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狛江市で開かれた野外フェス「Tamagawa River Festival」で思いっきり遊んだら、河川敷のあるべき姿が見えてきた

みなさんは「河川敷」と聞いて、頭に思い浮かべるものは何でしょうか? ジョギングや犬の散歩、年に一度のバーベキュー、はたまたドラマチックな映画のワンシーン。誰もが人生のどこかで河川敷と紐づく思い出をもっているのではないでしょうか。

とはいえ夏になると、マナーの悪い人びとの騒音やゴミ問題で、行政が河川敷での過ごし方に厳しいルールを設けているのも事実。人びとのモラル向上も大事ですが、自由にゆったりと気持ちよく河川敷で過ごせるようにならないものかと感じています。

昨年の10月のとある週末、私はそんな河川敷で2日間だけ開催されたフェスティバルで、気の向くままにのんびりとした非日常を楽しんできました。

Tamagawa River Festival」略して「タマリバ」は、東京都狛江市にある多摩川河川敷で開催された、音楽とフードとカルチャーの野外フェスティバル。都心を少しだけ離れた場所にある自然溢れる小さなまち、狛江市の良さを、”狛江らしい”方法で楽しく盛り上げていきたい。そんな想いで立ち上がった「comaecolor(コマエカラー)」が主催するイベントです。

大きな柳の木の下で、香ばしいピザを食べたり、テントサウナに入ってみたり、野外ライブ演奏を聞いたり、ワゴンのなかで本を読んだり。野外フェスティバル「タマリバ」で気ままに過ごした1日のレポートを、今回のイベントの仕掛け人であり、greenz.jpライターの山本雅美さんへのインタビューとともにお届けします!

色とりどりのアクティビティで、河川敷を遊び尽くす

小田急電鉄小田原線の和泉多摩川駅から徒歩5分のところにある河川敷が「タマリバ」の会場。到着すると「TAMARIBA」と掲げられた看板が目に飛び込んできます。秘密基地のような見た目にわくわくしながら、さっそく中に入りました。

会場に入って、ライブステージの横に目を移すと移動式の図書館を発見。

図書館の中に入ると、まるで隠れ家のような雰囲気。なのに、窓の外には河川敷の景色が広がり、少しも窮屈さを感じません。心地よい空気に包まれて、いつまでもじっと本を読みふけっていたくなりました。普段このトレイラーはモバイルオフィスとして使用されていますが、タマリバのような野外イベントでは移動式図書館以外にも、多種多様な空間に変身するのだそう。

さっそく本を手にとって、しばし立ち読みしましたが、絵本に描かれている自然が周囲の景色とマッチして、いつもよりぐっと深く物語に入り込めるような気分でした。

図書館を降りて、ふと会場を見渡すと、ビデオゲームにでてくる主人公のような動きを披露する人々が…!細いゴムの上を無重力空間にいるかのように、縦横無尽に動き回っています。

さっそく話しかけてみたところ、彼らが楽しんでいるのは「スラックライン」というスポーツなのだと知りました。私が話しかけたのはスラックライングループ「アミューズ」の人たちで、関東のさまざまな場所でスラックラインを楽しんでいるのだそう。

「やってみますか?」と聞いてくださったので、おそるおそる挑戦してみました。が、バランスを取るのが難しく、手をつないでもらわないとまともに歩けません。

「姿勢をよくして!」と優しく励ましてくださるのですが、ついつい怖がって、見てしまうのは下ばかり。でも、普段なら絶対に使わない身体の使い方をしているのが新鮮で気持ちいい! 小さな子どもたちが軽々と歩いていくのを羨ましく思いつつ、何度も挑戦してしまいました。

日ごろ使わない筋肉を使った後は、ちょっと休憩。河原に置かれたイス型のハンモックに揺られてると、すっかり眠くなってきました。

ハンモックで心地よく揺れた後は、「MIZU JAPAN」によるテント式サウナ体験ブースに。テント式サウナはサウナの本場フィンランド発祥の文化で、その名の通り移動式テントのなかに火をおこすためのストーブや、ベンチなど、サウナに必要な設備一式が用意されています。さっそくテントの中に入ると適度な暗さとホカホカの蒸気と木材の香りに包まれます。

