ISSUE☆おすすめの連載! 暮らしのものさし

2 years ago - 2014.07.29

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こだわりのモノだけを持ち、仲間が集う家。理想の暮らしは、誰かの真似ではなく“自分が本当に必要なもの”を知ることから。

PHOTO:藤 啓介
PHOTO:藤 啓介

どこに住み、どんな暮らしをつくるのか。本当に必要なものは何か。「暮らしのものさし」は、株式会社SuMiKaと共同で、自分らしい住まいや好きな暮らし方を見つけるためのヒントを提供するインタビュー企画です。

友人や知人のおうちに招かれたとき、部屋の雰囲気や置いてあるもののしつらえを、つい眺めてしまうことはありませんか?住まいや暮らし方には、人となりがよく現れます。また、暮らしはそれだけで成り立つものでなく、日々の仕事とも切り離せないものでしょう。

無限に考えられる選択肢の中で、なにを選び、どんな価値感で日々を暮らすかを考えることは、人生のどんなステージであっても意味あることのように思います。

greenz.jpの副編集長、小野裕之さんは2013年11月にジュエリーブランド「SIRI SIRI」を手がけるデザイナーの岡本菜穂さんと入籍。そんな小野さん岡本さん夫妻の場合はどうでしょうか。

やりたいことに妥協しない人を、メディアを通じて応援したい

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企業向けワークショップでファシリテーションをする小野さん。

小野さんは、グリーンやサステナビリティをテーマにした飲み会「green drinks」のファシリテーターとして全国を飛び回っていたり、ソーシャルデザインというキーワードで企業や行政などとのプロジェクトに取り組んでいたりと、グリーンズの大黒柱のひとりとして活躍しています。

まずは小野さんに、グリーンズへの思いについて聞いてみました。

小野さん greenz.jpのことは、「お金にはならないけど社会にとって価値があると思える活動」をきちんと取り上げているメディアだと思っていて、グリーンズに入る以前から見ていたんです。

ぼく自身、前々からメディアをつくりたいなと思っていて仲間数人と考えていた時期もあったんです。そんな方向性が合致して2009年にグリーンズに入りました。

小野さんがメディアをつくることに興味を持つようになったのは、自身が学生時代に取り組んでいたストリートダンスの経験が影響を与えているそう。

小野さん ストリートダンスをしている人と、greenz.jpで取り上げているような社会問題に楽しく取り組んでいる人との共通点は、お金にならないけど自分の好きなことをやっているってことなんじゃないかと思うんです。

やりたいことに妥協しない純粋な姿勢が好きなんですよね。ぼくはメディアを通じてそうした人を応援したかったんです。

自分の足元を大切にしたものづくり

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岡本菜穂さん PHOTO:藤 啓介

パートナーの岡本菜穂さんは、ジュエリーブランド「SIRI SIRI」を2006年に立ち上げ、伝統的な日本の職人技術と手仕事をテーマにものづくりに取り組むデザイナーです。

ひとことに“日本の職人技術”と言っても全国の地域を網羅するのではなく、現在はその多くを東京の職人とのやりとりでつくっているそう。その理由の中に岡本さんの美意識が感じられます。

岡本さん ジュエリーに限らず、いろいろな地域の要素を折衷してつくられたものに対しては以前から違和感を感じていました。

例えば地域にアクリル屋さんがあったとして、そこにアクリル屋さんができたってことにはきっと理由があるはずなんですよね。だから、たとえプラスチックでつくられたものだとしても、そこに地域性が現れてくるんです。

そう考えると、私自身がものづくりをする上で嘘のないものをつくるなら、自分が住んでいる東京の職人さんと一緒につくるのが自然なことだなと思ったんです。


「SIRI SIRI」は、スワヒリ語でチェーン(鎖)を表すsilisiliが語源。画像のジュエリーは、アメリカのオバマ大統領来日時、ケネディ駐日大使も身につけていた。

