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小さな庭もみんなであっという間に「食べられる庭に」。ソーヤー海さんと本間フィル・キャッシュマンさんの「パーマ オ ジャマ」プロジェクト

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この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、「採用について」をご覧ください。

突然ですが、みなさんは「パーマブリッツ」という活動を知っていますか。

もともとは、オーストラリアの人気番組「バックヤード・ブリッツ」という一般家庭に突撃(ブリッツ)隊がお邪魔して荒れ果てた裏庭を一日で大改造してしまう番組をもじり、そのパーマカルチャー版としてオーストラリアで始まった活動のことです。

パーマカルチャーとは、オーストラリアのビル・モリソンとデビット・ホルムグレンが構築した「permanent(永続的な)」と「agriculture(農業)」や「culture(文化)」を組み合わせた造語。

農薬などに頼らずにその土地ごとの自然環境を生かしながら植物や野菜・ハーブなどを育て、雨水利用やコンポストトイレなど循環型の暮らしをデザインしてゆく手法。物質的ではなく精神的な生活の質を向上させる、いわば日本での古き良き循環型の暮らし、里山の現代版のようなものです。

世界規模で環境の悪化が深刻化し、食糧危機や食の安全が問題となっている現代社会において、自宅で無農薬の家庭菜園をはじめ地産池消や環境保護に取り組みたいと考える人たちも増えてきています。
 
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子どもから大人まで参加してコブベンチをつくるワークショップ。材料は藁、粘土、水だけ!

特にオーストラリアでは、深刻な水不足により伝統的な芝生中心のイングリッシュガーデンではなく、気候に適した環境負荷の低いパーマカルチャガーデンへと転換する動きも。でも、資金や労力不足で庭の改造がかなわないという人も。

一方、パーマカルチャーの教育普及に携わることが認められる設計資格PDC(Permaculture Design Certificate)を取得しても、造園設計を実践できる場が少なく、無償でも実務経験を積みたいと考えている人もいるのだとか。

そのような実務経験を積みたい人と、練習台として庭を提供してくれる人、さらにパーマカルチャーに興味を持ち手伝いたい人たちが集まり、2006年にメルボルンで「パーマブリッツ」が始まりました。

この「パーマブリッツ」は、アメリカ西海岸など英語圏ではすでに広まっており、日本でも浜松で行われています。

今回、湘南地域では初の試みとして、おじゃま虫とパーマカルチャーをひっかけて「perma-o-jamma(パーマ オ ジャマ)」とネーミングも新たに2015年3月8日(日)・9日(月)の2日間、本間フィル・キャッシュマンさんソーヤー・海さんの呼びかけのもと神奈川・三浦郡葉山町の「シェアハウス 紬」にて、活動を開始。その体験レポートをお届けします。
 

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本間フィル・キャッシュマン
南房総在住のパーマカルチャーデザイナー/ビルダー。2007年パーマカルチャーの父、ビル・モリソンからパーマカルチャーデザインを学ぶ。2013 年PERMACULTURE AWAを南房総に設立。コンポストトイレ、自然建築、水の自然浄化システム、石釜、日本みつばち養蜂やエディブルガーデン(食べられる庭)づくり等の技術のワークショップを行い、日本で様々なフィールドをデザイン。

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ソーヤー・海
コスタリカでのジャングル生活中にパーマカルチャーと出会い、アメリカでのパーマカルチャー研修を経て「東京アーバンパーマカルチャー」を主催。近著に「都会からはじまる 新しい生き方のデザインURBAN PERMA-CULTURE GUIDE」。

周りの人たちをどんどん巻き込んで広げていく

少しひんやりとした、でも春の息吹がちょっとずつ感じられる晴天のもと、10数名の人たちが集まり、パーマオジャマが始まります。
 
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はじめに海さんから、

アメリカ西海岸などではお金が無いけど友達がたくさんいるという人たちが集まって、資材を調達したり苗木を分け合ったりしながら周りの人たちをどんどん巻き込みながら広がっている。葉山でもご近所さんに挨拶するなど、周りの人たちへの配慮も忘れずに。

土との関係だけでなく、人とのつながりも考え、いかにその人たちを巻き込んでゆくかが大事。庭のデザインだけではなく、人もデザインしてしまうのがパーマオジャマ流。

との説明が。

そして簡単な自己紹介の後、まずは4つのチームに分かれパーマカルチャーの基本、その土地の自然環境を生かすための観察から始めます。
 
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初対面のみんなで自己紹介。国際色豊かな集まりに。日本語は私より上手な人たちばかり!

