ISSUE まちづくり

8 months ago - 2016.01.18

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地域通貨でお店体験!? 商店会の大人から商売の基本を教わり、子どもたちが夢中になる地域通貨「戸田オール」

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地域通貨と一口で言っても、その目的や使い途には色々な種類があります。

地元の商店街のクーポンの役割を果たすものや、ご近所同士が助け合った際に感謝のやり取りとして使われる通帳型のものなど多種多様。

そんな中、主に子どもたちの間で活発に利用されている地域通貨があると聞いて訪れたのが、埼玉県の戸田市。

地域通貨「戸田オール」を使って仕入れから販売までを行う「お店体験」の企画が人気で、長年続いてきました。小学生から中高生までの子どもたちが、地域のお祭りや清掃ボランティアに積極的に参加するきっかけにもなっています。「金銭」とは、また違った意味の対価である地域通貨が、どんな風に運営されているのかを見てきました。

戸田オールってどんなもの?

戸田オールは、もともと2002年に市民活動を活性化するために始まった地域通貨で、もう13年にわたり、有志の市民団体により運営されてきました。戸田がボートで有名なことにちなんで、単位は「オール」。10オール券と100オール券の2種類があり、地元のお店で1オール1円相当の品物と交換できます。
 
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市民は、主にイベントの際に、現金で購入したり、ボランティアをしてこのオール券を手に入れます。イベント主催者は、ボランティアに支払うオール券を、あらかじめ運営委員会から購入しておくのです。手にしたオール券はイベントの屋台や、戸田市内の約110店舗の加盟店でいつでも利用可能。無償でボランティアしたい人の気持を尊重しつつ、わずかでもお返しをしたい場合に活用されています。

個人は換金できませんが、商店は、お客さんから受け取ったオール券を運営委員会へ戻してお金にすることができます。ボランティア活動と地元の商店街活性化を促しながら、地域でオールが循環している、というしくみです。

商店会の大人から経済を学ぶ、「地域通貨deお店体験隊」

今年で14年目になる戸田オールですが、じつはここ数年、ある企画がきっかけで、子どもたちの間で盛り上がりを見せています。オール券を活用した仕事体験が人気なのです。

9月下旬、戸田市役所前で行われた「上戸田ゆめまつり」を訪れると、「お店体験隊」のブースの前に人だかりができていました。小学4〜6年生の14名がチームをつくり、それぞれがゲーム遊びを提供しています。

「コロコロ☆ゲット」「スカイガーデン」などのお店の名前を決めて、輪投げや射的に自分たちなりの工夫を加えたオリジナルのゲームを1回100オールで提供し、景品として、あらかじめ仕入れておいた駄菓子を渡すという本格的な商売。テント前では、「輪投げやりませんか〜?」「1回○○オールでーす」とお客さんにアピールする役割の子も。
 
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「地域通貨deお店体験隊」のテント前には人だかりが

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お客さんは会場の受付で購入したオール券でゲームをします。

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輪投げのゲームに呼び込みをする子どもたち。

毎年、この活動に参加したい小学生は数ヶ月前に立候補し、夏の間に準備を進めます。プロである商店会の大人たちから商売の基本を教わり、研修としてお店にも見学に行く本格的なもの。

参加するのは、小学4〜6年生の子どもたちで、4〜5人で1チームを組み、地域通貨を各チーム7000円分借り入れて、地元の商店で仕入れをします。仕入れたものに、お客さんが喜ぶ付加価値を付けられるかが勝負。どんなサービスが必要か、どれくらいのコストをかけて利益をあげるかなどを話し合って自分たちで決めます。

毎年すぐに売り切れてしまうチームもあれば、売り切るために値引きなどの工夫をしているチームもあり、差ができるのも面白いところ。チラシも手づくりして学校の友人達に配布します。

ゆめまつりは、商店会祭りとしては戸田市で一番賑わう上戸田商店会のイベント。今では毎年この小学生が行う企画も名物のひとつとなり、多くの子どもたちや家族連れで賑わいます。

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テントのなかの様子を見ていると、まだ小さなよちよち歩きの子が輪投げするときには、より近いところに線を引いてあげたり、特典の駄菓子が不平等にならないように気配りをしたり。子どもたちは、じつに行き届いたサービスをしています。

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今年はお祭りの来場者も1万人と多く、お店体験隊の売上も3チーム合計で5万オールを上回りました。利益は子どもたちで平等に分け合うことになっていますが、今年は利益が高額だったため一人2000オールずつ分配し残りは寄付することに。

07_uriage_DSC_0383全部売り切って大満足の子どもたち。

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商店会の方々を交えた反省会も。

「おしごと体験隊」「トコトコ清掃隊」など子ども参加のボランティアが充実

「お店体験隊」と並んで、秋の商工祭で行われる「おしごと体験隊」も人気の企画です。

こちらは、お店全体を自分たちで運営するのではなく、商工祭に出店するお店のお手伝いスタッフとして小学生が働くというもの。役割は、店頭でのお客さんへの呼びかけや、宣伝PR、接客など。当日先着60名までの受付で、子どもたちは1時間に200オールを稼ぎます。小学生のまとめ役として「隊長」を中高生が行っているのもユニーク。

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お店の前で、接客に挑戦する小学生たちと、それを見守る高校生。

また、これとは別に、イベント当日に申し込むことのできる「トコトコ清掃隊」というボランティアもあります。ゆめまつりには、多くの飲食店の屋台が出ているにも関わらず、ゴミ処理がとても優秀。というのも、子どもたちがこの清掃隊として会場内を歩きゴミを集めてまわるのです。

「ぼくたちは、子どもたちの清掃ボランティア、トコトコ清掃隊です。ゴミのある方はビニール袋をもった子どもにゴミを渡してください!」

そんな呼びかけとともに、袋をもった子どもたちが、会場を練り歩きます。1回参加すると200オールのお小遣い稼ぎができ、今年のゆめまつりでは、一日で約50人の子どもたちが参加しました。
 
10_tokotokoゴミを受け取るだけでなく、自らゴミ集めに一生懸命になる子も。

たまったオールはどう使う?

