行動する映画製作会社パーティシパント・メディアに注目!新作は核兵器の「不都合な真実」を描いた『カウントダウンZERO』

© 2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.

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製作会社に注目して映画を観るということはあまりないと思います。しかし、ちょっと注目して欲しい製作会社があります。その会社はパーティシパント・メディア社。と言われて「おっ」と思った方はかなりのしかも偏った映画ファンでしょう。

でも、『不都合な真実』は皆さん知ってますよね?その『不都合な真実』を製作したのがパーティシパント・メディア社なのです。この会社ができたのは2004年、一番最初に制作した作品は車椅子ラグビーを題材にしたドキュメンタリー映画『マーダーボール』でした。続いて製作したのはジョージ・クルーニー主演の『グッドナイト&グッドラック』、自由を守るため権力に立ち向かったニュースキャスター、エド・マローの伝記映画です。

この会社の製作する映画は劇映画でもドキュメンタリーでもいわゆる「社会派」の作品なのです。その後も『ファーストフード・ネイション』『路上のソリスト』『扉をたたく人』『フード・インク』、そして『ザ・コーヴ』などを製作しました。

『ザ・コーヴ』と聞いて「うーん」と首を捻った方もいるかも知れません。でもこの『ザ・コーヴ』も内容に首肯けるかどうかを別にすれば、社会派であることは間違いまりません。「社会派」の映画を観るということは、時には自分とは異なる意見にも耳を傾けるということでもあるはずです。パーティシパント・メディア社の作る作品は時にというか殆どの場合、一つの立場からの意見を主張するものです。多くの場合は同意できるものではあるけれど時には同意できないものもあります。

なぜ、この会社の作る映画がそのような意見表明の場になっているのかといえば、彼らは映画を通じて人々に行動することを求めているからです。

パーティシパント・メディア社はtakepart.comというウェブサイトを使って、映画を見た人がその主張に賛同した場合には、具体的な行動を起こせるように行動指針を示しています。例えば、greenzでも取り上げた『フード・インク』の場合、

1. オフィシャルサイトにアクセスしよう
2. ニュースレターに登録しよう
3. 食糧システムを変えるためにすぐにできる10の事について学ぼう
4. フード・インクの本を手に入れよう
5. 「Hungry For Change」のブログを読もう

という5つの行動指針が示されます。これに従えば自然とより健全な食生活を送り、自然な農業を推進するような生活が送れるようになります。

greenz/グリーンズ takepart.com Food Inc.

このように映画を見た人に行動を起こさせるためにはひとつの明確な意見がなくてはなりません。そのために映画を製作する段階で立場をしっかりと決め、それに沿う形で映画を作るのです。

そんなパーティシパント・メディアの新作がまもなく日本で公開されます。それは『不都合な真実』のスタッフが製作する「核軍縮」をテーマとした作品『カウントダウンZERO』です。

この作品は簡単に言うと、序盤でテロリストが核兵器を持ったらどうなるかということと、そしてそれは意外と容易なのだということを描きます。それによって観る者の恐怖を煽り、最後にそれを防ぐためには核兵器の廃絶が必要なのだと訴えて、観客を核廃絶への行動に誘おうとするものです。

映画は“原爆の父”オッペンハイマー博士が語る映像などもおりまぜながら、基本的には事実を積み重ねて構成されます。管理のずさんさや濃縮ウランの密売など衝撃的な事実もあり、核の問題に揺れる日本人としては非常に興味深く、本当に怖さを感じざるを得ないでしょう。そして「やっぱり核兵器は廃絶しなきゃ」となるわけです。

しかし、観る上で注意も必要です。基本的には事実を積み重ねているものの、「テロリストが核兵器を持ったら使うに決まっている」という専門家の推測も入り込むので、全てが事実であるとは言えないからです。しかし、すべてが事実ではないという事によってこの映画を批判することはできません。

それは、この映画が(パーティシパント・メディア社の他の映画と同様)まずエンターテインメントであることによって観客を引き込もうとするものだからです。エンターテインメントというのは受動的な観客を引っ張っていく娯楽です。だからこの映画も誘導的な意見をあえて使って観客を一つの意見の方へと誘ってくのです。これはある意味ではプロパガンダ的とも言えるかもしれません。しかし同時に自らのプロパガンダ性を暴露するような部分をも盛り込むことによって観るものを「騙す」ような完全なプロパガンダになることからは逃れているのです。

それによってこの意見に同意できない人でも、ひとつの意見として客観的に観ることができ、この「核兵器」という問題について社会がどのような状況にあり、自分はどのようなスタンスを取るのかということを考える材料にすることができるという点で意味があると言えるのです。

そしてこの映画、この会社が製作する映画を観ることにもう一つ意味があるのは、『不都合な真実』が典型であるように、映画が私たちの「知る権利」を担保してくれる点です。私たちは福島原発の事故のあと作業員の身元がはっきりしないというニュースに驚きましたが、この映画で描かれているウランの扱いはもっと驚くべきものです。そのような事実を知るということは、自らの判断をくだす上で非常に重要になるはずです。

「核廃絶」について考えるためには、まず映画を観て、事実を知り、そしてひとつの意見に耳をかたむける。その上で行動するかどうかはあなたが決めることですが、そのような判断を促すということこそがこのパーティシパント・メディア社が「行動する映画製作会社」であるということなのです。

『カウントダウンZERO』
2010年/アメリカ/89分

監督:ルーシー・ウォーカー
製作:ローレンス・ベンダー
出演:ミハイル・ゴルバチョフ、パルベーズ・ムシャラフ、トニー・ブレア

9/1(木)映画の日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国順次ロードショー

核廃絶に賛同の意思を表明する