるドキュメンタリー映画が1月、2月と連続して公開されます。その2本をシリーズでお届けするその1本目はアメリカ編『フードインク』です。

『フードインク』は監督でプロデューサーでもあるロバート・ケナーが6年もの歳月をかけて作り上げたフード・ドキュメンタリーの力作。そのテーマはずばり「食糧生産」。今アメリカで食糧がどのように作られ、消費者の所まで届いているのかを映像に収めています。

アメリカの食糧生産における2つの「行き過ぎ」です。そのひとつは生産量の過剰、アメリカの食糧生産は、たとえば牛肉をとると、いろいろな牧場で育てられた牛が広大な敷地を持つ生産工場に集められ、そこで超高速のラインに乗って処理されていきます。それはまさに食糧工場、効率だけを求め、すごいスピードで肉が生産されていきます。

もうひとつの行き過ぎは価格。大量生産のシステムに加えて、コーンなどは政府の補助金によってありえないほど安い価格で売られています。

そして、この牛肉の大量生産とコーンの価格破壊によって生まれるのが食中毒なのです。本来、草を食べるはずの牛がコーンを食べることで牛の内臓には負担がかかって、抗生物質などを飲ませることになり、その結果O-157などの危険な大腸菌を持つようになります。そして超高速ラインで完全に消毒されないまま消費者の手に渡り、それが食中毒を起こすのです。さらに、それに対する政府の無策ぶりもあってアメリカの食の安全は根本から揺るがされることになってしまいます。

この作品を見ると、アメリカで起こっていることは異常としか言いようがありません。そこで一体どうすればいいのか、この映画が最後に投げかけるのはそのための解決策なのです。今起こっていることを分かりすく解説し、最後にそれに対する解決策を提案するわけです。

ただ、これまでも食に関するドキュメンタリーを観てきた人はあまり新しさを感じられないかもしれません。『いのちの食べ方』『キングコーン』といった作品ですでに語られたことの繰り返しでもあるからです。しかし、その危機について考え、何かをしなければならないと考えているならば、違う語られ方を知ることで学べることがあるはずだと思います。

日本はまだましと思うかもしれませんが、このような事態が日本でも起こらないとは言いきれない。アメリカの二の舞にならないために何をすればいいのか?と考えずにはいられない、そんな作品でもあります。

果たして21世紀の「食」はどこに向かうのか、そして私たちは何をすればいいのか。それを考えるためにはまず映画で「社会見学」を。

フード・インク
1月22日(土)、全国順次ロードショー
2008年/アメリカ/原題:FOOD,INC./94分/アメリカンビスタ/ステレオ
配給:アンプラグド

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