ISSUE まちづくり

1 year ago - 2015.05.22

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物件の市場的価値より、まちをおもしろくする価値をつくる! 小田原に誕生した「旧三福不動産」立ち上げメンバーに聞く、これからの不動産会社のあり方

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みなさんが不動産屋さんに足を運ぶのは、どんな時でしょう?

進学や就職で初めての一人暮らしを始める時、念願だった自分のお店を持とうと決意した時、はたまた、新天地に移住したいと思った時など、これからの暮らしをつくる大切な場所を探す時、頼りにする存在ですよね。

今回ご紹介するのは、神奈川県小田原市に誕生した、一風変わった不動産屋さん「旧三福不動産(きゅうさんぷくふどうさん)」。当然のことながら、不動産会社として、あなたの希望に合った空き店舗や空き家などの物件を仲介してくれます。でもそれだけでは終わらず、これからこのまちで始まるあなたの暮らしや仕事までもサポートしてくれるのだとか。

みんなの人生を一緒に考え、答えを探しながら、まちをもっとおもしろくする「旧三福不動産」。その取り組みに込めた想いを、設立メンバーのみなさんに聞きました。
 
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シェアスペース「旧三福」の2Fに誕生した旧三福不動産。

小田原の暮らしや仕事をおもしろくする「旧三福不動産」

「旧三福不動産」は、以前greenz.jpでもご紹介した、小田原の竹の花商店街にあるシェアスペース「旧三福」の2階に窓口を構える不動産屋さんです。今年3月、「旧三福」代表の山居是文さん、不動産会社で7年の実績を積み独立した渡邊実さん、宅地建物取引士である加藤英二さんの3名により設立されました。
 
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「旧三福不動産」のウェブサイト http://93estate.com/

ウェブサイトを覗くと、「田舎のおばあちゃん家のような土間付き平屋」、「昭和ロマンの木造アパート」など、個性豊かな物件が並んでいますが、旧三福不動産のコンセプトは、「そこにある物件をできる限り生かしながら、みんなのチャレンジの場をつくる」こと。他の不動産会社では取り扱わない、いわゆる「市場的に価値のない物件」に価値を見出すところが旧三福不動産の最大の特徴です。

例えば、公道から離れているため取り壊すこともできない旧家を、小田原のアーティストのアトリエにリノベーションしたり、昔は栄えていた飲み屋街の閉まってしまった店舗を、旧三福不動産ならではのアイデアとともにテナント募集したり。
 
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小田原市本町にある旧家。市場から価値が薄いと見放された物件をできるだけ味を生かしながら、新しい息吹を吹き込んでいく。

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丁寧に手入れをして暮らしていた趣を、そのまま伝えたいそう。

市場からは見放されてしまったけれど、小田原というまちで、かつて誰かの暮らしがあった建物。それらに独自のセンスとアイデアで価値をつけることで、みんなが楽しくなる、チャレンジできる場所に変えていきます。

さらに、旧三福不動産では、店舗などの契約がまとまった“その後”にも関わっていきます。鍵を握るのは、シェアスペース「旧三福」に集う、建築家、カメラマン、ライターといった様々な職種のクリエイティブな人たちとのネットワーク。「こんなことがやりたい!」に応える多才な人々が集まる旧三福ならでは強みを生かし、人と人をつないでいきます。

旧三福不動産の門を叩くと、物件を借りたその日から、小田原の暮らしや仕事をおもしろくする出会いのストーリーが始まるのです。

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今年3月開催された旧三福3周年パーティーで旧三福不動産もお披露目。小田原をおもしろくする人々が集結。旧三福不動産の事務所のデザインも旧三福メンバーの建築家が携わったそう。

物件を仲介するだけでなく、そこにどんな暮らしを築くのか、どんな仕事を生み出すのか、といったことまで一緒に考え、サポートする。それが、旧三福不動産の仕事なのです。

日常がおもしろくなれば、まちはもっとおもしろくなる。

3年前、「小田原に人が集まる空間をつくりたい」という想いでシェアスペースをつくった山居さん。このタイミングで、渡邊さん、加藤さんと共に不動産会社を立ち上げたその意図とはなんだったのでしょうか?
 
