政治・ビジネス・教育など様々な分野において女性の活躍が珍しくなくなってきた昨今、「女性差別」という問題はすっかり解決したかのように感じてしまいがちですが、実は、女性の権利が十分保証されていない国も、世界にはまだ存在します。こちらでは、そんな社会環境にある地域で、女性たちの心身の健康を守り育てる活動をご紹介しましょう。
西アフリカにあるブルキナファソ(Burkina Faso)の首都ワガドゥグー(Ouagadougou)にこんなカラフルな“掘っ立て小屋”風の建物が現れたのは2007年のこと。「CBF Women’s Health Centre」と呼ばれる、この地域では珍しい女性専用のクリニック兼コミュニティセンターです。女性特有の病気を治療したり、悩みや不安に心理カウンセラーが対応するなど、心身のヘルスケアサービスを受けられるのみならず、併設されている教育センターでは、知識や情報不足が原因で、病気に罹ったり、被害に遭うことがないよう、地域の女性たちに、自身で身を守るための知識や術(すべ)を教え、伝えています。
また、このセンターは、持続可能性に配慮した建物になっている点でも注目されています。水道インフラや電力インフラが十分でない地域事情をかんがみ、このセンターで消費される水やエネルギーは「自給自足」。施設内に井戸を掘り、汲み上げた水を活用する一方、軽量な太陽光パネルを屋根に設置し、ソーラー発電を行っています。また、直射日光によって建物が暑くならないよう反射用のガラスを屋根に取り付けたり、可動式の窓で自然風をうまく循環させる仕組みを導入。クリニック棟と教育センター棟で中庭を覆い囲んで日陰を作り、利用者が涼しく過ごせるように工夫するなど、省エネルギーで快適な空間を実現しています。このように、細部にわたって考えつくされたこの建物は、建築という観点からも高い評価を受け、2008年の「World Architecture Festival」で表彰されたほか、今年の「Aga Khan Award for Architecture」でもファイナリストにノミネートされているそうですよ。
アフリカの女性支援活動としては、世界の歌姫マドンナが取り組んでいるマラウィの女子校創設プロジェクト「Raising Malawi Academy for Girls(レイジング・マラウイ・アカデミー・フォー・ガールズ)」もありますね。「CBF Women’s Health Centre」とは、プロジェクトのコンセプトが異なるものの、いずれも「アフリカ地域の女性の支援」という究極の目的は同じくしていますし、持続可能性に配慮した建物づくりという面でも、共通点が見受けられます。サステナブルな未来を実現するには、環境保全や温暖化防止といった地球環境の改善だけでなく、性別に限らず、人々が互いに尊重し合い、支えあうという健全な社会づくりも重要な課題。「CBF Women’s Health Centre」の取り組みは、アフリカ地域を中心に、この課題を解決に導くための貴重な第一歩といえるでしょう。
「CBF Women’s Health Centre」の様子をスライドショーでみてみよう。