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西多摩の未来を自治体も一緒に考える! 青梅市・羽村市による新連載「マイプロSHOWCASE東京・西多摩編」がスタートします!

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羽村市企画総務部 企画政策課 主査の高岡弘光さん(左)と同主任の町田貴勢さん(右)

特集「マイプロSHOWCASE 東京・西多摩編」は「西多摩の未来を考える!」をテーマに、西多摩を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介し、西多摩での新たなイノベーションのヒントを探る羽村市・青梅市との共同企画です。

一見何の問題もなさそうな郊外都市。

生活施設は充分に揃っていて利便性が良く、働き口もあるし、都心への通勤もできる。区画整理された土地には新しい住宅が建ち並び、街並は美しく、市の財政は安定していて公共サービスも手厚い。おまけに豊かな自然が身近にあって、言うなれば、都市と田舎のいいとこどり!

そんなまちなら、どんなに暮らしやすいだろうかと、想像がつきます。しかし、もう少し未来を見つめて掘り下げてみると、そんなまちだからこその課題がしっかり潜んでいるのです。

10年後、20年後のまちの未来を今から考えていこうと動き始めた東京郊外のふたつの市があります。それが、新連載「マイプロSHOWCASE東京・西多摩編」をスタートさせる青梅市羽村市です。両市は、これからのまちづくりには、まちをともに盛り上げていく“人々”の存在が必要不可欠だと考えました。

今回は連載開始に先駆けて、羽村市企画総務部・企画政策課・主査の高岡弘光さんと同主任の町田貴勢さんに、連載がスタートする経緯やそこに込められた地域への思いを伺いました!

地域イノベーターとして起業したい、仕事は辞めたくないけれどもう少し自然豊かなところで暮らしたい、子育てしやすい環境を探している、そんな人々の希望と期待が集まりそうな両市の思いとその取り組み。いったいどんなものなのでしょうか?

東京・羽村市ってどんなところ?

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市制町村制施行100年記念写真集『目で見る羽村100年』を見ながら、まちの歴史を伺いました(写真:袴田和彦)

青梅市と羽村市は、東京都の西多摩と呼ばれる地域にあります。西多摩はJR青梅線沿線及び五日市沿線にあたり、ベッドタウンとして発展してきただけでなく、少し奥まで行くと東京都とは思えないほど豊かな自然が広がっている地域です。

今回お話を伺った羽村市は、人口約57000人。地域愛着度が非常に高く、ずっと住み続けたい、当分の間住み続けたいという住民が90%以上を占めるというすごいまちです。けれども知名度調査では東京26市中最下位。住民以外にはあまり知られていないというのが実状です。
 
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羽村駅の東側は基盤整備された美しい街並が続きます。遠くの風景を遮らないようにと建物の高さ制限をしているため、どこまでも青い空が広がります

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対する西側は自然が豊かで、かつての面影を残した古い街並が広がります。市内唯一の水田「根がらみ前水田」の裏作を利用した関東最大級のチューリップ畑では毎年4月に「チューリップまつり」を開催。64品種・約40万球ものチューリップが咲き乱れ、多くの観光客が訪れます

かつては多摩川沿いの農村地帯として、養蚕や畜産業で栄えてきた羽村市(当時、西多摩村・羽村町)は、昭和37年に首都圏整備法に基づく市街地開発区域の指定を受けたことをきっかけに、土地区画整理事業を進め、美しい街並づくりと積極的な企業誘致を行いました。

多くの企業が拠点を設けたため、そこで働く人たちが羽村に移り住むようになり、宅地化が進むと、生活の利便性もどんどん向上しました。家族で移り住むことが多いためか、既婚率が非常に高いのも羽村の特徴だそうです。

高岡さん 要するに羽村は、職住近接のまちづくりを進めてきたんです。

羽村駅の東側には基盤整備された住宅街があって、産業道路沿いには企業が集積しています。一方で西側は、古い街並が残っていて、多摩川が流れ、自然が豊かです。

整った街並の中に住むことができて、近くに働き口があり、しかも週末には自然を楽しめるまちなんです。

そんな暮らしやすいまちでも、課題がないわけではありません。近年若い世代の人口減少が顕著となっており、このままいくと人口は2060年に39000人まで減ってしまうという推計が出ています。

