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これからのシャカイをつくるカイシャのカタチ(2)

いい会社が開く、いい社会への扉
事業を通して社会に「つながり」を回復する「アミタ」。第一回目に引き続き、アミタの熊野英介社長の経営哲学を伺いながら、シャカイについて、カイシャについて、さらに深く考えてみたい。

ヒトとヒトの「つながり」を回復する事業

「よく『持続可能な社会』と言いますが、エネルギーや資源、食料の問題が解決して持続可能になっても、もし殺伐とした世界だったらどうでしょうか。私はそんな社会では生きたくない。やっぱり人と人のつながりが大事なんです。今は、関係性を失った孤独な人が多いと思います。私たちは人間ですよね。サルやイヌと同じように生物種としてとらえれば、私たちは『ヒト』という呼び方になります。でも、普通『人間』と言いますね。なぜ『ヒト』の後ろに『あいだ』をつけるのか。つまり私たちは人と人の関係性の中で生きているということです。この『人間』の人間らしい部分は何なのか。私は『自己犠牲』、つまり利他なのだと思います」

自己犠牲が人間らしさというのはどういうことだろうか。

「自己犠牲を進化につなげた唯一の種が人間なんです。なぜなら、私たちは生まれてくるとき、ほとんど何もできない状態で生まれてきますよね。多くの動物は生まれてすぐに自分で立ってものが食べられるようになる。でも、私たちは生まれて1年もの間、自分だけで生きていくことはできません。生きるためには親が自分を犠牲にして1年以上にわたって一生懸命面倒を見なければならない。でも、進化の過程で、こうして未熟な状態で生まれてくるから、私たちは高い知能を持てるようになったんです」

なるほど。

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ひとりでは生きられない赤ちゃん

「ところが、今は人々があまりに利己的になりすぎて動物化していると思います。心の余裕をなくして、子どもに十分に愛を注ぐことができない人が増えた。だから今の時代、子どもの虐待などの痛ましい事件が多いのではないでしょうか。テレビでいろいろなニュースが流れますが、例えば政治家の汚職や企業の不祥事についてはもう見慣れてしまって『そんなのは昔からあった。いつの時代にもあるものだ』と半ば心がマヒしてしまっている。でも、子どもの事件には本当に心が痛みます。マヒしてはいけないと思う。私は関係性を失った社会の問題が、子どもの問題に表れているような気がするのです。子どもが守れずに、私たちが生きている意味はあるのか。富や名声があっても、子どもを守れなければ無意味です。だから、私たちは子どもを守ることにつながる事業も始めています。

私たちは企業ですから、単なる寄付ではなく、事業を通して社会のためになることをやりたいと思っています。だから、この事業もビジネスとしてきちんと回るようにしていきます。私は、世の中が孤独にならないよう、関係性を回復する事業をどんどん創っていきたいと考えています」

穏やかに熱く語る熊野社長

話を聞いていくと、社会の問題を事業を通して解決したい、という想いが伝わってくる。もちろん、利他的なニーズに応える事業は儲かる、という経営者としての読みもあるのだろう。

「私は社員に『儲からない仕事を探してこい』とよく言います(笑)。ただし、社会にとって利益のある仕事でなくてはいけません。社会にとって意味のある仕事であれば、うちは利益が出せるようにする自信がある」

とも語っている。会社の儲けより、社会の儲けのために働くのなら、きっと社員もイキイキすることだろう。

(写真)賛同企業と協力してFSC認証材の木製遊具を保育園や幼稚園に無償貸与し、社会と子どもをつなげていくプロジェクトが進行中

未来のカイシャのカタチ

これからの社会を創る会社は、組織のあり方も変わっていくのかもしれない。例えば、アミタの事業は、自社だけでなく他社と共同で進めているものが多い。主力のリサイクル事業も、自社のリサイクル施設だけでなく外部の再処理業者とも協力し、排出企業や引受先企業も巻き込む事業だ。

