道端でよく見かける野菜などの無人直売所。新鮮な野菜が安価で手に入るうれしい「おすそわけ」型ビジネスは、日本では当たり前の光景ですよね。しかし、相手の良心を前提として、お互いの信頼関係によって成り立っている販売方法に、海外からの観光客はびっくりするそう。「ぼくの国じゃ、みんな盗まれちゃうかもしれない!」との声もありますが、本当にそうでしょうか?
今回紹介するのは、アメリカ全土で大規模に行なわれた無人販売所のゲリラ社会実験。計測するものは、なんと、人々の正直さ!「Are you Honest? (あなたは正直者ですか?) 」という、ちょっといじわるな質問に隠れた、この実験の本当の狙いとは一体なんなのでしょうか?
この社会実験を仕掛けたのはアメリカ人気No.1の老舗のオーガニック飲料会社、その名も「Honest Tea」 。正直さ(Honest)を自社の名前に掲げる通り、正直な商品作りをモットーにしている会社です。
このゲリラ社会実験は、彼ら自身の信念をきっかけに、「人々は考えているよりもずっと正直なのでは?」と考え、それを証明するため、数年前からはじまりました。
NYやシリコンバレー、ハリウッドなど主要30都市50カ所に、無人販売所が現れました。アメリカでは珍しい無人販売に、道ゆく人々は興味津々。冷たいドリンクを求めて近づいてみると、そこにはこんな文字が。
Are you Honest?
ただいま”正直さ”を計測しています。この実験に参加したい方は、1本1ドルでどうぞ!
ラックにはずらっと並んだHonest Teaとお金を入れるボックスがあり、その様子を隠しカメラで撮影しています。12日間行なわれた実験には、およそ1,000人もの人々が参加しました。
National Honesty Index from National Honesty Index on Vimeo.
結果は、93%の人々が正直という嬉しい報告!「The National Honesty Index」に詳しくまとめられ、地域毎/性別/サングラスをかけた人、子ども連れの人等、様々なカテゴリーの正直さが見れます。残念ながら、お金を払わず持ち去ってしまう人もいましたが、一方で、持ち去った30分後、お金だけ支払いに戻ってきた人の姿もありました。
ちなみに、実験での売上は奨学金支援を行なうNPO「City Year」に全額寄付されたそうです。
9割以上の人々が正直にお金を払って買ってくれたことに対し、Honest Tea のTeaEO・Seth Goldmanさん(以下、セスさん)はこう話します。
この実験は、アメリカの人々の信頼性にスポットを当てるのが目的でした。結果的に思っているよりもずっと正直でしたね。住んでいる街の正直さがわかることで、今より安心して暮らすことができるし、もっとその街が好きになる。僕たちの社会実験は、学者からしたら見過ごされるものかもしれないけど、この結果はアメリカの人々の魅力的で素敵な内面を示していると思っています。
「The National Honesty Index」の結果を見て、それぞれの地方紙は「L.A.はどれくらい正直?」と誇らしげに結果を発表しました。「社会実験で人々の正直さが数値的に示されることで、それぞれのコミュニティがもっと強くなるんだ」ともセスさんは言います。
また、ボストンでは他の団体によって、「財布をわざと落とし、そのうち何個戻ってくるかという社会実験」も行なわれたそうですが、こちらもほぼ戻ってくるという嬉しい結果になったそう。
『Honesty is the best policy(正直は最善の策)』とも言いますが、誠実がいちばん。お互いの信頼感が増せば、もっと気持ちよく暮らしていける街になっていきそうです。こんな風に、日本の無人販売所と「おすそわけ」型ビジネスが、海外でも広まっていったら嬉しいですよね。
一方で、日本では無人販売所での盗難が増加しているという悲しいニュースもあります。改めて、今「正直になれているかな」と問い直すときなのかもしれません。相手にも自分にも、正直に暮らしていきたいですね。
[via psfk]
この社会実験の結果をもっと見る!