アフリカやオーストラリアに、冷暖房装置なしで快適な室内温度を保ってしまう環境配慮型の巨大な構造物がある。手掛けたのは、無名のデザイナー。気になる外観は、コチラ↓。
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そう、これはアリ塚。分厚い外殻、上下に伸びた空気ダクト、そしてそのダクトにつながった通気穴などが塚の中の温度や空気循環を保っている。外気の温度は2℃から40℃まで変化するのに、塚の中の温度は常に30℃前後をキープ!この30℃という温度は、シロアリが育てているキノコ類の栽培に最適の温度だ。
アリ塚以外にも、自然界はすぐれた構造物や素材で溢れている。たとえば、蛾や蝶の羽や植物の葉の表面は、掃除をしなくても一向に汚れない構造になっている。表面が水に濡れると、その細かい凸凹が疎水性を発揮して、水と一緒に汚れを流してしまうのだ。
Creative Commons, Some Rights Reserved, photo by poppy2323
このような生物の生体機能を活かしたものづくりを、バイオミミクリ(biomimicry=生命体を真似る)という。アリ塚の構造はエネルギー効率の良い建物づくりに活かされ、蝶の羽の構造は自己洗浄性にすぐれたタイルやコーティング料づくりに活かされてきた。
バイオミミクリという言葉が普及したのは、つい最近のこと。でも、身近な自然から学ぶ技術開発の歴史は長い。たとえば、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが鳥の翼の観察をとおして飛行力学の知識を得たのは、もう500年も前のことだ。
それだけ長い歴史があるということは、バイオミミクリの知識は世の中にあふれているはず。では、その知識を共用して、サステナブルなものづくりを促そう、ということで立ち上げられたバイオミミクリのデータベースサイトが、Ask Natureだ。
Ask Natureの検索ページ。バイオミミクリ、バイオミミクリから生まれた技術・商品、情報提供者などを検索できる。
Ask Natureを運営しているのは、The Biomimicry Institute。1997年にバイオミミクリというコンセプトを発表したJanine Benyusが設立した非営利組織だ。ミッションとして、自然界から学び、自然界を見習い、自然を守る人々を育て、より健康でよりサステナブルな社会づくりを掲げている。
ところで、バイオミミクリが何故、サステナブルな社会づくりにつながるのだろう?
その答えは、The Biomimicry Instituteのウェブサイトに見つけた。The Biomimicry Instituteによると、バイオミミクリにおいて大切なのは、自然界をモデル、メンター、そしてものさしとして捉えることだという。
モデルとしての自然界
バイオミミクリとは、自然界のモデルを学び、人間が抱える問題をサステナブルに解決するためのデザイン、プロセス、しくみ、戦略のヒントを得るための新しい科学である。
メンターとしての自然界
バイオミミクリとは、自然界を新しい角度から観察し価値を見出すことである。それは、自然界から搾取する時代から、自然界から学ぶ時代に移行することである。
ものさしとしての自然界
バイオミミクリとは、私たちのイノベーションの持続可能性を測る際の生態学的な基準である。自然界は、38億年の進化を経て、何が機能して何が持続するのかを学んできたのだから。
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この3つのポイントを頭の隅において生活をすると、たとえ大きな発明にはつながらなくても、心豊かにロハスな日々を過ごせそうだ。