足りない要素をほかから持ってきてくっつけるのではなく、“手の届く範囲のものに価値を見出し最大限に活かす”ということ。「SIRI SIRI」のプロダクトには、その心地よさが表現されています。

岡本さん “ジュエリーを通じて伝統文化を守る”という社会への還元ということもありますが、あまり大きなものを背負ってしまうのでなく、足元を大切にして自分の身の丈を知りながら良いものづくりをしていきたいと考えています。

それぞれの仕事を通じて、小野さんからは「妥協しないことの魅力」、岡本さんからは「身の丈」というキーワードが出てきました。こうしたふたりの価値感は仕事の範疇だけに収まらず、暮らしにも現れます。

自分の生活に本当に必要かどうかを考える

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清潔感のあるすっきりとした室内。PHOTO:藤 啓介

そんなふたりのお部屋の第一印象は、まず、モノがとても少ないということ。生活感はあるのですが、余計なものがないという感じ。テレビもありません。

小野さん テレビって、あるとずっと見ちゃうんですよね。つい時間を浪費してしまうので、ずっとテレビ卒業のタイミングを狙っていたんですけど、地デジに切り替わる時にやっと卒業できました。実際やめてしまうと割とどうってことなかった感じです。

岡本さん 私の場合は、ある芸能人が逮捕されたことばかりがテレビで流れていた時に、その裏で大事なニュースが隠れてしまってることを知って“これはまずい”と感じて捨てましたね。

確かに、ニュースや情報が手軽に手に入るようになった今、テレビは必ずしも必要なものではないかもしれません。でも、「テレビはいらない!」と一刀両断するのではなく、ロンドンオリンピックの時にはレンタル業者から1ヶ月だけテレビを借りてきたこともあったそう。

モノを所有せずに必要な時だけ借りてくるという選択肢もとても新鮮です。ものごとを決めつけない柔軟な視点がそこにはあります。

小野さん モノを買うときは自分の生活に本当に必要かどうかをよく考えますね。たとえば男性単身生活者が“新生活5点セット”を買おうとする場合、そこに冷蔵庫はマストで入っているけど、もしコンビニがすぐそばにあったらいらないかもしれない。一旦考えてみるってことが大事なのかなと思います。

岡本さん うちにも掃除機があるけど、もしかしたらいらないかも。電化製品で性能が良くてインテリアにも合うものって本当に難しいですけど、ほうきの方が納得いくものが見つかるような気もしますね。

小野さん あと、ぼくは本が大好きなんですけど、“本棚を増やさない”っていう自分ルールを決めていて、本棚から溢れてしまう本は売るか友人にあげることで本を増やさないようにしています。

岡本さん 私も片付けがあんまり得意でないので、捨てる方が楽。シンプルで清潔で、こだわりのモノだけ持つ暮らしが理想。60点のものを妥協して持つよりも、100点のものが出てくるのをじっくり待つタイプですね。

でも、この家にいきなり100万円のごてごてしたソファとかは合わないし、場所に合うほどほどのものが気持ちいいんですよね。

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椅子としても使われている本棚。「ここから溢れてしまう本は手放すんです(小野さん)」。PHOTO:藤 啓介

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ディスプレイされていた土偶は友人から借りているもの。「土偶は私にとって100点ですね(笑)(岡本さん)」。PHOTO:藤 啓介

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岡本さんのお父さんがつくった椅子と、岡本さん自作のペンキで色を塗った板を置いただけのシンプルなテーブル。PHOTO:藤 啓介

「なにが必要でなにが必要でないか」や、「自分の暮らしにちょうどいいものはなにか」、ということを改めて問い直してみるということ。それが、モノだけでなく、気持ちの上でもすっきりとした暮らしをつくっていく近道なのかもしれません。

岡本さん スニーカーや洋服など、外に出ていくときのものには1万円でも気軽に買うことってあると思うんですけど、自宅で使うお皿とか、日常の中でも同じようにいいものを使っていきたいと思うんですよね。