こうしたボランティアで稼いだオールを、子どもたちはいったいどう使うのでしょう。貯めておいて次のお祭りで使う子もいれば、商店会のお店でも使えるのは前述のとおり。さらに人気なのが、年に2回学校で行われる「おもちゃ交換会」です。

これはNPO団体「エコライフDAYとだ実行委員会」が毎年6月と12月の環境月間に開催しているもので、中古の玩具や文具、手作りのおもちゃとオール券を交換できます。この学校ごとに行われるおもちゃ交換会が子どもたちにとっては、大きな楽しみ。この日のために、ボランティアで手に入れたオールを大切にとっておきます。中にはオールを集めてコレクションしている「オール長者」と言われる子もいるのだとか(!)

地域通貨運営に初期の頃からスタッフとして携わってきた高本久美子さんは、子どもたちの間で少しずつオールが浸透していることを嬉しいと話します。

高本さん イベントの時は子どもたちの喜ぶ顔が見られるから、ほんとに楽しいですよ。みんな一生懸命で。普段もどうやったらオールもらえるの?と聞いてくる子どもも増えました。

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運営委員会のコアメンバー、高本久美子さん。

戸田オール、発行と使い途の広がり

子どもたちがお祭りやボランティア活動に参加する大きなきっかけになっている戸田オールですが、地域の中でも大きな広がりを見せています。

2011年からは、使用済みインクカートリッジをオール券と交換できる制度を開始。カートリッジ一つで10オール、最大50個までを交換できます。50個もっていけば500オールになるとしたらちょっとしたお小遣いになりますよね。

この取り組みは、小学校や商店会の協力で4年前から始まって以来、年々協力者が増え、今は市内の25の商店で10月から1月末まで交換ができます。(そのうち8の商店では常時交換できます。)貯まったカートリッジは学校に寄付され、ベルマークと交換されて、学校の机やボールなどの備品として還元されます。
 
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高本さんも、ある市民団体に所属していて、着ぐるみのキャラクターがイベントに出演する際には、スタッフに、オール券で謝礼を支払います。

高本さん ボランティアなので大した額はお支払いできませんが、100円200円を現金で支払うのは失礼かなと思っても、せめてお茶代にと、オール券であれば渡しやすいですよね。私自身も、雨が降ってきたから悪いけど車で送ってもらえない? と友人に頼む時は、オールでお礼をしたりしています。

大人の場合、数百オールを手にしたら、普段より少しぜいたくなものを…との気持からか、うなぎ屋さんなどで多く使われるのが、面白いところ。

さらに今年から、市内のコミュニティバス「トコバス」も100オール券で利用できるようになりました。市役所からボランティアへの謝礼としても活用され始め、ここ2〜3年でいっきに発行枚数が増えています。初年度2004年に発行したオールが5402枚(17万8000円程度相当)だったのに比べて、2014年には3万1001枚(250万円相当)。回収率(商店を通して換金された率)も昨年は80パーセントを超えています。

広がったがゆえの悩み、これからの課題

順調に広がってきたように見える戸田オールですが、この13年間、さまざまな紆余曲折がありました。担当の、市役所の市民生活部協働推進課の矢作圭翼さんは、その難しさをこう話します。
 
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戸田市役所、市民生活部協働推進課の矢作圭翼さん。

矢作さん 初めは市民のボランティア活動を促進するために始まった戸田オールですが、何かをしてほしい側と、してくれる人のマッチングが難しかったんです。もっと市民同士で日常的な困りごとを助け合えるような相互扶助を促すものを目指していたのですが、今は主にイベントの時に集中して発行し、使ってもらうような流れができています。

それでも、日常的にどこへ行けばオール券を手に入れられるかといった問い合わせが増えてきたので、いつでも地域通貨を発行できるしくみをと、インクカートリッジの交換を始めました

最近では発行枚数が増えた分、その管理負担も大きなものになっています。ずっと経理担当だった高本さん。

高本さん 額も大きくなってきたので、いち市民がボランティアとしてやり続けるには荷が重くなりつつあります。責任もありますから。何らか運営方法を改善したほうがいいタイミングかもしれません

14_mtg3_DSC_0576毎月必ず一度は定例会議が行われ、戸田オールの利用拡大に向けてどんなことを行っていくか、話し合いが行われています。

設立当初は「地域通貨で市民活動を楽しくする会」として集まった有志も、少しずつ自分の活動に軸足を置くなど卒業して、運営スタッフが減っているのが現状の大きな課題。それでも、地域通貨を広めるためにどんなことができるのか、どう発信していくか、毎月熱心な会議が行われています。

今後もっとさまざまな利用方法が考えられる戸田オール。スタッフ絶賛募集中!とのことなので、戸田市で何かおもしろいことをしてみたい方や、自分の地域でも生かしたいという方がいらしたら、一度参加されてみてはいかがでしょう?

戸田オールについてもっと知りたい!
地域通貨戸田オール公式ページ

writer ライターリスト

甲斐 かおり

甲斐 かおり

greenz シニアライター 編集・企画・執筆。地域コミュニティ、モノづくり、里山・郷土文化、農業をテーマに取材し、雑誌やwebで書いています。greenz.jpではコミュニティ、町づくり、「地域からの発信」を主に。『TURNS』『ソトコト』『自然栽培』ほか。 twitter: @karorirorin Facebook:甲斐かおりページ

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