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九州ちくご地方の“もの”と “人”に出会う。地域のアンテナショップ「うなぎの寝床」と「ゲストハウス川のじ」で新しい旅を体験しよう!

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「ゲストハウス川のじ」外観 右隣が「うなぎの寝床」

旅に出ると、その地方の名産品やその土地ならではのものを食べたり買ったりしたくなりますよね。

でも最近は、地元の名産品も種類が豊富すぎたり、どこへ行っても同じようなものが並んでいたり…とお土産選びに困ってしまう、そんなことはありませんか?

今回は、そんな旅先で選りすぐりの”もの”に出会い、地元の”人”と交流・宿泊できる福岡県八女(やめ)市のアンテナショップとゲストハウスをご紹介します。

魅力的な“地方の手仕事”を買える&伝える場所を

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うなぎの寝床の店内。九州ちくご地方の衣食住にまつわる暮らしの道具が集められています

福岡県八女市。ここに九州ちくご地方のものづくりを伝える地域のアンテナショップ「うなぎの寝床」があります。

八女といえば緑茶が有名ですが、中心市街地である八女福島は、城下町から発展した商人・職人のまちで、その町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。

そのまちの中心部にある町家を改装したショップが「うなぎの寝床」。小さな看板とのれんをくぐると、代表自らが、お店から車で一時間半圏内の地元の工房や工場に足を運び、選びぬかれたものたちが並んでいます。

代表の白水高広さんと店長・バイヤーの春口丞悟さんは、以前厚生労働省が行う事業「九州ちくご元気計画」で活動を共にした後、2012年にうなぎの寝床をオープンしました。

筑後地方のものづくりには、木工やガラスといった工芸品、久留米絣などの織物、八女茶や海苔などの食のもの、石鹸やアロマオイル、化粧品、花火などなど数多くあります。

そんなものたちをひとつひとつ、つくり手では伝えきれない、素材の特徴や製造工程、使い方、つくり手の思いも伝えていく中で、その真摯な姿勢とセレクトの素晴らしさが評判となり、九州はもとより全国各地からお客様が訪れるショップとなりました。

もんぺは”日本のジーンズ”だ!

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MONPEの着こなし: パン職人のワークパンツとして

うなぎの寝床の主力商品のなかにもんぺがあります。もんぺは、1942年、厚生省が婦人標準服という規格を発表した際に、活動衣として指定され全国に広まった歴史があります。

しかし、戦時中、防空用に女性は国民服としてもんぺを半ば強制されたこともあり、その素材や活動のしやすさよりも、劣悪な戦時中の生活を思い出させる代名詞に。

戦後もファッションとしては普及せず、その着心地の良さと機能性に気づいた農民を中心に作業着として定着していきました。

ジーンズがアメリカのワークパンツから始まって、日常着に変わり発展してきた歴史を考えると、もんぺを日本のワークパンツとして今も履けるものになるのではないか?

そう考えた代表の白水さんは、地元に残る久留米絣を使ったもんぺの着方の提案や布の開発に取り組みます。
今では“日本のジーンズ”となるべく、4つの久留米絣の織物がともに考え、24のテキスタイルを使ったオリジナルの「MONPE」もあります。

そして博覧会形式でMONPEを展示する催しも4回目を迎えるほどに成長、今年は八女のショップだけでなく、福岡や東京への巡回展も開催されました。

Webサイトでは、MONPEを家での部屋着として、木工やパン屋さんのファッションと作業性を両立させた新しい作業着としてコーディネートを提案。自分で生地を選んだり、アレンジしてつくりたい人のためにMONPEの型紙を販売しています。
 
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MONPEの着こなし: 日常着として

この地域に住んでいるからこそ発信できる情報がある

商品を買うときに、それらがどんな風につくられたのかというストーリーや伝統を知ることは、そのモノが「自分のライフスタイルに合うかどうか?」という問いかけを自分自身に課すことにつながります。

つくり手の思いや伝統を知った上で、自分のライフスタイルに合ったモノを購入する。すると、それは単なる商品ではなく、愛着が湧くたいせつな相棒のような存在になるかもしれません。