もちろん人の手が入っているものは自ずと高くなりますけど、それでも一生使うものなので。

小野さん 長く使えないものを短いスパンで買い換える事をやめて、いいものを一度買って長く使ったら生涯投資の総額ってそんなに変わらないんじゃないかなとも思うんですよね。

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「日常使いするものはデザインだけでなく、機能も大事。このお皿は釉薬がかかっていて、汚れにくいんです」と岡本さん。PHOTO:藤 啓介

物質的な豊かさが満たされた現在だからこそ、本当に自分に必要なものを見極め、丁寧に暮らすことができる時代なのかもしれません。小野さん岡本さんのように、“自分で選ぶ、自分でつくる”という暮らしは、けっしてハードルが高いことではないように思えます。

おうちで食べるごはんは、やっぱりおいしい


「友人を家に招くと、今度は自分が招かれる。家を行き来できる関係が増えるのはやっぱり楽しい(小野さん)」。

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食にこだわりのある小野さんらしく、厳選された調味料が並ぶキッチン。PHOTO:藤 啓介

そして、小野さんが暮らしの中で大切にしていることのひとつが、おうちでごはんを食べるということ。自宅で食卓を囲む豊かな時間は、誰しもが大事にしたいと思うものです。

おふたりの暮らしの中で、料理を主に担当するのは小野さんなのだそう。

小野さん 料理は好きでずっとやっているんですけど、最初はたまたまつくってみたらおいしくできたというだけなんです。食べてくれた人が喜んでくれるのがうれしくて、続けてつくるようになりましたね。

今ではなるべく外食はスペシャルな時か、やむを得ない時だけにしています。なぜなら、おうちで食べるごはんはやっぱりおいしいから。

化学調味料で味付けされた外食ではなく、ちゃんと自炊したごはんは、口に入れた瞬間ではなく少し噛んだあとにじんわりと自然なおいしさを感じるんですよね。

食に対する深い愛を感じさせる小野さんですが、自宅で岡本さんと一緒に食べるごはんはもちろんのこと、親しい友人を招いたホームパーティーも頻繁におこなっているのだそう。

小野さん パーティーもできるだけ外ではなく、家でやるようにしているんです。参加者の持ち寄りにすると、持ってきたものでその人の性格もわかって面白いし、お金だって外食より全然かからない。いいことだらけですよね。

岡本さん 集まるメンバーによって話題が違うのも面白いよね。女の子が多いと「どういう社会にしていきたいか」っていう話になったり。

自分で料理して、友達を招いて持ち寄りパーティーをすること。一見なんでもないことのようですが、「友人とごはん」というと、つい「どこのお店にする?」という会話になってしまいがちなもの。

また、自宅で食事をしたりお酒を飲むと、外食するときよりも人と人との距離が近くなるようにも思います。多くの人がそれぞれに仲のいい友人と気軽にホームパーティーをするようになれば、もっと豊かな人間関係がそこに生まれてくるのかもしれません。

親との暮らしからつくられる感性と価値観

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岡本さんのお父さんによる抽象画。部屋に落ち着いた雰囲気を与えていた。PHOTO:藤 啓介

そしておふたりにお話を伺う中でとても興味深かったのが、岡本さんの育った環境についてでした。岡本さんが生まれたとき、すでに60歳代半ばだったというお父さんは、建築家であり、画家でもありました。

岡本さん 父の影響はかなり受けてますね。とにかく夢見がちな人だったので、普通の生活というのはあまり無くて、小学校から家に帰ると絵を書いている父がいるだけ。

母は若くして亡くなっていたので、絵を書いてばかりいることを止めるような人もなく、父と兄と私とで全員で絵を描き始めちゃうような日常でした。夢を描くことが普通だと思って育ちましたね。

