ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

1 year ago - 2014.10.13

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藤野電力の生みの親!鈴木俊太郎さんが目指す “ものづくりから始まる自給自足”とは?


藤野電力メンバーの鈴木俊太郎さん。ご自宅の独立型ソーラーシステムの配電盤の前で。

わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

独立型ミニ太陽光発電システムの組立ワークショップや、イベントへの自然エネルギー電力供給など、さまざまな活動で全国的に知られる「藤野電力」。グリーンズが手がけるプロジェクト「わたしたち電力」にも全面協力してもらっています。

あまり知られていませんが、そんな藤野電力の方向性を決定づけた、原点ともいうべき方がいるんです。それが、藤野電力のある旧藤野町のお隣、旧相模湖町に住んでいる鈴木俊太郎さんです!

停電になっても、鈴木さんの家だけは明かりが灯る


蓄電用バッテリー置場。たくさんありますが、全部を使っているわけではありません。いつのまにか、あちこちから集まったのだそう。

鈴木さんが考えたミニソーラーシステムのことが、多くの人に知られるきっかけになったのは、東日本大震災でした。藤野周辺地域では停電が起こりましたが、鈴木さんの家だけは明かりが灯り、音楽を聴いたり、携帯の充電をしたりと、普段と変わらずに生活していたのです。

今でこそ、太陽光発電を暮らしに取り入れる人は増えていますが、当時はまだまだ、実践している人は少なかった頃。それをきっかけに、鈴木さんは、知人友人から、太陽光発電に関する勉強会を開いてほしいと依頼されるようになりました。

そして話を聞いた人たちが、これならばすぐに暮らしに取り入れられると実感し、にわかな盛り上がりを見せたのです。

藤野電力が何をやろうかと話をしていたとき、みんなは発電所をつくるとか電気を買い取るとか、そういう話をしていました。

でも僕は、そういう非現実的なことは置いといて、自分の家の電気を自分で賄うのが基本じゃないでしょうか、っていうことをずっといってたんです。でも最初はみんな「ええー」って感じだった(笑)。

でもあるときから、ワークショップをやろうっていう流れになってそれがうまくいって、毎月毎月、いろんなところからいろんな人がきてくれた。正直「こんなにくる人がいるんだ!」ってびっくりしました。そういう需要ができたんだなぁって。昔は全然なかったからね。

イベント出店用のミニ太陽光発電システムから藤野電力のキットが誕生!

鈴木さんが太陽光発電に興味をもったのは、もう18年も前のこと。きっかけは、当時乗っていたフォルクスワーゲンのキャンパーのバッテリーが、すぐに上がるようになったことでした。

通勤に使っていたので、朝、突然エンジンがかからないのは困るから、帰ってきては充電しての繰り返しでした。でも電気代がもったいないし、いったいどうしようかなと考えていました。

で、たまたま夏のすごく暑い日に駐車場に歩いていったら、陽が当たって車がカンカンに焼けそうな状態になっていたのを見たんです。それで、この太陽のエネルギーを何かに使いたい! という衝動に駆られて…。昔見たカタログにヨット用のソーラーシステムが載っていたことを思い出して、買ったんです。

その後、イベントに趣味の自家焙煎コーヒー屋台で出店するようになると、電動コーヒーミルやお店の照明などにも、ソーラーシステムを活用するようになりました。そして何を隠そう、このイベント用のミニソーラーシステムが、現在の藤野電力のワークショップ・キットのベースになったのです。
 

イベント用に使っている20wの小さなパネルも、現役で活躍中!

僕も、けっして本格的にやっていたわけではないんです。あくまでイベント用で、たまに停電になった時に、照明を点けたりしていたぐらい。

藤野電力でワークショップをやることが決まったので、教える以上は知らないわけにはいかないと思って、そこから勉強も兼ねて、家でも常時使えるように200wのパネルを買って、配線しました。

今では、いちばん使うリビングの照明や2階の照明、浴室や給湯器、携帯充電や扇風機用に数カ所のコンセント、洗濯機や冷蔵庫の電力を、太陽光発電で賄えるようにしています。

