ISSUE ものづくり

2 years ago - 2014.03.28

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創業300年の老舗ベンチャーが、日本の工芸を元気にする!「中川政七商店」13代目を継ぐ中川淳さんインタビュー(前編)

古都・奈良の風情豊かなエリアにある、遊 中川 本店(奈良市元林院町31-1)
古都・奈良の風情豊かなエリアにある、遊 中川 本店

1716年、奈良に創業して以来、伝統工芸の奈良晒の製法を守り、麻織物を扱ってきた「中川政七商店」。テキスタイルブランド「遊 中川」、ライフスタイルブランド「粋更 kisara」、暮らしの道具をテーマとする「中川政七商店」などのブランドは、年代問わず、多くの和雑貨フリークたちを魅了してきました。

また、十三代社長・中川淳さんは、『老舗を再生させた十三代がどうしても伝えたい 小さな会社の生きる道。』(阪急コミュニケーションズ)をはじめ数々の著書を出版し、その独自の経営手法やブランディング理論は、ビジネス誌などでも広く取り上げられています。

大企業サラリーマンから十三代社長へ

中川政七商店 十三代社長 中川淳さん
中川政七商店 十三代社長 中川淳さん

中川淳さんは、一般企業からの「転職組」です。京都大学法学部を卒業後、2000年に大手メーカー・富士通株式会社に入社。システムエンジニアとしてソリューション営業を担当し、上位の業績をおさめていました。

しかし、当時は、年功序列制度が根強く残る職場。次第に「成果を出したら、その成果に見合うポジションが得られるフィールドで仕事がしたい」との思いが強くなり、2002年、家業である中川政七商店に“転職”したのです。

中川政七商店は、転職先のひとつとして選んだという感じです。生家と会社の事務所が離れていたこともあって、正直、入社するまで、うちが何の商売をしているのか、よく知らなかった。親から「跡を継げ」と言われたことも一度もなかったですしね。

入社後、業務システムの導入など、経営の仕組みを再構築すると同時に、中川さんが取り組んだのは、商品開発・製造・流通・小売までをすべて自社で運営するSPA(製造小売)業態の確立です。

「製品の良さや思いを正しく伝えるには、商品企画力だけではなく、流通や販売、小売までを自社でマネジメントする必要がある」との考えから、直営店を東京・大阪・名古屋・広島などの主要都市に次々と展開していきました。
 

とはいえ、企業経営の経験も、工芸の知見も、SPA業態のノウハウも、ほぼゼロからのスタート。当時、伝統工芸の分野でSPA業態を導入している事例はありませんでした。

書籍などからひたすら勉強して、素人なりに「そもそも、どうあるべきなのか?」をゼロベースから徹底的に考えて、自分で実際に組み立てる。それを一つひとつ積み上げてきただけ。

当時の様子をシンプルにこう表現する中川さんの言葉には、新しい分野に果敢に挑戦する強い意志と、やり遂げるためにはいかなる努力も厭わない地道な姿勢がうかがえます。

「日本の工芸を元気にする!」

約300年の歴史を持つ老舗でありながら、意外にも、社是も家訓もなかった中川政七商店に、「日本の工芸を元気にする!」という会社のビジョンをはじめて掲げたのも、中川さんです。

この言葉にたどり着くまで、2〜3年、ずっと悶々と考えていました。改めて振り返ってみると、WILL(何がしたいのか?)、CAN(何ができるのか?)、MUST(何をすべきか?)の三つが重なり合う部分が、会社のビジョンたるものだったんだと思います。

このビジョンのもと、2009年には、伝統工芸業界に特化したコンサルティング事業に参入。自社ブランドを通じて培ったブランドマネジメントや流通・販売のノウハウ、仕組みを活かし、経営視点から様々な助言やサポートを行ってきました。合同展示会の開催などを通じて、工芸メーカーに不足しがちな流通をサポートする「大日本市」も手がけています。
 
2013年1月28日〜29日、大阪で開催された「大日本市」の合同展示会
2013年1月28日〜29日、大阪で開催された「大日本市」の合同展示会

また、靴下ブランド「2&9」、ハンカチブランド「motta」、日本の土産ものがコンセプトの「日本市」など、自社ブランドも堅調に増やしてきました。
 
2013年に誕生したハンカチブランド「motta」
2013年に誕生したハンカチブランド「motta」

「日本の工芸を元気にする!」は、いわば、中川政七商店の“ものさし”。中川さんの経営者としての判断基準であり、従業員一人ひとりの業務や行動の基準であり、社内外の関係者の共通意識としても根付いています。

「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、これを積極的に表現し、発信し、自分自身もこの言葉にコミットして、このビジョンにつながることを一つひとつ積み上げてきた。ようやく、掲げたビジョンと実際にやっていることが一致してきた感じですね。

「変えるべきこと」と「変えてはならないこと」

このように、中川政七商店は、わずか10年足らずの間に、SPA業態の確立、自社ブランドの拡大、業界特化型コンサルティング、流通サポートと、自らのフィールドをどんどん拡張させ、目覚ましい変化を遂げてきました。しかし、その一方で、創業以来扱い続けてきた麻織物や、奈良の特産品である蚊帳生地を、主力商品として大切にしています。

その代表的な例が、「花ふきん」。年々需要が減少傾向にあった蚊帳生地を、現代の暮らしに合わせ、布巾に仕立てたこの商品は、1995年7月の発売以来ロングセラーとなり、2008年度「グッドデザイン金賞」を受賞。

シンプルでオーソドックスな一色ものから、ポップなチェック柄、「奈良ふきん」などのご当地ふきんなど、より多様化するライフスタイルや好みに合わせ、バラエティはさらに豊かになっています。
 
ロングセラーとなっている「花ふきん」シリーズ
ロングセラーとなっている「花ふきん」シリーズ

中川政七商店は、変わることを恐れず、未知なる領域にも果敢に挑戦する「ベンチャー企業」のような側面と、地道な努力のもと、一つひとつを積み上げることで歴史を刻む「老舗」のような気風を併せ持つ、「老舗ベンチャー」のような会社。そして、そのありようは、十三代社長の中川淳さんの姿勢や生き様とも、深く重なる気がします。


後編に続きます


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松岡 由希子

松岡 由希子

松岡由希子(Yukiko Matsuoka)。大阪生まれ、奈良育ち。米国MBA(経営学修士号)取得。アントレプレナーシップ(起業家精神)を専攻。経営コンサルティング、ベンチャー企業の立ち上げなど、約10年にわたるビジネスでの実務経験を経て、物書きに転身。「持続可能な未来づくり」をコアなテーマに掲げ、グローバルな視点から、幅広いジャンルで執筆中。2008年10月から2014年3月までグリーンズライターを務める。 Twitterアカウント: @boochan

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