あなたがパソコンに向かっている今、海のむこうの森の空には虹がかかっているかもしれない。北極ではアザラシの赤ちゃんが寝返りを打ち、チベットの大草原では先住民族の少女が今夜たき火にくべるための牛糞を拾っているかもしれない。そう語りかけられれば、私たちは、虹やアザラシや先住民族の少女の姿を脳裏に浮かべることができる。たとえ、自分の目で見たことがなくても。
一体なぜ?その理由のひとつは、写真を見たことがあるからだ。あることが未知の領域から周知の明るみに引き出されるとき、そこには必ず、カメラを構えた目撃者がいる。
このほど、写真家7人による地球環境の「今」を伝えるプロジェクトがスタートした。「EYEウィットネス〜目撃者たち〜」と名付けられたこのプロジェクトは、北極やチベット、ツバル、アラスカ、知床など、世界じゅうの自然の「現場」で起きている「事実」が収められた写真パネルを、学校や教育機関に無償で貸し出すというもの。7人の写真家以外は誰も見ていないそれらの事実を「目撃者」自ら語るトークも、インターネットによるテレビ電話などで無償提供する。また、講演会やスライドショーの企画には、全国どこでも出張可能(日程、テーマ、費用はウェブサイトか電話で相談)。写真展への貸し出しにも対応するという(同)。
photo by Rei Ohara
9月15日に阿佐ヶ谷ロフトで開催されたカットオーバーイベントには、サポーター代表であるマエキタミヤコ氏が参戦。「テレビや新聞、雑誌という、これまで写真家の活動を支えてきた既存メディアの元気がない今は、逆にチャンス。みんな、『何を見ればいいかわからない』状態ということだから、メディアを通さない発信者の生の声が届きやすいのは確か。」と、「直接、語り、伝える」ことにこだわっていくというプロジェクトのスピリットを後押しした。
参加者の一人である動物写真家の小原玲氏からは、「天安門事件のとき、広場にいたぼくは死体を1体も見ていない。それなのに、軍による武力弾圧が始まるやいなや、アメリカのテレビ局が多数の死傷者が出たというニュースを伝え始めた」という発言も飛び出した。このような「大メディアの手落ち」が、環境問題でもあるとしたら・・・・・・。
インターネットを通じて一次情報が流通する未来はもう来ているが、私たちは、本当の事実を知る手がかりをまたひとつ、手に入れたのかもしれない。
photo by Masaya Noda
このプロジェクトはまた、各写真家の活動を支える膨大な資金を集め、彼らが目撃者であり続けるための打ち手でもある。従って、活動の主旨に賛同する人からの協賛金も受け付けている。気になる方は、7人のプロフィールも見られる「EYEウィットネス公式Webサイト」でチェックを!