フィンランドのサウナは日本の一般的なサウナよりも温度が低く、熱した石に水をかけて水蒸気を発生させる「ロウリュ」を行うため、心地よい湿気でじわじわと体があたたまっていきます。

ここが河川敷であることもすっかり忘れて、パチパチ音を立てる炎をじーっと見つめてボンヤリしたり、中で出会った人と何気ないおしゃべりを楽しんだり。すっかり温まって外に出るとすっきり爽快。川からの風がとっても気持ち良く感じられました。

日頃あまり風の気持ち良さを意識することはありませんが、建物に遮られることのない空が広がる河川敷だからこそ気づけることなのかもしれません。

一方、会場ではそんな河川敷の広々とした空の下で、色とりどりのフリスビーで遊ぶ子どもたちの姿が。「オリジナルフリスビーワークショップ」で、思い思いの絵を描いたフリスビーを手に楽しそうな様子。さっそく私もイラストレーターのナカオテッペイさんの見本を参考にしつつ絵を描いてみました。

夢中でお絵描きしているうちに、気づけば夕暮れ。ライブステージからは心地よい歌声が聞こえてきます。

できあがったフリスビーをカバンにしまいベンチに座っていると会場全体がライトアップ。木と木の間にかかったカラフルな旗の色が緑の中に、ぼんやりと浮かびあがります。心地よい歌声とおいしいご飯、わいわいと騒ぐ人々の声。日が暮れてからの「タマリバ」は、淡い光と平和な空気に包まれていました。

いろんな川の遊び方があっていい

音楽ライブ、コーヒー、図書館、アート、ハンモックにサウナ。こうして「タマリバ」で体験したアクティビティを並べてみると、一般的にイメージする”川で遊ぶ”とは異なる印象を抱く方もいるかもしれません。

「タマリバ」の主催者の一人でgreenz.jpライターでもある山本雅美さんは、自身の住まいがある狛江市で開催したこのイベント「タマリバ」において、「”川って楽しい”と思う体験がもっとたくさんあればいいのに」という思いを込めたといいます。

以前、この河川敷にはBBQなどを楽しむ人がたくさんいました。ただ利用者の一部のマナーの悪さが問題となり、3年前にすべて禁止になってしまったんです。駅前に「バーベキュー、花火など禁止」と大きく掲示されていますよね? あれを見ると河川敷を楽しむことそのものも遠慮しなくちゃ、って雰囲気になりませんか(笑)

人が離れてしまった結果、近くの商店街では閉店するお店もあったそうです。こんなにも素晴らしい自然があるだから、もっとたくさんの人が河川敷を楽しむことのできる場を、もう一度つくりあげていくきっかけになればと思いました。

山本さんの語る通り、タマリバの会場に向かう途中には「バーベキュー、花火等禁止」と書かれたサインが多数

タマリバに来てもらった人が「もっとこういうことをしたらいいんじゃない?」とか、河川敷の楽しみ方をみんなで想像してみる、今日、この瞬間、「タマリバ」が、そういう場所になってくれたらとても嬉しいです。

山本さんたち「comaecolor(コマエカラー)」にとって、今回の「タマリバ」は、狛江市をもっと楽しくするDIY計画のスタート地点。これからは、多摩川に海の家ならぬ「川の家」をつくる予定もあるのだとか。

「タマリバ」は今年の秋も開催します。そしてほかにも狛江や多摩川を舞台にした他のプロジェクトもいま準備中です。嬉しいことに自分たちのアクションに関心を持ってくれる人たちも増えてきています。日常の生活をする街に小さなサプライズをつくることで、昔から狛江に住む人も、新しく狛江に住む人も、この街をもっともっと愛せるきっかけを続けていければいいなと思っています。

もちろん自然を脅かしたり、周囲の人に迷惑をかける行為に対しては、ちゃんとルールを決めて防ぐことが大切です。だけれど、そうしたルールや規制によって、人々が自然のなかで集い楽しむことから遠ざかってしまうのは、私も勿体ないと感じてしまいます。

多摩川河川敷の「タマリバ」では、人々がとても穏やかにフェスティバルという非日常を楽しんでいました。活気のあふれる平和な遊び場と自然に恵まれた静かな町は、必ず共存していけるはず。そう信じられずにはいられないほど、「タマリバ」にはあたたかくてピースフルで、とにかく楽しい時間が流れていました。