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イノベーションの生み出し方 – アメリカのデザインファームで起こっていること(後編)

前回に引き続いて東大i.schoolの講演での米デザインファームZiba社のストラテジスト・濱口秀司さんのお話。
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日本のビジネス戦略に足りないもの

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ビジネスを大きく3つに分けてみる。「ビジネスモデル」「技術」「顧客」。
そして、この3要素をもとにした企業の調査データが紹介されていたがその内容が興味深かった。

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これはとある日本の企業の例。3要素の中で飛びぬけて技術の要素が高い。これまでの日本のものづくりを支えてきたメーカーの典型的な例かもしれない。

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一方、これはアメリカのPC販売会社(カスタマイズ注文ができるメーカー)の例。前述のグラフとは正反対である。社内で持っている技術はほとんどないが、逆に明瞭なビジネスモデルと消費者についてのリサーチとマーケティングを強みとしてビジネスを成功させた。

多くの日本企業に今決定的に足りないのが、技術以外の2つの要素。まさに上記の例が日本のビジネス戦略立案に重要なヒントを与えている。

ブランドとイノベーション、デザイン

マーケティング分野の話になるが、アメリカの今、そしてこれからのお話。

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みずからのブランド(日本で一般に使われている狭義のブランドではないので注意)とユーザーのインサイト。この2つが重なるところにsweet pointがある。そしてここ何十年間、マーケティングの世界で行われてきたことは、後者のユーザーのインサイトを調べること、そこに固執しすぎた、というのが濱口さんの指摘。

ちょうどその部分で面白いたとえ話を教えていただいた。

例えば、気になる女の子をデートに誘うことになったとする。そして、あらかじめ徹底的にその子のことをリサーチしたとしよう。彼女の好きなファッションやよく行くお店、好きな音楽、理想のデートシチュエーションなどなど。そして、それを元に彼女好みの完璧なデートを実現したとしよう。さて、女の子はどう思うだろうか。きっとこう思うだろう。

「お前誰やねん。」

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別の図で見てみる。事業戦略を考える上で、自社のブランドを中心に大きく3層の円を考えてみると理解しやすい。いわゆる日本でデザインや広告といった領域はこの円では一番外側の枠。その部分だけ行っても結局根本的なブランドやそこから生まれる戦略とマッチしなければ意味がない。そして重要なのが、今このブランドからデザインやコミュニケーションまで一本串を刺して考えるエージェンシーが世界中探してもいないということ。個々のブランドエージェンシーやデザインエージェンシーが日本よりもレベルが高いと言われるアメリカでも、である。

これからのデザイン・ファーム

会の終わりに濱口さんがこれからのデザイン・ファームについて語ってくれた。

世の中にはデザイン会社など腐るほどあるが、実は簡単に分類ができるという濱口さん。

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横軸は個人の依存度。左に行けばいくほど1人の個人の才能に頼り、右に行けば組織やチームで団結する(逆に言うと特定の個人の名前が出なくなる)仕事の仕方。
縦軸は行うビジネスの領域。前述の3層の円の一番外側にあるいわゆる狭義の意味でのデザインの領域が下部、そして上部に行くほどそこから離れ、イノベーションの領域になる。

そして、現在この4マトリックスの中で世の中のほとんどの会社は左下の部分、つまり個人の天才が引っ張る「デザイン」会社である。しかし、すでにIDEOやZibaはすでに右上の方向へ向かっている。個からチーム/組織へ、そして「デザイン」からイノベーションへ

以上が、Zibaの濱口さんのお話補足ダイジェスト。
とはいえ、予想以上に長くなってしまった…

4532314704 インテグレーティブ・シンキング
ロジャー マーティン 村井 章子
日本経済新聞出版社 2009-08-22

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