ISSUE☆グリーンズ企画 マイプロものがたり

1 year ago - 2015.02.16

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最初のコンセプトから外れても、やり遂げるために必要な決断がある。会員数20万人を突破した「giftee」太田睦さんに聞く「成長の秘訣」

giftee_logo

ソーシャルデザインの担い手を紹介する「マイプロSHOWCASE」スタートから約3年。greenz people(グリーンズ寄付会員)のみなさまの会費をもとに展開する新連載「マイプロものがたり」は、多くの共感を集めたマイプロジェクトの「今」を伝える、インタビュー企画です。

小さな「ありがとう」を伝える、ソーシャルな贈り物サービス「giftee(ギフティ)」。「このサービスをつくったのは自分がほしかったから」という太田さんの個人的な想いから始まったgifteeは、「マイプロ」の代表例のひとつです。

gifteeをgreenz.jpで初めて紹介したのは、まだα版だった2010年11月のこと(記事はこちら)。

ソーシャルメディア上でお礼やお祝いの言葉を交わす感覚で、簡単な贈り物ができる画期的なサービスとして大きな反響を呼び、その後もβ版のリリースなどを記事で紹介するとともに、株式会社ギフティ代表取締役の太田睦さんには、green drinksや「What’s CSV カンファレンス」などのイベントにも登壇していただきました。

初登場から約4年、会員数約20万人のサービスへと成長したgifteeの今とこれからについて、太田さんにお話を聞きました。
 

太田睦(おおた・むつみ)
1984年生。2007年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、アクセンチュア株式会社に入社。SEとして官公庁プロジェクトのシステム開発に従事した後、2010年8月にギフトサービス「giftee」を運営する株式会社ギフティを創業。代表取締役に就任し、現在に至る。

壁を乗り越えるために必要なのは

「スタバのコーヒーを1杯贈ることをイメージしてサービスをスタートした」という当初のgifteeは、都内にある小さなカフェの飲み物などをTwitterやFacebookを通じて友だちに贈ることができるというものでした。

しかし、最初にイメージしていたスターバックスのコーヒーを、すぐにギフトに加える事はできませんでした。それは何故だったのでしょうか。

2011年の2月にはスターバックスに提案を持っていったんですが、立ち上げたばかりで信用がないことに加え、POS(店舗の端末とサーバーが通信し販売情報の管理などを行うシステム)改修が必要だったということが大きな障壁になりました。

ギフトを受け取るときにバーコードを読むんですが、そのときほぼリアルタイムにgifteeのサーバーと通信しなくてはならなくて。そのためには全店舗でシステムの改修をしなければいけない、そこまで費用はかけられない、ということだったんです。

それでも興味は持ってくれて、トライアル店舗に導入して、「ギフトに添えられたメッセージを介して、お客さんと店舗のパートナーがつながれたっていうのはすごく良かった」と言っていただけました。

でも同時に、「すぐに導入するのは難しい」とも言われてしまいました。

「マイプロとして始めたときは、POS改修がそんなに大変だとは知らなかった」という太田さんは、そこで大きな壁にぶつかりました。しかもちょうどその頃、東日本大震災が発生。

「ギフトを人に贈るようなモチベーションにならない」という時期でもあり、「かなり落ち込んだ」と太田さんは言います。

そんなときに話があったのが、大手コンビニエンスストアのファミリーマートでした。「店舗にある端末のファミポートを活用するために、ソーシャルギフトをやってみたい」という話で、スターバックスでネックとなったシステム改修は不要。

ただ、ギフトとして提供できるのはコーヒーのような単品の商品ではなく買い物券で、「最初のコンセプトから離れてしまう」と悩んだそうです。

しかし、「全国1万店舗規模の商品が入ったときにどう動くのだろう」という興味から、やってみようと決断。さらに12月には「やはり単品の商品でやってみたい」という思いもあり、クリスマスチキンを贈るキャンペーンを実施しました。

インスタントくじで数人の友だちに無料でチキンを贈れるというもので、実際に参加したという方もいるのではないでしょうか。このキャンペーンでは、1週間で6万本を配り、ユーザー数も一気に3万人まで増えたそうです。
 

