先のイラン大統領選挙後の混乱では、大手メディアが報道規制を受けるなどする中、市民が携帯電話などを通じてTwitterなどのソーシャルメディアに写真やレポートを送信し、世界中にその情報が伝わるという現象が起きた。
これまでも特に途上国や後進国といわれる地域では、暴動や事件は特に権力側によって情報を圧殺されてきた。イランエレクションでおきた事件は、この権力によるメディア統制に風穴を開け、世界の人々の知る権利と、虐げられている人々の人権を守るための新たな地平を開いたのだ。
アフリカのケニヤでも、2008年の初め先のイランと同じような事態に陥っていた。2007年末の大統領選挙の結果に対して対立勢力が異議を申し立て、これが暴動に発展、多くの死者がでたのだ。そしてここでもその状況を伝えようとする人々がいた。そしてその人々がその活動を世界に広めようとしている。
この暴動のとき、ケニヤの市民ジャーナリストたち(ブロガーなど)が協力し、暴動の起きている場所をマッピングし、人々に知らせるという活動を行った。このときのジャーナリストたちを中心にして作られたのがUshahidiだ。Ushahidiとは、スワヒリ語で「証言」という意味の言葉、そのサイトで“Croudsourcing crisis information”と説明されているのがまさに言いえて妙で、人々が自らの目で見た“危機”の情報を共有することを目的としたウェブサイトだ。
そして、ここで提供されているUshahidi Engineはそれを実現するためのウェブアプリである。このアプリは、ウェブ上やメール、SMSなどで受け取ったデータをもとに暴力が発生した場所と時間をデータベース化し、それをGoogleMap上にマッピングするのだ。現在のところまだパイロット版だが、いくつかのプロジェクトがパイロット版で動いている。
たとえばこちらは2008年にケニヤで暴動が起こった場所である。
Ushahidhiのサイトより
他方で平和活動が起こった場所もマッピングされている。
Ushahidhiのサイトより
このKenyaのようにUshahidi自体が行っているプロジェクトのほかに、このアプリケーションを使って外部の団体が利用しているものもある。
こちらはアルジャジーラが作成したガザ地区を対象としたレポート。○はパレスティナ人の死者をあらわしている。このほかにもイスラエル人の死者、ロケット砲による攻撃、抗議行動などもマッピングされている。
これはあくまでも実験なのでデータがないが、Twitterによるレポートのマッピングも用意されている。これが実現すれば、誰でもここからtweetを見て、それをReTweetして情報を広めるという活動に参加することができるだろう。
Ushahidiがこの活動を行ううえで掲げている目標は「誰もが容易に“危機”の情報を手に入れることが出来るようにする」こと。そのためシステムはすべてオープンソースになっており、ソースコードをダウンロードし利用するのも自由だ。さらにはこのアプリ自体の開発もオープンにして、世界中から参加者を募っており、現在ケニヤ、マラウィ、オランダ、ガーナ、アメリカ、カナダなどからデベロッパーが参加している。
さらにさらに、iPhoneやAndroidといったスマートフォンで利用できるアプリケーションの開発、TwitterやJaikuといったソーシャルメディアから情報を登録するシステムの構築、GnipやMany Eyes、GeoCommonsといったデータサービスでのデータ利用、ブログ用のウィジェットの開発、などなどアプリケーションへのアクセスビリティを上げるためのさまざまな計画が進行しているのだ。
いろいろな参加方法が考えられるUshahidi、皆さんもぜひ「証言」を伝える仲間になってください。
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