アフリカがさまざまな問題を抱えていることはいうまでもない。内戦、貧困、伝染病などによりアフリカの人たちは困窮し、先進国の人々の多くはアフリカに手を差し伸べたいと思っている。しかしそのようなアフリカ現状を情報は限られ、難しい言葉で語られがちだ。でもそれがcoolなダンスミュージックと結びついたら、誰しもがその言葉を真摯に受け止めるのではないか。
ナイジェリア出身でAfrobeat poetを名乗るIkwungaはアフリカが抱える問題をアフリカンダンスビートに載せて詠う。見た目は小太りのおっさんだが…。まったく恐れ入った。まずはミュージックビデオを見てもらおう。
見てもらえばわかるように、この曲はアフリカと欧米の不均衡を主に歌っている。
The Bombs are made in London But The Bombing is in Congo.
Cocoa grows in Nigeria But we buy chocolate from Belgium.兵器はヨーロッパで作られるけれどアフリカで使われ、食品の原料はアフリカで作られるけれどアフリカ人は完成品をヨーロッパから買う。
次の一節は強烈だ
Diamonds rain in Sierra Leone But they don’t have hands to catch them. But they don’t have hands to wear them.
ダイアモンドはシエラレオーネで取れる。でも彼らにはそれを掴む手がない。でも彼らにはそれを飾る手がない。
この曲が主張するのは先進国の資本主義がアフリカの内戦を深刻化させ、貧困をエスカレートさせ、先進国は利益を得続けるという構造のおかしさである。その問題をIkwungaは
It doesn’t make any sense to me at all.
と繰り返すことで私たちに投げかける。
この耳に残るフレーズは心に刺さる。そう、本当にわけがわからない。意味がわからない。どうしてこんな世界になってしまったのか、一体どうすればいいのか。
この曲“Di Bomb”は彼のアルバム“Calabash Vol.1”に収録されているが、その売り上げは“African Alliance on Mental Illness”設立の基金として利用されるという。このIkwunga、実はメリーランド大学で精神医学の助教授を勤め、故国ナイジェリアの人たちの心の病を解消することに心を砕いているのだ。
このわけのわからなくなってしまった世界とアフリカを救うために彼は詠い、精神医学を学ぶ。アフリカにはこんな素晴らしいものがあり、素晴らしい人がいる。音楽から始まる世界への関心そして地球意識、それをIkwungaは可能にしてくれる。
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