そうして九州ちくごのものづくりを、商品を通じて深く知ると、「その場所に行ってみたい! ものづくりの現場や伝統を肌で知りたい」という欲求が出てきます。

通販で購入した商品を通じて、福岡八女・ちくご地方への興味が湧き、旅先としてうなぎの寝床のショップ訪問を軸にした旅行者の方も増えてきました。白水さんは言います。

店がオープンした当時はあまり考えていなかったのですが、「このあたりで地元の人に人気の飲食店はありますか?」「おもしろい取り組みをしている場所へ行きたい」など、とにかく来店されるお客様によく質問されるんです。

深く生活に根ざしつつ、この店ならではの視点を持つ地元情報が求められているんだな、と気づきました。

「この地域に住んでいるからこそ発信できる情報がある」。うなぎの寝床ショップはこうして、自分たち以外のお店の情報や、宿泊先、食事先、お店などを紹介、地元のニュースなどを発信するアンテナメディアとしての役割を持ちはじめました。

そうした遠方からの来店者も多くなったショップは、ものを売る場所以外の役割を果たすようになってきました。
 
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商品の全てに商品の産地や特徴など丁寧な説明が書かれてあり、ひとつひとつのものに対する思いが伝わってきます

買い物だけじゃもの足りない人はお隣りのゲストハウスへ

うなぎの寝床への来店をきっかけに、八女福島を訪れる人が増えた今、この土地をもっと深く知り、感じたい人が増えている。何かもっとよい発信方法はないものだろうか?

そんな白水さんの考えが周囲にも伝わってきた頃、当地八女市出身の柴尾悠さんは、まちがショップの隣にある空き家の利用方法を探っていることを知ります。

柴尾さんは、以前から国内外のゲストハウス(リーズナブルな価格で共有スペースの多い素泊まり宿)を利用した経験から、地元八女でゲストハウスを開業したいと思っていました。

オーストラリアで一年ワーキングホリデービザを利用しながら、ゲストハウスやルームシェアで滞在し、旅行者や文化の違う人たちと交流した柴尾さん。

海外に出てみて地元の良さを再確認しました。それまでは福岡県でも外れにあり、豊かな田園が残っている自分の故郷よりも、福岡市内や大学時代に過ごした関東や、なんでもある都会のきらびやかさに魅力を感じていました。

そこで、もっと日本の農村や自然をより深く感じられる地元八女でできることは何かと考えたときに、「自分も気に入ってよく利用していた旅人が交流するゲストハウスをつくりたい!」と思うようになったんです。

海外で働く前からその気持ちはありましたが、ますます想いが強くなりました。

そう思いながらも、開業に向けて具体的なアクションを起こすきっかけを掴めないでいた柴尾さん。

地元に戻ったあとは、得意のIT系技術を活かした仕事をしながらチャンスを待っていましたが、所属していた「NPO法人八女文化振興機構」で空き家再生の清掃ボランティアを企画したところ、その参加希望者数の多さに驚かれることに。

古いものを大切に、地元と密着して生きる自分と同じような価値観で行動している人がこんなにも多くいるのなら、自分の考えているゲストハウス計画も支持されるのかも、と思いました。

アンテナショップ以外の地元の発信方法を探っていた白水さんと、まちにゲストハウスをつくりたかった柴尾さん。

そんなふたつのおもいが重なり、うなぎの寝床のお隣に、「ゲストハウス川のじ」が誕生したのです。
 
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左:ゲストハウス川のじ:柴尾悠さん 中央・右:「うなぎの寝床」店長・バイヤーの春口丞悟さん、代表白水高弘さん。お互いの店舗前にて談笑中

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「ゲストハウス川のじ」玄関

八女福島の町並みは、約20年前から空き家になった古い町家を再生・改修・活用する地元の住民組織による改修を経て、現在に至っています。

そして、その仕組みを利用した人が、新しくカフェを開いたり飲食店を営む一方、今でも提灯屋や仏壇店などを長く営んでいるところもあり、新しい息吹と古くからの伝統が、程よくミックスされているのが魅力的です。
 
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八女福島の古い町並み。白壁と板壁、格子窓が印象的です

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現役とは思えないほどレトロ感満載の店舗

2014年4月にオープンしたゲストハウス川のじは、その名の通り、八女福島の元提灯屋さんだった古民家の良さを最大限に活かしたつくり。

昔ながらの町家暮らしを体験してもらいたいため、和室に布団を敷いて文字通り“川の字”になって寝ます。ふすまで仕切られただけの空間を、男女別の相部屋、または貸切部屋として宿泊することができます。