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山居是文さん。2012年、築50年の中華食堂をリノベーションしシェアスペース「旧三福」を立ち上げる。自分の価値観を見つける学びの場「暮らしの教室」や、コワーキングスペースの運営など、様々な角度から“まちがおもしろくなること”を仕掛けている。

山居さん 旧三福を立ち上げた時は、東京と小田原を行き来するような働き方をしていました。

立ち上げから3年を迎えるにあたり、小田原を中心に仕事をすることに目を向けるようになったんです。小田原でビジネスを展開しながらも、まちがおもしろくなることをやろうと決めていました。

山居さんがもっと小田原に重心を置いたビジネスを手掛けようと構想を始めた頃、時を同じくして、旧三福の仲間である渡邊さんが7年間勤めた不動産会社から独立。また、渡邊さんの同級生である加藤さんが宅地建物取引主任者を取得し、3人のタイミングがピタリとあったと言います。
 
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旧三福不動産立ち上げメンバーの3人。左から加藤さん、山居さん、渡邊さん。

新築物件の需要の減少を目の当たりにし、「建築資材よりももっとやるべきことがあるのではないか」と考えていた加藤さん。不動産業界で、魅力的な物件が解体されていく事例を何件も見てきた渡邊さん。そして、旧三福の立ち上げ当初から不動産会社立ち上げを考えていた山居さん。

3人は、不動産というキーワード、そして、「小田原が好き」「まちをもっとおもしろくしたい」というシンプルな想いで意気投合し、不動産会社を立ち上げることに。

山居さん まちがもっとおもしろく変わるということは、日常が変わることだと思っています。何かイベントがあって、その時だけ大勢人が来るのではなく、新しいお店ができたり、引っ越してくる人がいたり、日々の暮らしの中で人の流れが変わることが大事だと思うんです。

そのためには、空き店舗、空き家などの遊休不動産をいかに活用できるかが鍵。その橋渡しをする不動産屋の立ち上げを考えました。

3人は、旧三福に訪れる様々なクリエーターとともに、2階部分のセルフリノベーションを決行。2015年3月、長らく閉まっていた2階へと続く階段のシャッターは、小田原が好きという人々が見守る中、「旧三福不動産」への入り口として開かれたのです。
 
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1階は、元中華食堂のシェアスペース「旧三福」。左脇にある2階へと続く階段が旧三福不動産への入り口。

物件に新たな価値をつくる不動産屋へ

こうして立ち上がった「旧三福不動産」。そのコンセプトは、3人それぞれの経験と想いから固まっていきました。

建築資材の会社に勤めた経験を持つ加藤さんは、少子高齢化が進む中、新築の案件が年々減り続けている現状を目の当たりにしてきました。そして、「これからも新築の需要はもっと減っていき、この先10年で新築マンションや新築物件の需要は今の半分くらいになるんじゃないか」と話します。

一方で、不動産業界の様々な現場を見てきた渡邊さんによると、「現状の不動産会社では価値がなく救えない、でも魅力的な物件は小田原にも山ほどある」のだとか。
 
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旧三福不動産代表・渡邊実さん。不動産業界7年の経験と現状への疑問から独立し旧三福不動産設立に至る。

渡邊さん 7年間不動産業界にいて、知らしめられたというか。不動産会社が「価値がない」と判断すれば、どんな方法をとっても最後は壊され、木片のチップとなる。そんな事例をいくつも見てきました。