放任主義でなにかを強いられることがなかったという岡本さんは、幼児の頃から自分で着る服を自分で選んでいたそう。

岡本さん 父が「予算はこれだ。あとは自分の美意識で選べ」と。3歳くらいのときから自分の服からパンツまで自分で値札見て選んでました。

多分、すごく変な組み合わせとかも着ていたと思うんですけど。そんな事が特殊だったと気づいたのは結構大人になってからですね。

岡本さんが、自身の感性を磨き、決断を重ねることでブランドを前に進めていくことができるのも、幼少期からのこうした環境が影響しているのはきっと間違いないことでしょう。

暮らしと住まいはその子どもたちにも大きく影響するもの。暮らしのものさしを作ることは、未来をつくることにもなるようです。

ふたりの組み合わせだからこそつくられていく暮らし

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ある頃からボーリングに夢中になり、建築家を引退したという岡本さんのお父さん。岡本さんにとってもお父さんと一緒に幼い頃から慣れ親しんだボーリングは、もちろん得意分野でした。

岡本さん 私は結婚というもの自体にあまり前向きではなかったんですけど、小野くんから毎晩結婚しようって言われるので、ひと区切りつけるために「じゃあ小野くんが私にボーリングで勝ったら結婚しようよ」という提案をしたんです。

おふたりの友人も一緒に参加して開かれたというボーリングの会。最初は誰もが岡本さんの勝利を信じていたそうですが、この日に限っては小野さんが序盤から絶好調。「これはもしかしたら小野さんが勝ってしまうんじゃ…?」。ゲームが進むにつれて徐々にみんなの口数が減っていったそうです。
 

結婚を決めたボーリングのワンシーン。ピンに狙いを定める小野さんの表情が真剣そのもの。

終わってみると、岡本さんの追い上げを振り切って小野さんが僅差での勝利。こうしておふたりは晴れて結婚することになりました。

小野さん 本当に運命を決めたボーリングでしたね。

岡本さん ノリで始めたのが本気になるのが面白いから好きで。でも一緒になって良かったです。

今のおふたりは、岡本さんはブランドの魅力を伝えるために小野さんのコミュニケーションの仕方を参考にしていたり、逆に小野さんは料理のお皿を選ぶときに岡本さんに相談することもあるそう。

ひとりではなく、ふたりの組み合わせだからこそ生まれる、お互いの価値観を認め、発見を楽しみ、取り入れながらつくっていく暮らし。それがきっと良い仕事にもつながっていくのでしょう。 

あなたはどんな価値観を大切にして、どんな暮らしをつくっていきますか?

writer ライターリスト

磯木 淳寛

磯木 淳寛

greenz シニアライター 食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター 自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催中。※参加者の原稿はgreenz.jpをはじめ、いくつかの媒体でも掲載されています(開催地域も常時募集中)。石巻市復興まちづくり情報交流館コンテンツ編集デスク。 ライターとしての執筆媒体は、ソトコト、Be-Pal、NORAH、季刊自然栽培ほか。連載は、季刊自然栽培「見えないものを見る」、OZmall「関東日帰り出会い旅」。近刊予定として『「小商い」で自由にくらす~房総いすみのDIYな働き方』(2016年初冬発刊予定)。 グリーンズではスクールのファシリテーターも努めています。 【Facebook】磯木淳寛 【WEB】SLOW MODERN FOOD ■『“地方で書いて暮らす”を学ぶ4日間』FBページ ■ライター・イン・レジデンス『ローカルライト』

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これまで、家づくりと年収は切っても切れない関係でした。 住みたい家に住めるのは特別な人たちだけ、そんな思い込みをなくして、好きに思い描いて、こだわり続けて暮らす。 SuMiKaは、自分にフィットする暮らしを応援したいと考えています。 どこに住み、どんな暮らしをつくるのか。 本当に必要なものは何か。 自分にフィットする「暮らしのものさし」を、探してみませんか? ⇒ https://sumika.me

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