ものづくりの達人が目指すのは、ものづくり中心の自給自足


12VのLED直流電球を使って、照明の電力はしっかり自給。配線はもちろん鈴木さんご自身で。

お金があったら、パネルだって10枚ぐらいポーンと買って、家の電気を全部賄うこともできると思うんだけど、それはすぐには難しい。ただね、やらないよりはやったほうがいい。

だからちょっとまとまったお金が入った時に、パネルを1枚だけ買ったの。コントローラーやバッテリーはあったから、自分で工事すればお金はそんなにかからないでできます。

じつは鈴木さん、家はログハウスを大工さんと一緒にセルフビルドし、太陽光発電や薪ストーブでエネルギーはなるべく自給、オリジナルの機械をつくってコーヒー豆を焙煎したり、非電化冷蔵庫を自作してみたり、屋根にシャワーを取り付けて、熱を下げる工夫をするなど、大きなものから小さなものまで、なんでも手づくりしてしまう、ものづくりの達人なんです。
 

なんと、インパクトドライバーに手づくりのカゴを取り付けて、コーヒー豆の自家焙煎を行なっています!

ちなみに、本業は整体師なんですが、アウトドア関連の本を出版したり、藤野電力の住宅施工部門を担当したり、古民家リフォームなどの大工仕事を手がけるなど、もはや何屋さんなのかわからないほど、さまざまな仕事をしています。どれも、趣味や興味が、いつのまにか仕事につながったものばかりです。

僕は、田舎じゃなくて自然の中で暮らしたかった人。自然の中での暮らしは、つまり、なんでも手づくりの生活なんですよね。

ただ、農業が大変なのは、以前に有機農家のお手伝いをしてわかっていたので、働きながらやるのは難しいと思いました。だから、野菜は庭先でちょっとつくるぐらいにして、木工や鉄工などのものづくり中心からの自給を目指しているんです。

家に関わる部分が多いから、家づくりに合わせていろいろ始めた感じかな。

つくれるのか、つくれないのか


山小屋を思わせるすてきなリビング。

子どもの頃、『アドベンチャーファミリー』という、ロッキー山脈の山奥に移住した家族を描いた映画を観て、大自然の中での暮らしを夢見たという鈴木さん。

ログハウスの雑誌、レザークラフトや彫金のやり方が載っている雑誌の記事をスクラップして、大人になったらやろうと何度も読み返すような子どもだったそう。

自転車を分解したり、バイクが壊れれば修理したりと、できることはなんでも自分の手でやってきました。

…買うっていうイメージがないんだよね。まずどういうつくりなのかを調べて、これならなんとかなるかなと思ったら自分で直したり、つくっちゃう。つくるのが楽しいし、考えるのも楽しいんだろうね。

ちょっと暗いからここに窓をつけちゃおう! とか、ここの床を抜いちゃおう! とかね。で、これっていうのが決まったらバッとやっちゃう。

何か欲しいものがあるとき、私たちはまず、それがいくらかかるのかを考えます。けれども鈴木さんは、まずそれがつくれるのか、つくれないのかを考えるのだそうです。

若い頃は、お金があんまりありませんでした。だから食べるものを一生懸命節約して道具を買っていました。使いやすくて丈夫で長持ちするのが基本ですね。

特に登山用品やアウトドアウェアは命をかけるものなので、必然的に物を見る目が厳しくなりました。とにかく、道具があればなんでもつくれるし、お金をかけるなら道具にお金をかけたいんです。


少しの段ボールや小枝を燃やすだけで、あっというまにお湯が沸くアウトドア用のケトルを使ってコーヒーを淹れてくれました。奥にあるのはこれまた手づくりの雨水タンクです。

物を買えば、お金は際限なく必要になります。けれども道具は、一度買ってしまえば一生モノ。多少の故障なら、修理すればなんとかなります。そうした鈴木さんのライフスタイルが、今や仕事にまで結びつきました。

子どもが小学校に上がるので、地域の中で暮らせるようにと、長年関わってきた福祉の仕事に区切りをつけました。整体師として完全に独立したのは、震災のあとのことです。

でも、すぐにはそれだけじゃ暮らせないのでどうしようかなと思っていたら、藤野電力が始まったんです。仕事の時間が自由になっていたことで、ワークショップや住宅の施工などにも手が出せるようになりました。独立してやりたいことをやる時間ができて、それがだんだん仕事になってきちゃった感じです。

