Googleは「世界中の情報を整理し、アクセスできるようにしよう」というミッションの下、インターネットによる情報・知識の共有を革新的に推進してきた。おかげで、私たちユーザは、知りたいことをキーワード化して検索ボックスに入力すれば、多くの情報を瞬時に得ることができる。しかし、お気づきだろうか?この情報に恵まれた環境は、実はまだ、PCや通信ネットワーク・電力が十分普及している一部の国のみに限られていることを…。
世界にとって大きな課題のひとつであるこの情報格差に果敢に取り組んでいる画期的な検索サービスについてご紹介しよう。
「Question Box」は、Intercomという箱型の通信機器を活用した、人力とインターネットの”ハイブリッド型”検索サービス。以下の動画のとおり、機器にある緑のボタンを押すとオペレータへ接続でき、知りたいことを質問すれば、オペレータがPCを使ってこれに関する情報を収集し、現地の言葉で回答してくれるという仕組みになっている。利用者側にPCやネットワークといったハード環境が不要なのはもちろんのこと、PCのキーボード操作や基本的なITリタラシーも必要なく、母国語が話せれば、知りたい情報を入手することができるのが利点だ。2007年9月に、インドのPuneで初めて設置され、その後、Loni近くに2台目を設置。今後もインド国内外で設置台数を増やす方針だ。
QB TED edit from Mike Paterson on Vimeo.
また、これを携帯電話に応用した検索サービスもウガンダの村・MbaleやBushenyiで展開されている。村で生活するスタッフ40名に携帯電話を支給。村の住民たちが知りたいことを近所のスタッフに伝えれば、彼らに代わってスタッフが都市部のコールセンターに連絡。コールセンターのオペレータが調べた内容は、スタッフを通じて村で共有されるシステムだ。マンパワーとネットワーク技術をうまく融合させた取り組みとして評価されており、マイクロソフト創業者・ビルゲイツの慈善団体「Bill and Melinda Gates Foundation」からも支援を受けている。
これらのサービスはいずれも、社会起業家Rose Shumanを中心とする米カリフォルニアのNPO「Open Mind」によって企画・運営されている。Shumanは、ネットワーク環境やPCの普及というハード面での課題のみならず、言語の壁や依然として低い識字率など、発展途上国の抱える様々な問題が情報格差を生み出していると考え、これらの地域の人々が不安なく使える情報共有ツールとして「Question Box」をスタートさせた。実際、このサービスを導入した地域では、農家が出荷先の市場価格を正しく知ることができ、仲買人と適正な価格交渉ができるようになったり、求人情報をタイムリーに入手できるようになったことで、就職につながりやすくなったそうだ。
「Question Box」は、物理的なインフラ整備のみに囚われず、ユーザの具体的な行動や心理まで考慮し、結果として非常に実用的なサービスとして仕立てられている。インターネットという”近代的な技術”と”人力”という普遍的なパワーを最適に融合させることで、世界が抱える難題への解決策を見事に導きだしている画期的な取り組みといえよう。
「Question Box」の”生みの親”Rose Shumanのインタビュー動画を観てみよう