\11/12オンライン開催/ネイバーフッドデザインを仕事にする 〜まちを楽しみ、助け合う、「暮らしのコミュニティ」をつくる〜

greenz people ロゴ

ウガンダの子どもが楽しんで算数を学べるのは、不法投棄の代名詞ともいわれるアレのおかげ

All Rights Reserved by Emily Pilloton, Project H Design

All Rights Reserved by Emily Pilloton, Project H Design

これは、とあるウガンダの小学校の校庭での風景。なんだか見慣れたものが埋められているけど……?

この小学校は、ウガンダの人里離れた村にあるKutambaエイズ孤児小学校。その小学校の校庭には、ご覧のとおり、廃タイヤが埋められている。廃タイヤは、不法投棄の代名詞といわれるなど、マイナスイメージがつきまとう。でもこの小学校では、算数の授業を楽しくしてくれる教材の一つだ。

greenz/グリーンズ uganda2
All Rights Reserved by Emily Pilloton, Project H Design

廃タイヤは、正方形の砂場に等間隔に埋められている。それぞれのタイヤには、白いチョークで数字が書き込まれている。ただそれだけの設備で、10種類の算数ゲームができる。子どもたちはゲームを通して、足し算や、引き算、掛け算、割り算などを学び、空間的推論や論理的推論を身につけられる。

このスペースはまた、ベンチを配置すれば、屋外教室にも変身してしまう。

greenz/グリーンズ uganda3
All Rights Reserved by Emily Pilloton, Project H Design

具体的にどんなゲームができるのか、ひとつ例をあげて説明しよう。

Match Me(マッチさせて)」というゲームがある。子どもが2つのチームに分かれて競い合う団体ゲームだ。まず、先生が方程式を読み上げる。各チーム1人ずつが代表となり、その方程式の答えとなる数字が書かれているタイヤを見つけて、その上に座る。先に正しいタイヤに座ったほうが、再びチームの列に戻ることができる。ゲーム終了時により多くのメンバーが列に並んでいるチームが勝ち!

greenz/グリーンズ uganda4
All Rights Reserved by Emily Pilloton, Project H Design

シンプルながら、野外で楽しく算数を勉強できるこの校庭には、Learning Landscape(学びの庭)というぴったりの名前がつけられている。

名づけ親は、デザインを手がけたProject H Design

Project H Designは、非営利のデザイン組織。Hには、Humanity(博愛), Habitats(居住環境), Health(健康)、そしてHappiness(幸せ)という意味がある。ウェブサイトに記載されたマニフェストには、こんなメッセージがちりばめられている。

ものづくりを前提としたプロダクトデザインから手を引こう。

かたちや機能ではなく、結果やインパクトを生み出そう。

ものではなく、きっかけ(catalyst)やかかわり(engagement)を届けよう。

グリーンデザインを心がけるなら、物質的な持続可能性だけではなく、社会的な持続可能性も考慮しよう。

社会にインパクトを与えるデザインを生み出すためには、ものの機能と、それが社会に及ぼす影響(または結果)を分けて考えることが大切、とProject H Designの創立者Emily Pillotonは言う。

たとえば、彼女はハンマーを例に挙げる。ハンマーの機能は、釘を打つこと。その機能が、家を建てることを可能とする。つまり、人に住む場所を提供する。

そのような考え方でデザインされたからこそ、廃棄物を有効利用できて、特別なスキルを持たない人でもつくれるシステムができあがったのだろう。

算数というユニバーサルなコンセプトを教える場というのも、Learning Landscapeの重要な要素。どんな国の小学校でも導入できるということだ。

ここで少し気になるのは、Learning Landscapeの効果について。青年海外協力隊員としてウガンダの隣国、ルワンダで理数科教師をしている知人、諏訪理さんのご意見を聞いてみた。

諏訪さんは、ルワンダの教育の場で「数」や「式」を具体的にイメージできる学生が少ないと感じることがあるそうだ。また、現地の教員も、やはり抽象的な数学教育を受けてきたので、算数と実生活をむすびつけることに重点を置いて授業を進めていないという。たとえば日本のように、各学生に「算数キット」を配布して、そのキットを使って授業をすれば、現状は改善に向かうはずだ。でも、アフリカ諸国では、それは難しい。そのように考えると、このLearning Landscapeのように、タイヤなどコストのかからないものを活用し、かつ皆で遊びながら、算数を学べるというのは有効。課題は、このような教材(またはツール)が、外部専門家が去った後も現地の人々によって有効利用されるように、知識や経験を如何に継承していくかだろう。諏訪さんは、そのように答えてくれた。

Project H Designは、今後もアフリカと米国でLearning Landscapeづくりを続けていく意向だ。そのための支援を募っているので、(金銭的支援以外にも、サポーターTシャツ購入、資金集め活動参加、インターン活動も募集中!)ので、活動を応援したい人は、ぜひ、Project H Designの支援ページにアクセスしてほしい。