地方創生を通じて潜在的だった課題が浮き彫りに

羽村市が現在のような“人”に注目したまちづくりに取り組み始めたのは2014年のことです。これから始まる人口減少を見据えて、羽村市に移り住んでもらうために、市内だけでなく市外への広報にも力を入れていこうというシティプロモーションの観点から始めたものでした。

そんなときに始まったのが、国の地方創生策「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でした。

町田さん 地方創生の戦略を練るまでは、そこまではっきりと、人口減少を課題とは捉えていなかったように思います。

でも政策研究していくなかで、潜在的だった課題が浮き彫りになってきて、どういったまちづくりを進めていけばいいんだろうということをよりきちんと考えるようになりました。

たとえば若者向けの施策として「はむら若者フォーラム」がスタートしました。ワールドカフェ形式でまちの未来を語り合う「はむら未来カフェ」には「はむら若者フォーラム」のメンバーを中心に多くの人が集まり、現在に至るまで、かなりの盛り上がりを見せています。
 
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はむら未来カフェの様子(写真:青木朋子)

シェアードアウトカムで地域をつくる

これまでの羽村市はその暮らしやすさゆえに、住民主体のまちづくりや地域活動がそれほど盛んではありませんでした。実際、NPO法人や地域活動団体の数は多くありません。

高岡 正直今でも、ほとんどの方が課題があるとまでは感じていないかもしれません。

でも、やっぱり課題はあるんですね。地域活動がそれほど盛んでないことも、課題といえるかもしれません。そして、それら課題のすべてが行政だけで取り組めるものかといったらとても無理なんです。

これからは市民のみなさんの力もお借りして“シェアードアウトカム”していく形をつくっていったほうがいいんじゃないかと思っています。

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(写真:袴田和彦)

シェアードアウトカムとは“政府(行政)の独占ではなく、NPO法人や民間企業、地域コミュニティや住民などが主体的に活動することによって公益を実現する”という考え方。つまり、いろいろな層の人々がそれぞれの立場から取り組みを進めていくことで、結果的に課題が解決されていくというものです。

高岡さん 自分にとってもいいけれど、それが地域にとってもいいこと、という取り組みが増えていくのが、最高ですね。

“何か生まれるんじゃないの?”ぐらいのことに取り組んでいく大切さ

高岡さん この間、はむら未来カフェのメンバーと“なんで未来カフェって楽しいんだろうね”っていう話になったんです。そうしたら大学生から、大人と話せる機会があるのが楽しいとか、対話すること自体の楽しさが味わえるのがいいって言われました。

今は、なんでも自動化が進んでいるし、仕事も忙しいので、日常生活の中から対話する場が減ってると思うんですね。でも、アクションを起こすと対話の場が生まれて、何かしらの効果が生まれる。そこからまちづくりもどんどん楽しくなっていくんじゃないのかなと思います。

これまで、行政の手がけるまちづくりといえば行政サービスを充実させたり、ハコモノをつくることが中心でした。しかしさまざまな課題が顕在化してきた今、対話の場をつくり、地域づくりを担う人を育てることこそがまちづくりと呼ばれる時代がやってきました。

高岡さん はむら未来カフェもそうなんですけど、今までの行政では、こういう取り組みはやりづらかったんです。

はっきりした目的があってそれを実現するのが行政の役割だと言われているので、ふんわりしたファジーな取り組み、“何か生まれるんじゃないの?”ぐらいのこと(笑)に取り組めるなんてまずありませんでした。

でもこれからはこういった取り組みこそ地方創生の戦略の中でも取り上げられていきますし、まちづくり系の仕事は増えてくると確信しています。

ファシリテーター養成講座や地域イノベーター・起業家養成講座を開講!

こうした地域の担い手となるプレイヤーを増やしていこうと、青梅市・羽村市は「プラチナ未来スクール実行委員会」を立ち上げ、本年度はファシリテーター養成講座を、2016年度には地域イノベーター・起業家養成講座を開講することになりました。

ファシリテーター養成講座は12月6日にすでにスタートしましたが、定員を超える33名もの受講者が集まりました。青梅・羽村両市に加え、遠方からの参加者もいて世代もさまざま。多くの人がまちづくりや場づくりに強い関心をもっており、来年度の起業家養成講座にも、早くも興味津々だそうです!
 
