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お隣の国に学ぶ、伝統的で効率的なエネルギー利用

韓国、世界遺産のオンドルを覗く

紅葉が美しい季節となりましたね。毎日があわただしく過ぎ、もう何年も紅葉狩りなんて風流な時間を持つことができずにいましたが、先週、韓国で思いもかけず美しい紅葉を愛でるひと時を過ごすことができ、感激しました。忙しいときこそ、ときには立ち止まって心と体をリフレッシュさせる必要があるのだとつくづく実感しました

今回の韓国への旅はリサーチのための予備取材でしたので、訪ねる場所も時間にも選択の余地と少しばかりの時間的余裕がありました。この紅葉も「昌徳宮(チャンドックン)」と呼ばれる世界遺産が宿泊先のすぐ近くであったことから、急遽、訪ねることにしたのです。見学は日に数回行われるガイドツアーのみ。そのため、極端に混雑することもなく見学できました。ツアーは韓国語のほか、日本語、中国語、英語のツアーがあります。

ここでは、韓国の古い建築についての説明を受けながらの見学になります。韓国も北部では冬の冷え込みはかなりのもの。その寒さをしのぐための暖房施設がオンドルと呼ばれる床暖房。その構造は、床下に土で煙の通る道を作り、その上に石板を乗せ、泥を塗って油紙を貼って床を作ります。そして、その煙の通る道の中を、かまどで焚いた火の煙と熱が通るというものです。

右の写真は、世界遺産の中の建物の床下ですから、一般の家とは異なるでしょうが、なるほど、床下がこんなふうになっていたんだな、と思いながらのぞいてみました。もちろん、中は真っ暗でなにもみえませんでしたが……。1時間火を焚けば、半日は暖かく過ごせたそうです。台所で使った火の熱気が家中を温めるなんて、とてもエネルギー効率のよいシステム。ずっと昔にこの仕組みを考えた人はすごいなぁと思いました。

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床下には通気口がある
伝統建築の良さを生かしたゲストハウスは快適

オンドルは今でも韓国でポピュラーな暖房システムです。今回は宿泊先も選択の自由があったので、以前から関心のあった「韓屋(ハノク)」と呼ばれる韓国の伝統建築家屋を利用したゲストハウスに泊まりました。ソウル北部の「北村(ブッチョン)」と呼ばれる地区は、かつて高級住宅街で伝統的な建物が多く残されていた地域です。一時はその一部が現代的な建物になったりもしましたが、今では古い家屋の保存地区となっているため、まだたくさんの古い家屋が見られます。また、伝統建築様式で改装するばあいなどのアドバイスをするシステムもあるとのこと。

泊まった宿は木をふんだんに使った伝統的な美しさを残しつつ、トイレやバスルームは現代的に作られた建物で、とても快適でした。エアコンのスイッチがあったので現代風の暖房かとおもいきや、スイッチを入れると床からポカポカと暖まり、オンドルの心地よさが味わえました。もちろん熱源は電気ですが、一足飛びに西欧風の建築にするのではなく、このような形で伝統的なシステムのメリットと今の暮らしを融合してなかなかよいものですね。

木の柱、太い梁、障子(引き戸ではなく、開き戸ですが)、瓦屋根、と一見すると日本家屋との共通点も多い韓国の建物には、どこか懐かしさと親しみを覚えます。伝統建築を大切にする気持ちと、見た目だけではなく、伝統建築のよさを現代の生活にも取り入れる工夫には学ぶべきところがたくさんありました。

どこか懐かしい家屋

*この原稿は2005年に環境gooに掲載されたものを加筆・修正して掲載しております。