ゲストハウス玄関の床板はべんがら柿渋塗り。べんがら柿渋塗りとは、べんがら(酸化鉄顔料)・柿渋・松煙を混ぜ合わせた塗料。色彩は赤褐色からこげ茶色まであります。

八女福島では毎年塗るのが習慣だったため、この建物もべんがら柿渋塗りを体験するワークショップを通じて、有志でメンテナンスを行いました。間や土壁、小さい中庭があり、間口が狭く奥に長いうなぎの寝床型と呼ばれる構造は、現代の住宅環境とは違って、新鮮な驚きがあります。
 
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二階の宿泊スペース

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古い灯籠も残る美しい中庭

宿泊するお部屋は、昔ながらの古いつくりをそのまま残し、窓枠も木製。カーテンはなく、木製の雨戸を閉めて寝ます。夜は真っ暗、トイレに行くにも一瞬下りるのを躊躇するような急な階段を降りるか、靴を履き直して玄関をぐるっと廻って行かなくてはいけない……。

そう聞くと、一瞬躊躇してしまう方もいらっしゃるかも? けれどそこには理由があります。

ゲストハウスの名称を「川のじ」にしたのは、今の暮らしとは違う、昔の生活そのものを体験することにこだわったからです。

例えば古い町家では、音がもれやすいから隣の人にそおっと気遣いをする、夜は暗いから早めに寝る、というような。もちろん電気は通ってますし、電灯もありますが(笑)

それに相部屋形式で知らない人と過ごすなら、必ず挨拶したり、少しお話したりしますよね。ゲストハウスの良さは、そうした偶然の出会いがあること。その象徴として、和室でお布団を並べて寝る“川の字”をキーワードにしたのです。

ゲストハウス川のじの宿泊部屋は最小限の設備。でもその代わり、1階の共有スペースには、自由に使える冷蔵庫やキッチンがあり、お茶の産地で有名な地元産の八女茶も飲み放題。

Wi-Fiも完備しているので、インターネットで旅情報を調べたり、仕事だってできてしまいます。そこは現代らしい心配り。

2014年秋現在、男女別相部屋宿泊だと、1人1泊3,000円、一室貸切で9,000〜12,000円と、かなりリーズナブルな価格で泊まることができます。
 
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美しくリデザインされた洗面所。古い建物でも水回りは気持よく使えるよう改修しています

九州の地酒を持ち込んで、その日宿泊する人たちやオーナー柴尾さんと晩酌して「消灯まで話が弾んでしまった!」なんてことが起こるのも、共有スペースが多いゲストハウスのよさのひとつです。

朝食は、その日の朝、地元の食堂から八女産の農作物を多く使った和朝食が配達されてきます(※要事前予約)。まさにこれが地産地消。宿ひとつだけで宿泊・食事などのすべてを賄うのではなく、食事は地元の商店で、という地元重視の素泊まり宿ならではのサービスです。
 
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添えられた手書きのメモもうれしいほっこり美味な朝食

不便な生活も、見方を変えれば、新しい価値観を受け入れるチャンス

共同トイレ・シャワー、相部屋で知らない人と川の字に寝る宿。古民家ゆえの不便。ふだんの常識で考えたらマイナス面に思えるようなことも、捉え方ひとつで見え方が変わることってよくあります。

何かをもっと深く知りたい、感じたい、体験したいと思ったら、その土地に行ってみること、土地の人に会うこと、話すことがその第一歩。

そして、その土地にできるだけ長く滞在し、よい部分だけでなく、不便だったりマイナスに思えることもまずは体感してみることで、自分の持っている価値観を再認識したり、新しい概念が生まれるスタート地点に立てるのかもしれません。

現在ゲストハウス川のじでは、宿泊だけでなく、映画上映会や英語のワークショップを行うなど、地元の住民の方も集まるコミュニティスペースのような役割も果たしています。

地域のアンテナショップのうなぎの寝床で、その地に産まれた商品を通して九州ちくご地域を知り、ゲストハウス川のじで、地元の人や旅人と出会い、古民家を肌で知る。あなたもそんな”価値観が揺さぶられるような”旅を体験してみませんか?

(Text: 西村祐子)