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(写真:袴田和彦)

ところで、共同事業を手がける中で、特にイノベーターや起業家の養成に力を入れていこうと考えたのは、なぜなのでしょうか。

高岡さん 地域の力が、若い世代に伝わっていないことを実感しています。かといって若い人だけにお願いすればいいのかと言ったら、少子高齢化、人口減少社会って言われてる中で、若い人の負担が増えすぎてアップアップになってしまいます。

だからやっぱりシェアードアウトカムなんです。みんなに少しずつやってもらって、みんなでまちを盛り上げて賑わいと活力を生み出していく。そのためには新たなプレイヤーを増やす養成講座のような場が必要だと思ったんです。

加えて今回注目すべきなのは、地方自治体がまちづくりに関する事業を共同で実施する点です。これは、比較的珍しいことではないでしょうか。

高岡さん 東京都の市町村は、平成の大合併の際に、ほとんどが合併しませんでした。そのかわり、東京都市長会で広域連携の勧めを提言していて、スケールメリットを活かした事業をやっていくことを推進しているんです。そのための助成金制度もあります。

だから東京の多摩地域では、自治体同士の連携はハードルがなくスムーズにやっています。青梅市とも、これまでに何度か共同事業を手がけてきました。

青梅市は人口14万人という、西多摩地域では最大の都市で、駅前は開発が進んでいるものの、森林が占める割合が多く、森の整備や山間部集落の過疎化など、羽村市とは違う課題も抱えています。抱える課題に違いがあっても、連携して事業に取り組む理由はなんなのでしょうか。

高岡さん いちばん大きいのはスケールメリットですね。ひとつの市では難しいことも、協力してやれば実現する。

特に青梅市と羽村市は隣接しています。たとえば小作駅は羽村市の人も青梅市の人も利用する駅です。でも、どちらの市に住んでいるかなんて、住んでいる人は誰も気にしてません。

むしろ、そのあたりでイベントができれば青梅市の人も羽村市の人も一緒になって何かつくれるかもしれないし、その可能性のほうが魅力的だと思います。

自治体同士の見えない境界を意識して壁をつくるよりも、地続きの地域として課題に取り組むことで見えてくる未来があります。まちづくり自体、けっしてひとつの自治体の中で完結できるものばかりではないのです。

連載を通じて、人材の掘り起こしと見える化を

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(写真:袴田和彦)

その前段階として、西多摩地域の魅力発信と、人材の掘り起こしを目的にスタートするのが、今回の「マイプロSHOWCASE東京・西多摩編」です。

高岡さん 個人的に以前からグリーンズには注目していて「はむら未来カフェ」のレポートも掲載していただきました。それをきっかけに話が発展して、連載をやらせていただけることになったんです。

グリーンズに関わっていただくことで、人材の掘り起こしと見える化が進んで、活動している方々の自信につながればいいなと思っています。

町田さん この間、取材させていただく予定の方とたまたまお話しする機会があったんですけど、すごく面白い方でした。でも知らない人のほうがまだまだ多いっていうもったいない状況なんです。

自分たちの周りにこういう取り組みがあるんだ、こんなにすてきな人がいるんだっていうことが力になって、動き出すきっかけになる、そういう連載になってくれたら嬉しいですね。

そして連載を読んで、地域イノベーター・起業家養成講座を受けてみようという人が少しでも出てきてくれたら、本当に嬉しいですし、そうなることを期待しています。

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(写真:袴田和彦)

東京と言われてパッと浮かぶのは、やはり華やかな大都会のイメージです。

でも、それだけではない潜在的なポテンシャルを秘めた郊外地域もじつはたくさんあります。西多摩地域も、まだまだあまり知られていない、魅力的な要素をたくさん秘めている地域です。

地方自治体が地域のマイプロジェクトを支援するというのは、じつはグリーンズでも初の試みです。どんなにすてきな取り組みがここから飛び出してくるのでしょうか。「マイプロSHOWCASE東京・西多摩編」を、どうぞお楽しみに!