いまも昔も、夏といえば、子どもたちに大人気のカブトムシ。
自動車のモチーフになって世界の街を駆け巡ったり、ときには「恋する女の子」に例えられて切なく歌われるなど、身近に親しまれている昆虫のひとつですね。では、彼らの逞しい生命力に宿る、こんな秘密をご存知でしょうか?
砂漠地帯は、その極端な暑さや寒さと乾燥から、動植物が生息するには非常に厳しい環境ですが、そんな過酷な地に生息するカブトムシの一種「サカダチゴミムシダマシ(onymacris unguicularis)」は、なんと、霧から水分を摂るというミラクルな技を持つツワモノ。朝方、霧が立ち込める砂漠で逆立ちになり、背中の突起に霧の水分を吸着させ、水滴を口に滴り落として、飲むのだそうです。
そんな「サカダチゴミムシダマシ」のユニークな仕組みに着目して開発された画期的な水集めグッズが、「Dew Bank」です。以下の画像のように、ステンレス製の「お椀」のような容器を逆さまにすると、デコボコした表面に当たった霧は冷やされて水滴になり、スルスルと下りてきて、溜まるというわけ。このインフラいらずのシンプルな仕組みは、砂漠などの乾燥地帯で、生活水を確保する実用的なツールとして活用できますね。
ヒトは長年、生活をより豊かに便利にするため、多くの技術を開発してきましたし、私たちはこれらの「資産」の恩恵を受けて日々生活しているのも事実。しかし、一方で、動植物たちは、自然環境と順応しながら生きていくための様々な能力や知恵をずっと前から身につけていた、ということにも、改めて驚かされます。
魚の動きを真似て作られた魚型水質探査ロボットや、昆虫の習性をヒントに開発されたマイクロロボなど、近年、生物の仕組みを研究し、新しい技術に取り入れようという「バイオミミクリー」の取り組みが増えてきました。「一寸の虫にも五分の魂」ならぬ、「一寸の虫にも無限の可能性」。動植物から私たち人間が学ぶべきことは、まだまだたくさんありそうです。
ネットを張って霧を集めるという「DropNet」について調べてみよう。