時代の変遷とともに、自己満足から、伝える役割へと


これどうぞ、と出されたおやつは、薪ストーブの上でじっくり火を通した地元産のじゃがいも。素朴だけど、とびきりのごちそうおやつです。

藤野地域は、山に囲まれたいわゆる田舎ですが、東京に近いこともあり、ある程度は都会の恩恵を受けて生活できる地域です。

その中で、長年のうちに蓄積された、鈴木さんの知識と技術、考え方は、いつのまにかコミュニティの新しいつながりを生み出す原動力となりました。そして、買うのではなくつくるという、未来への新しい価値観を、たくさんの人の暮らしの中に落とし込んでくれました。

僕はもともと、こういうライフスタイルを広めたいと思っていたわけじゃないんです。自分がやりたくてやっていただけで、20年前の当時の価値観からすると「山の中で不便な暮らしをしたいっていう変わった人」なわけです。

それが10年経ったら、自然志向が一般的にブームになって、本屋にいったら、田舎暮らしとか、自給自足とか、有機栽培とか、そういう雑誌がずらっと並んでる。広めるような機会も増えてきた。ついにこの時代がきたかと(笑)。

じゃあ、自己満足じゃなくて、もう少しみんなに伝えたほうがいいのかなと思っていたら、地域での繋がりもできてきた。それで、教えられることは教えようっていう感じで、藤野電力なんかも始めたんだよね。そのかわり、野菜とかは地域の仲間で一緒に育てたものを分けてもらったりしています。

一生続く、ものづくりライフ


奥様は、アウトドア料理研究家のすずきみちよさん。ダッチオーブンや薪ストーブを使った料理レシピを「http://fireside-essay.jp/」で連載中。鈴木家の暮らしが伝わるすてきな写真も満載です。

無理をせず、少しずつ。鈴木さんは地に足をつけて、ゆっくりと、憧れの自給自足に近づいています。しかも、無理をしていないせいか、とっても楽しそう。

自給自足というと、ストイックにすべてのことを賄うイメージがありますが、やり方次第で楽しみながら実現できるものなのだと、鈴木さんを見ていて、気づかされました。

そんな鈴木さんに、これからやりたいことをお聞きすると…。

早く家をつくりたいですね。

え! 家づくりって15年も前に終わっているんじゃ…?

いや、まだ途中です。本業や副業が忙しすぎて無休状態! 全然進んでません。壁塗り終わりにしたいけど、まだ全然塗ってないし、工房をつくる計画もあるけど、途中で止まってる。

子供部屋もつくらないといけない。「2年生までにはつくるっていったのに、3年生になっちゃったじゃん!」って、文句いわれてます(笑)。


セルフビルドに理解のあったログメーカーの方々と、一緒に建てたログハウス。入口部分に、確かにまだ作りかけの気配が…。

手づくりの暮らしは、ゴールがない暮らし。

何かを実行するときは、ついつい目標やゴールを設定してしまいがちですが、豊かさの本質とは、ただただ日々をこの手で営むことによって、見えてくるものなのかもしれません!

鈴木俊太郎さんと一緒に、「暮らしの発明家」になってみよう!
暮らしの発明家クラス@リトルトーキョー

writer ライターリスト

平川 友紀

greenz シニアライター ストーリーライター/記録家。 物語性のある記事を得意とするストーリーライター。 1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。体調を崩したことをきっかけにマクロビオティックを学び、持続可能なライフスタイルを模索し始める。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らし、コミュニティを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。平川まんぼう宛でも、郵便物が届くのが、自慢。 facebook:https://www.facebook.com/captainmanbou twitter:@captainmanbou

partner パートナーリスト

GREEN POWER

わたしたちエネルギーは、エネルギーを、じぶんごとにして楽しむプロジェクトです。エネルギーを減らしたり、つくることを楽しむ。つくったエネルギーで得られる楽しさ、幸せをみんなで共有する。エネルギーで地域が自立する。今、そんな試みが全国に広がっています。わたしたちは、greenz.jpの記事をつくること、グリーンズの学校で共に学ぶことなどを通してそんな動きをサポートし、そして共に歩みたいと思っています。 このプロジェクトは、経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。 ⇒ 特集「わたしたちエネルギー」FacebookページGREEN POWER プロジェクト WEBサイト

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