世界では11億人がきれいな水を手に入れることができず、毎日約6,000人が水に関係する病気で亡くなっている。アフリカ南部の農村地域では水道設備が整っていないために、雨水や洗濯に使う不衛生な川の水を飲んで病気になる人が多い。
そして水運びは女性や子どもたちの日課だ。水運びには毎日数時間かかるため子どもたちはその分学校で学ぶ機会を失う。その上せっかく数時間かけて運んだ川の水も決して安全な飲み水とはいえない。でも驚きなのは安全な水が大抵の場合、地下100メートル以内の足下に眠っているということ。井戸を掘るのも良いが、地下から水を汲み上げるポンプを動かすのに必要な電気がない村がほとんどなので維持するのが難しい。
南アフリカ出身のTrevor Fieldはこの状況をつぶさに知り、非営利団体プレイ・ポンプ・インターナショナル(PlayPumps International)を創設した。プレイ・ポンプのユニークなところはポンプと一体になっているメリーゴーランドのような遊具を回転させることで、水をくみ上げることができるという点だ。
上図のように子どもがメリーゴーランドで遊ぶ①と、地下③からきれいな水がくみ上げられ②、地上7メートルの2,500リットルを収容できるタンク④に水がたまる。蛇口⑤をひねれば簡単に水が手に入る。タンクに入りきらない水は、ボアホール⑥を通して地下に戻される。また、タンクの側面⑦には広告やエイズ防止のメッセージが掲げられ、広告で得た収益はポンプの維持費に使われる。たとえば1時間メリーゴーランドを16rpm(毎分16回転の速度)で回転し続ければ地下40mの地下水を1400リットル、タンクにくみ上げることができる。
YouTubeにアップされている動画がわかりやすく仕組みを説明しているのでオススメです。
プレイ・ポンプを設置するメリットは次のようなことが考えられる。
— 水がきれいなため病気になる人が減る
— 水運びに時間をかけずに済むため、女の子も労働から解放され男の子と同じ時間学校に通える
— 比較的低コスト(75万円程度)で2500人規模のコミュニティーに水を提供できる
— 水をためるタンクにはエイズ防止のメッセージが掲げられ、子どもたちにとって教育になる
— ポンプを設置・維持するのは訓練を受けた地元住民。地元の雇用機会が増える
— コミュニティーの中心や学校の近くに設置されるので、学校帰りの子どもが遊ぶ機会が多い。そして何よりも子どもたちが楽しそうだ!
こうして一つのデザインがいくつもの状況を改善し、人びとのライフスタイルを変えることができる。子どもたちの遊ぶ力が、地元の人びとの健康、教育、経済発展につながるというシンプルに見えて実はすごいシステムなのである。
All photos on this article are courtesy of PlayPumps International.