植物ガイドブックを見ながらどこにどんなものが生えているのか、またコンクリートの壁や塀、水道の位置なども確認しながらカラフルなガーデンMAPをつくります。
 
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各チーム真剣です!

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春の息吹、フキノトウがたくさん! この辺りは少し湿気が多いのかも? などと話しながら、画用紙に。

数分後にはそれぞれに個性ある、とっても素敵なMAPたちができました。
 
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力作MAPのでき上がり!

ここの庭は比較的広いけれど、塀に沿って背の高い樹が何本かあり、夏になると生い茂ってしまいます。そこで日当たりの良い手前半分に野菜用と小さなハーブ用のベッドをつくることになりました。

ベッドをつくることにより、人が入って土が踏み固められることなく、また何もしなくても年月と共に積もった落ち葉や木枠などが良い土になるとのこと。
 
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ベッドのサイズも作業効率を考えて。大人が腕を伸ばした時のサイズが45cm位なので、幅を90cmにすると、真ん中まで手が届き、左右から楽に畑作業をすることができるとフィル先生からアドバイス。

お金をかけない裏技!

使用する木材や肥料、畑の周りに敷くチップなどは、フィルが千葉で調達してくれたり、葉山で入手。なんと全てもらいものばかり!

節などがあり建築材としては使えない端材や、運送会社が廃棄予定のパレットなどは無料で譲ってもらえるそう。多くの自治体で、間伐材や庭木剪定後の回収した木屑を処理した落ち葉堆肥やウッドチップなども無料配布しているそうです。

この無料で入手した木材を使用して、ベッドの枠をつくります。
 
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手づくりだからと言って、妥協は許されません。僅かなズレも逃さず、きっちりサイズを測り、曲がっていたら何度でもやり直す。美しく仕上げるのが「perma-o-jamma (パーマ オ ジャマ)」の美意識。

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ノコギリでカットしながら長さが違う端材をパズルのように五段重ねに組み合わせ、ねじで固定してゆきます。

日が暮れてだんだん暗くなってきましたが、チームワークもバッチリになり、真っ暗になる前に、4つのベッドをつくり終えることができました。
 
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日暮れと共に作業終了

一部の人たちの間では、タネや苗の交換会も始まりました。もちろん遺伝子組み換えや人工的に品種改良されていない在来種の野菜や自家採取したハーブの種、自分で発芽させた柚子の苗などを、お互いに分け合います。
 
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自家採集したハーブの種から春の気配が~

翌日はハーブベッドづくり。野菜ベッドにはフィル先生の秘伝も!?

午後から雨という予報なので、急遽、予定より早く作業開始。直前のアナウンスだったため、人が集まらず、私が駆けつけた時には、なんと2名のみで黙々と作業していましたが、とにかく、未完成だったハーブベッドつくりに参戦。

完成している4つの野菜ベッドには、フィル先生秘伝の「3年ふりかけ」を。
 
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まずは葉山、みとめ牧場の牛ふん堆肥をこんもりと。次に石灰、南房総から持ってきたリンが豊富な木の灰、さらになんと、こうもりの糞(これもリンがたっぷりで、ホームセンターなどで普通に売っているそうです!)
最後にマグネシウムが入っている苦土石灰を撒き、完成です。

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ご近所のお姉さんがおチビちゃんを連れて応援に。 何しろ3人しかいないので、なかなか作業が進みません。でもチビちゃんに良いところを見せるため頑張らなきゃ!

徐々に空模様が怪しくなってきて、ちょっぴり心細くなってきました。しかし「こんにちは」「遅くなりました」と、1人、2人、3人と人が集まってきて。中には「30分だけ時間が空いたから」と駆けつけてくれた人も!!

気づけば、10人以上の仲間たちが作業をしてくれていました。
 
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なかなか終わらなかった作業もあっという間にでき上がり~

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ベッドの仕上げ。通路の土を掘り起こし中に入れて、通路にチップをきれいに敷き詰めます。見た目が美しいだけでなく、年月をかけて通路が良い堆肥へと変化。こんなところにも、効率よく美しくデザインするパーマカルチャーの技が!