2012年のクリスマス・キャンペーン

そこからファミリーマートと付き合いが深まっていきましたし、その実績を持って他の企業にも足を運んで、ソーシャルギフトの力をアピールすることができるようになりました。

一般的なクーポンでは交換率が2~3%で成功と言われる世界で、gifteeのギフトはファミリーマートで交換率8割だったことが、企業には新鮮にうつったようです。

と、キャンペーンは成功に終わったようですが、大手のコンビニで、しかもキャンペーンにギフトを利用するというのは、「友だちにコーヒー1杯を贈る」という最初のコンセプトからかなり離れてしまっているという印象も受けます。

事業を継続させていくためにポリシーを曲げた、とまでは言わないまでも、どこか最初に描いていた軌道から外れているのではないか、そんな見方もできるでしょう。

プロジェクトを進めていく上で、このファミリーマートとの取り組みにはどのような意味があったのでしょうか。

コンセプトの捉え方を少し広げたというか、「僕らがやりたかったことってなんだったっけ」と立ち返ったときに、「ソーシャルのつながりでちょっとしたギフトを贈れる」というのを当たり前にすることが重要だと思ったんです。

コーヒーにこだわるよりも、買い物券を喜ぶユーザーがいるならそれでもいいんじゃないか、と。

決断に必要なもの

マイプロとして始めたときの太田さんには、「これがやりたい」という想いが強かったはずです。

でも、それをやりとげるためには参加してくれるユーザーが必要で、ユーザーを獲得するためには彼らが望んでいるものを実現しなければなりません。

自分がやりたいこととユーザーが望むもの、そのバランスをどう保つのか、それが太田さんを悩ませていたのでしょう。
 
太田睦さん

例えば、ストリーマーコーヒーのコーヒーは、そのカフェの良さをわかってる人からすれば送りたくなるギフト。受け取る人も渋谷界隈に行く人であれば、たとえ行ったことがなくても行くきっかけになると思うんです。

でも、そもそも相手の行動範囲がわかっている人が、友人の中でどれくらいいるのか。自分の行動範囲外だと「面倒くさい」という思いが先に立ってしまって、それだったら近くのファミリーマートで受け取れる300円のほうがいいんじゃないか、と。

いろいろなユーザーがいる中で、より多くの意見はスターバックスやファミリーマートという選択肢を増やして欲しいという意見だったのだそうです。

初期にgifteeに参加した人たちは逆の意見の人が多かったですが、それでも続けていくためには、より多くの人が望むことをやってビジネスとして回していかないといけないんです。

ファミリーマートとの経験は結果的に、より多くのユーザーが望むことが何かを知ることができ、また他の企業へのアプローチもやりやすくなったという意味で「必要なステップだった」と言う太田さん。

やるかどうか”迷い”が生じたときに、決断の決め手となるものは何なのでしょうか。

”ぶれない”っていうのは一つ重要だと思いますね。gifteeであれば、アウトプットが”友だちに贈るギフト”という形になるという部分は譲れません。

あとは、自分が今やってるプロジェクトのポテンシャルを高める物が来たら、「ここを変えてみたらどうなるのか」ということを検証するチャンスだと思って、トライアルをやってみること。

最初は「え?」と思うことでも、よく聞いてみたら大きな可能性につながる話という場合もあります。

芯となるぶれないコンセプトを持ちながら、様々な可能性を試していくことで、ビジネスとして成長しながら、最初の目標に向けて一歩一歩近づいて行くことができる。

太田さんがマイプロジェクトを続けてきたからこそ見えた景色は、私たちに大切な気付きを与えてくれています。

成長の”その先”へ

「最初に考えていたよりスピードは遅い」と言いながらも着実に成長しているようにみえるgiftee。

昨年6月からは、ついにスターバックスの取り扱いも始まりました。当初の目標を達成した太田さんは今、何を目指して事業を運営しているのでしょうか。
 

スターバックスギフト画面

去年、スタバも含めて、ロクシタン、アフタヌーンティーといったブランドが入ってきて、プレイヤーが揃ってきたという印象です。

そのことに僕個人は満足しているし、最初からいるメンバーは「こんなにまでなった」と受け止めてくれています。

でも、途中から入ったメンバーは物足りないというか”その先”を見たがっていて、そこまで想像してなかった僕にとっても刺激になりますし、視野を広げてもらえた気がしています。

