宇宙エレベーターを知っていますか? その実現の可能性が高まり、最近ニュースになったりしているのでご存知の方も多いかもしれません。簡単に言えばエレベーターで宇宙にいけてしまうという画期的な乗り物。そんな宇宙エレベーターをレゴで作ってみよう!というイベントがあったので行って作ってきました!
イベントが行われたのはお台場にある、ニフティが運営するイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」。ここは、おバカアプリ選手権などが行われるユニークなイベントハウスなのです。今回は「大人だってブロック×宇宙エレベーター」と題して、宇宙エレベーター協会会長の大野修一さんとレゴテクニックの本を何冊も書いている五十川芳仁さんという文字通り宇宙エレベーターとレゴのそれぞれの専門家のお話が聞けるイベントとなったのです。
そのイベントの中に、レゴで宇宙エレベーターのクライマー(詳しくはこれから説明します)を作ってみる!という企画があり、私はそこに参加することになりました。他の参加者は、「宇宙エレベーターガール」という舞台で宇宙エレベーターガールを演じている女優のお2人、TVチャンピオンのレゴ王選手権で準優勝した斉藤善和さん、レゴマインドストーム歴10年の東谷賢一さん。私はといえば宇宙エレベーターについてはSFで読んだ知識しかなく、レゴも好きですが今は触ることも滅多にありません。果たしてそれで宇宙エレベーターなんて作れるのでしょうか…
さて、イベントのほうはお2人のレゴ話からはじまります。大野さんも子供のころからレゴが好きで、大人になってからも五十川さんの本を読み、テクニックで遊んでいたとのこと。そしてそれが縁で知り合い、「レゴで宇宙エレベーターを作る」という活動を一緒にすることになったそうです。
ここで大野さんが作った宇宙エレベーターのモデル(動きません)が紹介され、宇宙エレベーターについての簡単な説明がされました。
ここでも、簡単に宇宙エレベーターについて説明しておきましょう。宇宙エレベーターは簡単に言うと静止衛星と地上の間をケーブルで結び、その間を昇降機(クライマーまたはクルーザーと呼ばれる)が上下するというもの。静止衛星の軌道は約3万6000メートルで宇宙エレベーターができればそこまでは簡単にいけてしまうわけです。さらには、宇宙エレベーターを作るためには、バランスをとるために地表から約10万キロのところにカウンターウェイトと呼ばれる重りをつける必要があり、そこまでもケーブルでつなぎます。そしてその途中に高軌道ステーションを作るというのが一般的な構想なのです。
この高軌道ステーションの凄いところは、地球の自転によって高速で動いているため、ここから宇宙船を打ち上げれば簡単に地球の引力から脱出することができるということ。これが実現すれば、スペースシャトルのように打ち上げに莫大なエネルギーを消費することもなくなるのです。
そんな宇宙エレベーターですが、もちろん課題もあります。課題は大きく分けてふたつあり、ひとつはケーブルの素材の問題、もうひとつはクライマーの問題です。ケーブルのほうは強くて軽くて長持ちする素材が必要で、現在のところカーボンナノチューブを使えば実現可能と目されていますが、まだ実用化はされていません。
クライマーのほうは3万6000メートルをどのくらいで上り下りできるのかというスピードと、そのためのエネルギーをどうするのかということが課題になっています。
今回のイベントは、そんな宇宙エレベーターのクライマーの問題を解決するためのプロセスのひとつでもあります。今までにも宇宙エレベーター協会は小学生から高校生を対象にしたクライマーの大会や、世界中の研究者(大学生など)が参加するレゴではない本格的なクライマーの選手権を実施し、クライマーを作るための技術の向上に努めているのです。
レゴでクライマーを作るということについて五十川さんがステキなことをおっしゃっていました。
宇宙エレベーターは、自分で作ったモーターを取り付けたクライマーをおいてリモコンでぴゅっとやれば上に上がっていく。そのまま大きくすれば宇宙エレベーターになるわけですから、子どもの夢が必ず宇宙につながる。
すっかり話が長くなってしまいましたが、いろいろな話がされている間も私は黙々とレゴをいじり続け、クライマーを作ろうと奮闘していたわけです。
このクライマーに使っているのはレゴの中でもテクニックという歯車などを使うシリーズのもの。このテクニックは、普通のレゴが外観を作るのに対して構造を作るもの。どのような形を作るのかではなく、クライマーがケーブルをつかんで上昇するためにはどのようにタイヤを配置する必要があるのか、重心をどこに置けばいいのか、組み立てたクライマーの重量をもち上げるためにはどれくらいのパワーが必要なのか、などなどいろいろなことを考えます。つまり、レゴでクライマーを作ることは、本物のクライマーを設計することの疑似体験になるわけです。
このことは、クライマーに限らずレゴテクニックで作るあらゆるものについていえます。今回のイベントには五十川さんの作品もいくつか展示されていました。その中のひとつが二足歩行するロボット「ほぼ二足歩行」、危うげなバランスを保ちながらも二足歩行していきます。このロボットを作るには動きの中でバランスがどう変化するのかを分析しかねればなりません。レゴテクニックで何かを作るというのはそういう分析と学習の作業なのです。
分析と学習というとなんだか面倒くさい感じですが、これが本当に楽しい! 分析と学習といいながら、やっていることは基本的におもちゃで遊ぶことで、色々試行錯誤をしてみてうまくいったときの喜びといったら!童心に返るというよりは開発者になったような気分を味わえてしまいます。
そして、これはレゴが未来の研究者・開発者を生むかもしれないという可能性を示してもいるように思えます。アメリカなどでは中学生や高校生がレゴを通して工学を学ぶということが盛んなのだとか。日本でもこの楽しさが広まれば開発者を目指す若者が増えてくるかもしれませんね。
そんなレゴの可能性を信じる大野さんは宇宙エレベーター協会への協力を求めてレゴに電話してみたそうです。そして、本社に行って話が進むうちに、デンマークの本社に掛け合って宇宙エレベーターのためのキットを作ってくれるという話にまでなったそうなのです。そのキットはまもなく発売されるそうで、なんとも楽しみ!
最後は参加者が作ったクライマーでレースを開催! 私は1回戦で敗れてしまいましたが、楽しかった!
東京カルチャーカルチャーのイベントに参加する!
レゴテクニックで学ぼう!