ISSUE ソーシャルグッド

3 years ago - 2013.09.06

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自閉症の視点でカフェ体験するインタラクティブ・ムービー「Carly’s Cafe」[Cannes Lions2013]

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連載でお届けしているカンヌライオンズ・国際クリエイティビティ・フェスティバルのソーシャルグッドな受賞作、今日はカナダからの事例をご紹介します。

他の人と世界の認識のしかたが違う。自分の気持ちをうまく伝えられない。そんな苦しみを日々抱える自閉症の人たち。彼らをさらに不幸にしているのは、社会に自閉症への理解がないこと。外見では障害がわかりづらかったり、突飛な言動につながりやすいことから、自閉症の人たちは誤解を受けやすく、社会から排除されたように感じる人も少なくありません。

Carly’s Cafe」は、そんな自閉症の人の頭の中や視点を体験できるサイトです。

サイトでまず現れるのは、「私は、自閉症によって自分がコントロールできない体の中に閉ざされています」というコピー。続いて自閉症の女性カーリー・フライシュマンさんの小さな頃からの写真のスライドショーで表示されます。

そしてインタラクティブ・ムービーが立ち上がり、カフェの中にいる人物の視点を操作できるようになります。ところが、時間が経つにつれ、視線のコントロールが効かなくなったり、突然時間の流れを無視した映像が飛び込んできたりと、動きが不安定に。

やがて視点だけでなく、動作もコントロールできないかのようになり、父親らしき男性が話しかけてきます。その男性は言います。「どうしたら力になれる?」

このインタラクティブ・ムービーの元になったのは、カーリー・フライシュマンさんの手記。コンピューターやタブレットを使って自分の考えを伝えられるカーリーさんは、自閉症の体験を本として出版したのです。

直感的に彼女の感覚を疑似体験できるこのムービーは、障碍者権利条約について話し合う会場で使われ、手記はベストセラーに。そして、多くの人が自閉症の人たちへの理解を深めることになりました。みんなが、ムービーの中の男性のセリフのように「どうしたら力になれる?」と考えるきっかけをつくったんですね。

「Carly’s Cafe」は手記をベースにしていながらも、インターネットの特性を活かし、疑似体験とSNSでの拡散ができるようにしたことで、単に本を出す以上の共感と支持を得ることに成功しました。

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カーリー・フライシュマンさんの手記「Carly’s Voice」は、残念ながら日本ではまだ出版されていません。日本で自閉症の人による本といえば、ビッグイシューから出ている東田直樹さんの「風になる」があります。この本も自閉症の人たちの悩み、その独特の感性にハッとさせられることが多い素晴らしい内容なので、この記事で自閉症に関心を持たれた方は読んでみてはいかがでしょうか。

カンヌライオンズ受賞作の連載はまだまだ続きます!引き続きお楽しみに。

(翻訳協力:モリジュンヤ

writer ライターリスト

丸原 孝紀

丸原 孝紀

greenz シニアライター 1976年京都生まれ。コピーライター(東京コピーライターズクラブ会員)。企業に社会貢献型のコミュニケーションを提案するとともに、NGO/NPOのクリエイティブを積極的にサポートしている。社会課題を解決するアイデアを提案するプランング・ユニット「POZI」のプランナーとしても活動中。

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