今年は、gifteeが”その先”へと進む飛躍の年にもなりそうですが、太田さんは「色々と考えている」といいます。では、具体的にどのような”その先”があるのでしょうか。

ひとつには「お客さんにスタバのコーヒーを贈れるようにしたい」という話を頂いて、法人向けのサービスを考えています。

もうひとつは、細かい話は省きますが、POSのシステムを他の企業に提供したり、プレオーダーのような別のサービスに利用したりという可能性もあると考えています。

法人向けやシステム提供という新たな可能性。最初に障壁となっていたPOSも思わぬビジネスチャンスにつながったわけですが、「ちょっとしたギフトを贈れるサービスを提供する」というgifteeの最初のコンセプトから離れていってしまわないのでしょうか。
 
太田睦さん

最初のコンセプトからは、全く外れますね。だから、その世界に入ってばーっと働いて、その先に行き着いたときに「なんでこれやってるんだろう」と思ってしまわないようにしないといけない。

「その先にあるものを実現したいか」、「その世界にワクワクするかどうか」を常に確かめないと。

とはいえ、僕はマイプロとして始めて、いろんなハードルがある中で同じ思いを持ったメンバーと切磋琢磨して、一つ一つのハードルを乗り越えてきた。

その、みんなが挫折してきたハードルをこのチームで乗り越えていくという過程がすごく楽しかったんです。

だから、この山も登ったら楽しいんじゃないかというのがあって、そこで揺れているのが「今」です。

「贅沢な悩み」と太田さん自身もいうように、最初の目標を達成しようとマイプロジェクトに取り組む人たちにとっては夢の様な話です。

でも、最初の目標を達成したからこそ、その先にあるものについて考え、そこから「そもそも何をやりたかったのか」という初心に戻っていく姿勢からは、学ぶべきものがあるように思えました。

グリーンズ読者への贈り物

そして、最後にグリーンズの読者へのメッセージを聞いたところ、こんな答えが返ってきました。

ローカルのカフェが好きで使ってくれている人も多いと思うので、それは「すみません」と言いたいです。

ローカルカフェがもっと引き立つようなものを考えたいと思っていますし、アイデアを持ってる人がいたら教えて欲しいです。

この言葉から私は、giftee自体が実は太田さんとチームからわたしたちへのギフトなのではないかと感じました。

ギフトを選ぶ一つの方法は、自分自身も欲しい物を選ぶこと。太田さんはそもそもこのようなサービスが欲しいと思ってマイプロジェクトを始めたわけです。それが実現したということは、それはわたしたちに贈られたギフトだと思うのです。

「ユーザーの声を聞くことを大切にしている」という太田さんですから、わたしたちが何が欲しいかを伝えれば、きっとそれを実現してわたしたちに届けてくれる。そんな期待を抱くことができました。

マイプロジェクトを始めたときのコンセプトを、そのプロジェクトの内容だけでなく、取り組む姿勢にも反映させる。意識的に行っているかどうかはわかりませんが、太田さんがそのような姿勢でいられたからこそ、gifteeは「成功」と呼べる成長を遂げたのではないでしょうか。

そんなgifteeがこれからどのような方向に成長していくのか、これからも見つめて行きたいと思います。

小さな感謝の気持と一緒に、オンラインから気軽にギフトを贈ろう。
ソーシャルギフトのgiftee(ギフティ)

writer ライターリスト

石村 研二

greenz シニアライター 東京生まれ。大学の法学部を卒業するも、法律に向いていないことに気づき、長いモラトリアム期間を過ごしながらひたすら映画を観る。 2000年にサイト「日々是映画」を立ち上げ、書くことを仕事にすべく駄文を積み重ねる。現在、ライター/映画観察者。greenz.jp以外には六本木経済新聞、WIRED.jpなどに出没。暇なときはSFを読んで未来への希望を見出そうとし、世界は5次元だと信じている。 日々是映画-ヒビコレエイガ http://www.cinema-today.net/

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