僕は、そんな現状はおかしいと思う。古いけど素敵な物件を通常の不動産屋では救えないのであれば、救える不動産屋にならなければいけないんです。

「通常の不動産会社では価値の見出せない物件は、これからどんどん増えていく」と渡邊さんは言います。そこに独自の目線で価値をつけることで、物件を「救える不動産会社」へ。さらに加藤さんは、「暮らしが見つかる不動産会社」でありたいと言います。

加藤さん これからの不動産屋は社会的な機能も求められていくんじゃないかなと思いました。人生の場面場面に答えていくような、人生のレイヤーの話ができる不動産屋。ここを訪れると、これからの「暮らし」が見つかるような。

僕は新築を斡旋するよりも、これからの未来をつくる、そんな仕事がしたいと思っています。

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加藤英二さん。建築資材会社に勤務後、同級生である渡邊さんが独立したことをきっかけに宅地建物取引主任者の資格を取得。旧三福不動産設立メンバーとなる。

「新築を建て何十年もローンを組み、そのために働く。人々がそこに本当の価値がないと気付く時代はもうすぐそこにきている」と加藤さんは言います。

今あるものの価値を再構築し、そこから人々の暮らしや仕事を生み出すという、新たな価値観を提唱する不動産会社。それこそが、旧三福が見つめるビジョンなのです。

まちの未来をつくる、これからの不動産会社のかたち

立ち上げから2ヶ月ほど経った旧三福不動産には、物件を借りたいという人だけではなく、同業者の不動産屋さんや、地元の大家さんも訪れるのだとか。

市場的に価値の見出せない物件の相談や、今は空き家になっている生家の解体以外の道を探したいという人など、想いは様々ですが、皆、まちを好きな気持ちは同じだと言います。

また、小田原には、3人と同じく、「大好きなまちをもっとワクワクする地域へ」という想いで活動する、いわばまちおこしのプレイヤーは数多くいます。数々のNPOや自治体が盛んに活動する中、3人が不動産業というビジネスに行き着いた根底にあるのは、「一時的では終わらないまちづくり」をしたいという想い。

山居さん  例えば、理念のある人が、みんなが楽しくなるようなまちづくりをしたとしても、その人がいなくなってしまったら、途端にうまくいかなくなってしまう。それは残念なことだと思うんです。

大切なのは、一人ひとりが、そのまちで自分のやりたいことをして自分の暮らしをつくるということ。理念がなくとも、楽しくてビジネスにもつながる、暮らしが成り立つ。そんなまちであることが、自ずとまちが栄えていくことにつながるんじゃないかと思います。

小田原から新しいビジネスや暮らしが 生まれることこそ、本当に日常が変わること。実際、旧三福不動産はビジネスとして成り立ち、自分たちが小田原で楽しく仕事ができています。旧三福不動産はこれからの不動産会社のひとつのあり方なんだと思っています。

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旧三福不動産のホームページにはこんなことばが添えられています。

古いけど、新しい小田原の不動産会社 旧三福不動産です。

わたしたちが楽しく暮らすための新しい視点と、市場から価値のないとされる物件を生かすことのできる、そんな、古くて新しい不動産会社。

「旧三福不動産って?」を一言にしようと色々な言葉を考えましたが、「小田原というまちが好き」に尽きるような気がします。その土地を愛する人ひとりひとりが、大好きなまちへの関わり方や住まい方を考えることで土地や空き家の課題は、おもしろく解決していくのではないでしょうか?

自分の大好きなまちで、自分が楽しくなる暮らしがまちをもっとおもしろくする。

ちょっとワクワクしてきたら、旧三福不動産の3人に会いに行ってみませんか?
 
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旧三福不動産にいってみよう!
旧三福不動産

writer ライターリスト

たけいしちえ

たけいしちえ

greenz ライター 湘南在住。大豆レボリューションに参加のち、大豆の魅力の虜に。大豆を育て、収穫、味噌を仕込むサイクルを基本とした365日を営む。大豆栽培7年目。神奈川県津久井在来種を化学肥料に頼らず、自然の力で収穫中。

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