「円柱型の組織ではなく、円すい型の組織にしようと思っています。円すいの上にチョコンとうちが乗っかるような」

おそらく、自社や系列会社で垂直統合式に積み上げていくのではなく、裾野の広いネットワーク型のイメージだろう。今後の会社のあり方を訊ねると、予想を越えるスケールの大きな答えが返ってきた。

「私は『市民企業』とでも言うべきものが生まれると思っています。ある人がミッションを掲げると、それに共感した年齢、国籍、言語など様々な世界中の人々が少しずつお金を投資して、集まった莫大な資金を元にそのミッションを遂行する、そんな組織です。人類の歴史を振り返ると、農業革命があり、工業革命がありました。そして今は『精神革命』とでもいうような時代の入口のような気がします。これまでの2つの革命は合理性を追求してきました。でも、この精神革命では『情理性』がキーになると思います。エモーションが国境を越えて社会を動かしていくのです」

確かにもうすでに、そんなきざしがあちこちで起こっている。無償の使いやすいOSというコンセプトに共感した人たちがボランタリーに作ったLinuxもそうだったし、貧困問題に目を向けるためのホワイトバンドのキャンペーンも世界で広がり、日本でもブームになった。社会的な責任を果たす企業を選んで投資しよう、というコンセプトの社会的責任投資(SRI)も欧米で300兆円近い規模になっている。

「しかし、この精神革命が社会を大きく変えていくには、きっかけが必要です。私は利他的モデルの企業が圧倒的な成功を収めることで、社会の変革は加速していくと考えています」

利他的モデル企業の圧倒的成功。それはやっぱり、アミタ自身がそうなろうと考えているのだろうか。そう聞いてみると、熊野社長はニッコリ笑って頷いた。

「いい社会」を一緒に創る「いい会社」

これまでの「いい会社」は、みんなが喜ぶ商品をいっぱい作って、いっぱい取り揃えて、たくさんの人に提供する企業だったのかもしれない。なぜなら社会が求めていたのがそういうことだったからだ。高度成長の時代には、そんな会社が大きくなった。

でも、今は時代が変わってきたのかもしれない。欲しいモノって、そんなに多くはない。それに、アフリカの子どもが炎天下に足を棒にして摘んだコーヒーより、彼らが学校に通えるようになるコーヒーを選びたい、ちょっとだけデザインの違うクルマに買い換えさせる企業より、地球温暖化への影響の少ないクルマを提案する企業を選びたい。そんな「つながり」を大事にした商品・企業を選ぶ「利他的ニーズ」な人も確かに増えている気がする。

そして、これまでは社会と会社の関係性も切れてしまっていたんだと思う。貧困や格差の問題を横目で見ながら企業は事業活動に精を出す、という具合に。でも、いろいろな問題が山積みの今の社会では、企業も手をこまねいていられる状況じゃないはずだ。これからの「いい会社」は、もっと「いい社会」にしようというニーズに応えてくれる会社なのかもしれない。

それから、たぶん会社のカタチも変わってくるはずだ。「新しいぶどう酒は新しい皮袋に」。工業社会では、巨大な設備投資に巨額の資本を投じることのできる重厚長大な企業が、やはり重厚長大な組織で運営されていた。これから到来すると言われる知識社会での資本は何だろう? 人、知恵、そしてやっぱり「関係性」なのだろう。共感でつながった人と人、企業と企業がネットワークとなり、マーケットの共感を集めて事業を展開していく、そんな会社のあり方が増えるのかもしれない

本気で社会を良くしようとする企業がメチャクチャ成功したら、本当に社会は変わる気がする。アミタにはそんな企業のモデルになってほしいと思う。

カイシャがシャカイのためにできること。その大きな可能性を感じさせてくれる「アミタ」。その活動の様子は、今月14日(木)〜16日(土)のエコプロダクツで行われるイベントやセミナーで触れることができる。会場ではエコバックの人気投票も行われる予定。ユニークな作品に新たなインスピレーションが生まれるかも?

詳細はアミタのホームページで
http://www.amita-net.co.jp/

前回の記事はこちらから→「これからのシャカイをつくるカイシャのカタチ(1)」