突然ですがみなさんは、“世界一周の船旅”を夢見たことがありますか?
目が覚めると、コバルトブルーの海の上。光り輝く太陽の下、波音をバックに食事をしたり、潮風の中で釣りをしたり。まるで夢のような生活ですが、そういった旅行を叶える豪華客船は料金が高いし、そもそも長期休暇を取得するのが難しいので、リタイアした後に叶える夢として考えている方もいるかもしれません。
しかし、そんな夢の世界一周の船旅が、気軽に実現できるようになったんです。その鍵をにぎるのが、今回ご紹介する「Coboat」。なんと海を渡るコワーキングスペースです!
全長約25mの帆船が、七つの海を渡ります
「Coboat」とは、「共同」を意味する「Co」と、船を意味する「Boat」を組み合わせた造語。最大20名のメンバーが乗り合い、1週間共に働き・暮らすことで、互いに刺激を与え合うという画期的なプロジェクトです。
世界中から集まったメンバーは、デジタルノマドや起業家、専門職などさまざま
「Coboat」がいくのは、豪華客船も顔負けの航路。2015年12月にタイを出発し、インド、トルコ、ギリシャと渡った船は、2016年9月現在、地中海の洋上に。この後、旅はスペイン、モロッコを経由し、大西洋上に浮かぶ、カナリア諸島へと続く予定なのだとか。
とはいえ、「ずっと海なんて飽きそう」という方もご安心を。航海中は少なくとも、週に1度は停泊します。寄港地では新たなメンバーを迎えたり、イベントを開催することもあるのですね。
ノマドやリモートワークには、インターネットが命綱ですが、沿岸地域では3Gや4G、沖に出たら衛星通信を使って、インターネットに接続することができます。また、ホワイトボードやプロジェクターも完備され、プレゼンだってできるんです。
「Coboat」に参加するには、1週間で980~1180ユーロ(約11~13万円)が必要。日本からのフライト代は別なので、安いと見るか、高いと見るかはその人次第かもしれません。
・ビジネスを磨くのに役立つ専門家によるワークショップ
・無制限インターネット接続
・キャビン滞在費(2段ベッドかダブルベッド完備)
・1日3食(ノンアルコール飲料を含む)
・ウォータースポーツ用品貸出
・寄港地での港湾税
・一生モノの体験
ちょっと贅沢そうにも見える「Coboat」での生活ですが、これらを実現するボートは、とても環境に配慮された設計です。
まず船の動力には可能な限り風を利用。風がないときだけ、太陽光や風力発電でエンジンを動かします。石油や化石燃料は一切積んでいません。船内で供給される水も、全て脱塩海水を利用。
また、釣りをするときは周辺海域への配慮を忘れないために、参加者でアイデアを出し合い、ワークショップを開催することも。海を住みかにするからこそ、「Coboat」自体が海洋汚染解決のシンボルとなるように気を配っているのだそう。
沿岸地域で行われた海をきれいにする活動
さて、この斬新なアイデアは、一体どこで生まれたのでしょう?
それは、タイのランタ島にあるコワーキングスペース「KoHub」。オーストラリアから来たデジタルノマドのKarsten Knorr(以下、カルステンさん)は、ここでの滞在中、ドイツ人のGerald Schömbs(以下、ジェラルドさん)らと出会い、意気投合します。
そして世界一周の夢を語り合っていた時、「ノマドらしく、“働きながら世界一周”すればいいのだ」というアイデアが閃いたといいます。
タイで出会ったカルステンさん(左)とジェラルドさん(右)
共同設立者であるジェラルドさんは、タイでの出会いが「Coboat」の種になったように、船内でも生まれるであろうメンバー間のコラボレーションに期待を寄せます。
ジェラルドさん 私たちのミッションは、ノマドの新しい働き方を追求すること。
「Coboat」は普通のコワーキングスペースとは違って、一緒に過ごす仲間との長い時間が、多くのアイデアやインスピレーションを引き出してくれるんだ。コワーキングスペースというより、コワーキングキャンプに近いかもしれないね。
ノマドの新しい働き方には、場所の自由だけでなく、仲間との出会いやアイデアの誕生も含まれているようですね。
現在、日本で週1回以上リモートワークをしたことのある人は2割弱といわれています(出典元)。徐々に増えつつあるとはいえ、「Coboat」はまだまだ、遠い外国の事例にしか見えないという方も多いかも。
しかし今後、導入企業を増やすという計画もあり(出典元)、私たちが当事者となる日もそう遠くはありません。やがて来るその日には、新たな仲間との出会いやコラボレーションなど、働く場所の自由だけではないリモートワークの可能性を存分に味わいたいですね。
[via coboat, fastcoexist, tech, startupdaily, mashable, treehugger, 国土交通省, 総務省]
(Text: 松原裕香子)