こちらは、バングラデシュのRudrapur Dinajpuという村にある小学校。素朴でどこか懐かしい雰囲気すら持つこの校舎だが、イスラム圏の建築賞「Aga Khan Award for Architecture」など、数々の受賞歴を持ち、持続可能な学校づくりの先行事例として世界中で取り上げられている。今回は、その理由と秘密についてご紹介しよう。
この小学校は2005年、バングラデシュのNGO「METI(Modern Education and Training Institute)」とオーストリアの建築家Anna Heringer、ドイツの建築家Eike Roswagが中心となり、地元の住民や学校関係者、生徒たちの協力によって建設された。地元の伝統的な知恵とポテンシャルを活用して持続可能な学校を造り、貧困に苦しむ地元に自立心とアイデンティティを呼び覚まそうというのが狙いだ。
竹構造が採用され、土と米・わらなどを混ぜて土壁にするバングラデシュの「コブ工法」で壁が造られるなど、校舎の建設資材には、竹・わら・ジュートといった地元で採れた天然の素材が多く使われている。これにより、環境負荷が軽減できるのはもちろん、遠方から資材を運ぶ手間やコストが省け、建設コストや工期を大幅に効率化。実際、建設開始からたった3ヶ月で校舎が完成したそうだ。
校舎建設では、地元の職人や大工たちも参加し、自身のスキルや知識を活かしながら、欧州の建築家AnnaやEikeから近代的な建築や工法も学ぶことができた。これにより、その後、校舎を地元で自立的に維持管理できるようになったのはもちろん、地元の家屋建築にもこの経験やスキルが広く活用されている。
地元の人々の努力と地元の天然資材でできた小学校では、いま、多くの子どもたちが学んでいる。
伝統的な知恵と近代的な建築術を見事に融合させ、原材料のみならず、建物の工法、建設のためのマンパワーすら「地産地消」で生まれたこの小学校は、持続可能な教育環境づくりの画期的な事例といえるだろう。
METIによるバングラデシュの手作り小学校の様子をみてみよう。