使う人の目線で植物を配置する

完成したベッドに、千葉から運んできてくれた野菜やハーブを移植。ハーブなど収穫を頻繁にする植物はとりやすい場所に配置しました。
 
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千葉からおすそわけのネギの苗

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収穫しやすいように配置したハーブの苗

苗を植えた周りには藁をひいて、雑草が生えたり乾燥して土が荒れたりしないようにして完成です!

どうにか天気ももちこたえ、4つの野菜ベッドとハーブベッドの土入れも無事完了。
 
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最後に、これから育てたい植物の苗づくりのため、土と堆肥をまぜてポットに入れて、種撒き。

待ちに待った、豪華な“持ち寄りご飯会”

作業の後は、持ち寄りご飯会の始まり。

人数が集まると、想像以上にたくさんの美味しいものたちが並びます。一人ずつこだわり素材や料理の説明をしていきます。どれもヘルシーなのにとっても美味しい! どうやら腕の良いシェフたちの集まりだったようです。
 
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美味しいものが勢ぞろい。

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本場の味、インドの方がつくったカレーまで!

そしてなんと、今回のために手づくりのピザ窯も運んでくれていました。
 
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手づくりのピザ窯

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実は作業の合い間に、ピザ仕込み部隊も結成!

美味しいやきたてのピザまで堪能することができました。
 
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窯の中で、おいしそうに焼けてゆきます。

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程よい焼き具合の絶品、手づくりピザ!

最後に、一人ずつ、参加した感想を。

仕事柄、普段は紙を扱っており、土に触ることがない生活でしたが、土を触ることができて気持ちよかった。

そして、中にはノコギリやインパクトドリル、クワや、スコップでさえ使ったことがなかったという人も。

使い方を教えてもらうことができて良かった。道具はきちんと使わないと疲れることが判った。

海くんの本を読んだりパーマカルチャーを学び、妄想だけはあったが、実際にやってみて、大変な作業もあったが、とてもよくわかり、みんなで一緒に作業ができて楽しかった。

初対面の人たちばかりの中で、最初は緊張していたが、力を合わせて一緒にやっていくうちに仲良くなり、とても楽しく作業ができた。

など、たくさんの感想がシェアされました。

この2日間参加して、一人でパーマカルチャーの庭をつくろうと思っても、どうしたら良いのかわからなかったけれど、たくさんの人が智恵や資材や道具等など色々なものを持ち寄って、みんなで庭づくりをすれば、あっという間に楽しみながらできてしまうことを実感しました。

また、人が集まって同じ作業を成し遂げることで、初対面だった人たちの間に連帯感が生まれ、仲間という感覚や人のつながりができてくるんだなと感じました。

オジャマ畑の40日後の様子

3月初旬に行ったパーマオジャマ第一弾から、40日程経過した4月中旬になると、仲間たちとつくった畑のベッドや苗床に撒いた種から、たくさんの春の訪れが。一緒に植えた野菜や果物、花の苗なども新芽が出始め、様々な植物たちが共生するパーマカルチャーガーデンらしくなってきました!
 
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つくったときはただの土だけだったベッドも、少しずつ緑が増えてきて、畑らしくなってきました。移植したソラマメもベッドが気に入ったらしく、紫の可愛いお花を咲かせてくれています。スナップピー(スナップエンドウ)の芽も育ち盛り。

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寒い間温室庫代わりにしたキエーロ(コンポスト)の苗床からも、野菜やハーブ、お花など、イロイロな種から芽が!

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去年収穫したオクラの種を蒔き、自家採取した野菜づくりにも挑戦!

畑の周りのお庭も移植したブラックベリーの苗木は葉っぱが茂り緑豊かになってきたり、挿し木にしたイチジクから新芽が出てきたりと素敵な植物たちの共生が始まっています。

季節の移ろいとともにだんだんに賑やかに素敵になってゆくパーマオジャマガーデン。

一つ一つは小さな庭でも、たくさん集まれば、環境も良くなっていくはずです。

みなさんも一緒に、パーマオジャマの庭をつくりませんか?

(Text:中村東香)