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植物でできたCDケース!?

エンタメもエコ時代に突入!
お待たせしましたgreenz.jp「エコなモノ好き!」の2回目は、ソニー・ミュージック・コミュニケーションの不思議なCDケース、”PIM”です。
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ディテールは写真からでは掴めない

不思議な感触

最初このCDケースを手に取ったとき、その何とも言えない不思議な感触に驚きを隠せなかった。乳白色のこのミステリアスな物体は、一見すると紙でできているようで、触ってみるとどうも違う。なめらかでいて、適度な摩擦を感じさせる未体験な手触りに細部まで見入ってしまった。今ここで触ってもらえないのが残念。一度触ったら最後、病みつきになるに違いないのに!

これこそエコなCDケースだ!

何を隠そうこれが、100%植物性の素材でできたCDケース”PIM”ケースである。”PIM”というのは”Pulp Injection Molding”と言う特別な紙成形技術のこと。2004年にソニー・ミュージック・コミュニケーションズ(以下”SMC”)が、大宝工業と共同開発。なんとこのケースの主成分はパルプ、でんぷん、木材セルロースに水を加えてできたもので、100%植物性なのだ。 そしてさらに驚くことには、土の中で6ヶ月すれば分解してなくなるらしい! だが、このケースのポイントはその手触りと素材のみでなく、表面になんでも自由に絵が描けることである。大切なCD-ROMの入れ物、友人への贈り物にピッタリ。

SMCはエコプロダクツ2005、札幌こども未来博、クレヨンハウスとのコラボイベントなどで、このPIMケースを子供向けにも紹介し、実際に絵を描いた子供の親たちからは「こどもが環境を考えるきっかけに良かった」、「新鮮な体験だった」、「プレゼントに最適だと思う」などと好評を得ている。

感想を聞く

まず、PIMケースについて友達に感想を尋ね歩いた。100%植物性だと聞くと決まって「おぉ〜」と感嘆の声。しかし、しばらくすると冷静な意見もちらほら出だした。「丈夫なの?」、「汚れない?」、「値段が高い」(3個1セットで525円)、また、CDケースよりも消しゴム(のカス)とかペットボトルなどいずれはゴミになるものがこういうものでできていた方がいいと言う意見も。

これで525円。安いと見るか高いと見るか

一方で、「紙でできたCDもあったよ」との声もあったので、早速調べてみたらソニーと凸版印刷開発の25Gバイト光デスク{ITメディア}というものがあった。CDの方は51%が紙ということで土で分解してしまうことはないが、可燃物として出せるらしい。ただ、捨てるために買うのではないので、「燃やせます」と言われてもピンとこないかも。

重さを比較

次に重さを量ってみると、PIMケースは約50g。通常売ってあるCD用プラスチックケースは70gほどするから、PIMケースの方が軽い(ディスクは20g弱)。

汚れやすい!?

それではPIMケースは汚れやすいのか。白いからすぐに汚れそうなものだが、そのままかばんに入れて持ち運ぶ程度では汚れない。汚れている机の上でおもいっきりこすりつければ話は別だが、そんなことをすればプラスチックケースなど一発で傷ができてしまう。PIMケースは傷がつきにくく、ひっかき傷などは白いので目立たない。

壊れやすくはないか

いくら軽くてよごれにくくても、すぐに壊れては困る。ということで実験してみた。通常の(A)CDケースと、(B)薄めのCDケース、そして(C)PIMケースをならべて、私の本「新・地球環境ビジネス」約1.5kgを角が当たるようにして高さ約1m50cmのところから落としてみた。すると、(A)は大きなひびが入り、(B)は完全に壊れた。しかし、(C)のPIMケースは無傷! やはり、PIMケースは壊れにくいのか!ちなみにもう一度落としてもびくともしなかったので、次はさらにおおきな「岩波 哲学思想辞典」約5kgを落としてみた。するとさすがに少しひびが入ったがあまり目立たない。これはなかなか丈夫である!

プラスティックケースはこの通りヒビがピシっと
さらに薄いほうはひとたまりもなかった

絵を描く

鉛筆でも絵の具でもなんででも絵が描けるので、アート制作をしている友人の高木つづみさんに自由に描いてもらいました! どうですかこの素敵な絵は!? 世界でひとつだけのオリジナルCDケース完成! ちなみに鉛筆で何か書く場合は、完全に消しゴムで消すのは難しいので要注意。

土に返す

最後に、このPIMケースが本当に土に分解されるか見てみよう。と言っても、東京砂漠に庭をもつセレブな友人をもたない私は、近所の商店街に出かけた。そして、”コキア”と言う植物を買った。だが、これは単に観賞用のためではない。この鉢の中にPIMケースの欠片を埋めるのだ! ・・・しかし、よく考えたら分解するまでに6ヶ月かかるらしい。ということで、実験はひとまずここまで。6ヵ月後に結果を公開予定!

部屋に飾っておきたくなる
これで6ヵ月後には…楽しみだ

新宿に行くならおひとついかが?

ここまで試すと、皆さんも多少なりとも興味が湧いてきたことと思う。ひょっとしたら実際につかうよりも、手触りをたしかめて、重さを量って、本を落下させて、鉢に埋めてみたいかもしれない。使い方は人それぞれ。3ケース1セットで525円(税込み)で新宿の東急ハンズに売ってある。また、クレヨンハウスでも取り扱っている。

エコに取り組むSMC

最後に、この商品を開発したSMCのエコへの取り組みに触れたいと思う。SMCはCD、DVD、ゲームソフトなどのパッケージ印刷などを一手に引き受けている。一方でSMCが力を入れているのが“GREENSTYLE DESIGN”と言う環境事業。エコとビジネスの両立を計ることによって、エコ商品やグリーン電力証書によるエコなビジネスソリューションなど多くの環境に優しい企業活動を行っている。こうして全社で徹底した取り組みを行うSMCなので、PIMケースのようなエコ商品が生まれるのも納得。

さて、そんなSMCがこのCDケースを世に送り出したのは2004年の夏のこと。しかし、認知度はまだまだである。思うに、大量にストックするとなるとややかさばることや、なんと言っても値段がまだ高いことがネックではないだろうか。だがあきらかに既存のプラスチックケースに比べて環境負荷を下げるこのケースを普及させて値段をもっと下げたいものだ。ナチュラルな質感と手触りに加え、プレゼントに最適なので、友達にCDやDVDを送るときのスタンダードになっていけばいいと思う。また、環境問題を考えるアーティストやプロデューサーはぜひともこれを利用して欲しい。

生産側と消費側の双方から需要を高めていければ、普及への希望も見える。そしてもし将来的にこのケースが常識になれば、その時こそ燃えるごみとして捨てられるこのPIMケースの最大の特徴が活きてくるだろう。その頃には、私が鉢に埋めたPIMケースの欠片も分解されて土となり、次なる命の源となっているだろう。