1992年にベルリンに設立されたVereinigte Varben WaWaVoxはアーティスト集団が集まる、一風変わったエコビレッジ。ベルリンの壁崩壊後、東ベルリンには空き家が急増した。そこを「第三の道」を求めて何百人ものアナーキストやホームレス、ラディカルなグループが不法居住し始めたのだ。
- カラフルな建物は、さすがアーティスト集団!
Vereinigte Varben WaWaVoxはそのひとつ。彼らは4年以上かけてボロボロになった建物を修復し、法的手続きを経て、ベルリン市から町に貢献する団体として承認されている。
主な活動内容は、文化活動、ダンスや演劇上演、映画上映、映像スタジオの運営、手工芸品のワークショップの開催などさまざま。メンバーは手工芸品を制作し販売する美術家や、ミュージシャン、映像作家などのアーティストたちで、各々が各々の活動をしながら共同生活をしている。メンバーのほとんどが西ドイツ出身者。
Vereinigte Varben WaWaVoxは今までのエコビレッジとは違っていた。まず、メンバーたちは外でアーティスト活動などをして収入を得て、エコビレッジには“家賃”を払って生活している。循環型の生活をしたり、ボランティアが参加できるような活動は基本的にはないが、ひとつだけ、それは週に1回夕飯を作ることだった。ちなみに、夕食はみんなで食べる、というのがルール。他人同士がどう折り合いをつけながら集団生活していくか、ということ自体に重きを置いているようだった。
- 私が作ったワカメサラダは「ヘルシー!」と好評
- 屋根裏部屋
週に1度メンバーたちによるミーティングが開かれ、ゲストは自由に参加できる。一旦始まると真夜中まで延々と長い議論が続いた。私が参加したときは、「子どもがいるところでの喫煙を禁止にすべきか?」というテーマで意見が交わされていた。私はドイツ語を理解できないので、英語とドイツ語ができるフランス人に内容について聞いてみた。「大変だよ。昔はみんな若くて、自分たちに子どもがいなかったからよかったけど。子どもをもつようになると、子どもが第一優先になってしまう。それは独身の者には理解できないことだし、集団生活では難しいところだよね」
友人に誘われて、Vereinigte Varben WaWaVoxに滞在したものの、今までのエコビレッジとは気色が違っていた。東ベルリンの町中にあったし、持続可能なシステムがあるわけでもなく、ボランティアの仕事もない。だから、リーダーや管理する人もいない。週に1度のミーティングも、公共住宅の寄り合い、という感じで、エコビレッジと言うよりはコミュニティに近いかもしれない。ただ、建物の修復など町をきれいにしようという試みは、イタリアやスイスの村おこし、町おこしをしていたエコビレッジと共通するものがある。エコビレッジと一言に言っても、その国、その地域によっていろいろあるのだと再確認したのだった。