オバマ政権誕生と同時にホワイトハウスでは家庭菜園「キッチン・ガーデン」が誕生。greenz記事「ホワイトハウスでファーマーズマーケット!?アメリカ国民よ、野菜を食べて健康になろう」で紹介したとおり、2009年6月にはミシェル・オバマが地元の子供たちとともに初収穫を行った。このように、かつては”ジャンクフードのメッカ”であったアメリカも、近年、子供たちに食の大切さを教える食育に力を入れはじめている。そこで、米国の食育プログラムの先駆者的存在である「Edible Schoolyard」を中心に、最近のアメリカの食育事情についてみていこう。
「Edible Schoolyard」とは”食べられる校庭”の意。その名からもわかるように、「校庭で野菜や果物などを栽培し、収穫物を調理して食べる」という一連のプロセスの体験を通じて、食について学ぶプログラムだ。以下の動画でその様子が紹介されているとおり、生徒たちは、校庭で野菜・果物・ハーブなどを栽培し、収穫後に料理クラスで実際に調理する。一見”家庭科”のようなクラスだが、栽培に適した土壌の研究や食文化の調査など、理数や社会・歴史・文化といった多岐にわたる分野を複合的に学ぶことができるユニークな学習プログラムになっている。
このプログラムは、1995年、アリス・ウォータース(Alice Waters)により米カリフォルニア州バークレーの公立中学校・Martin Luther King, Jr. Middle Schoolで立ち上げられた。地産地消型のフレンチレストラン「Chez Panisse」を経営していた彼女は、ジュースの空き缶やお菓子のゴミが散乱する地元の中学校の荒廃ぶりを目の当たりにし、地元の子供たちに食の大切さを学ぶ場を提供しようと考えた。彼女の意思に賛同したMartin Luther King中学校の校長・Neil Smithの協力のもと、駐車場の一部を教員や生徒とともに開墾し、1エーカー(約0.4ヘクタール)の畑を作ったことが「Edible Schoolyard」の原型となったのである。
その後、「Edible Schoolyard」の動きはさらに大きく広がっており、バークレーの食育推進カリキュラム「School Lunch Initiative」の一環として取り入れられているのみならず、2005年、初の提携校としてルイジアナ州・ニューオーリンズの「Edible Schoolyard New Orleans」がスタートした。また、「Edible Schoolyard」ではこのプログラムでのノウハウを広く共有すべく、公式ウェブサイトでプログラムの内容を公開しているが、この事例を肌で学ぼうと、米国のみならず海外からも、教育関係者・役所・政治家など、多くの人々が見学に訪れているそうだ。
「子ども農山漁村交流プロジェクト」や「教育ファームねっと」など、日本でも子供たちが農村や漁村で実際に農作業や漁を体験するプログラムが増えてきているが、これらと「Edible Schoolyard」との違いは、ある一定期間に限られた実体験にとどまらず、農作物の成育サイクル全体にかかわり続けることで、農作物の生産から食卓までの一連のプロセスを学んだり、食と環境・地域との関わりについてより深めやすいという点だと考えられる。
今後は、日本の校庭を、従来の園芸教育や飼育活動からさらに広げ、日本の気候や風土に合わせた日本版「Edible Schooyard」に育てていくことが、子供たちが長期的な視野で食を学ぶ「食育の場」づくりにつながるだろう。
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