地球に負荷をかけないスローなライフスタイルを提案するコミュニティカフェ「カフェスロー」(東京都国分寺市)。そのカフェスローにて、在来種の種にスポットを当てた、おいしくて楽しい「たねと食のおいしい祭り」が開かれました。今回はこのイベントの様子をレポートします!
そもそも「たねを守る」ってどういうこと?
今回の「たねと食のおいしい祭り」のイベントコンセプトの根幹にあるのは“たねを守る”ということ。では、たねを守るとはどういうことなのでしょうか?
今日、一般的にスーパーに並ぶ野菜や果物、そしてその種や苗のほとんどは、品種改良された「F1」(雑種一代)であるといわれます。F1とは、異なる性質の種を人工的に掛け合わせてつくった雑種の一代目のこと。色や形が揃いやすく、見た目のいい作物に育つように交配された品種です。病気に強く、農薬や化学肥料との相性もよい傾向があり、農作物の質・量を安定させるのに非常に便利な種なのです。
そのため、農家はこぞってF1の作物を育てて出荷するようになり、日本のスーパーにはいつでも大きさや形のそろった野菜が揃うようになりましたが、その一方で多くの品種が絶滅に追いやられてしまいました。それが、日本各地でその土地の風土に根付き、育てられてきた在来種。
在来種は、育てて種を取ってまた撒いて、と何世代も育てることができますが、育てる農家がいなくなったことで、種が絶えてしまった在来野菜は数えきれません。
しかし、在来種を育て守り続ける農家もいます。個性際立つ味や形、その土地への適応力をもつだけでなく、地域の歴史・文化が刻み込まれている在来種。そして、それを受け継ぐ人々の豊かなストーリー。そんな在来種の魅力をおいしく楽しく伝えるため、在来種の栽培農家や啓蒙団体、流通店舗や飲食店など当日はそうそうたるシードセイバー(たねの守り手)の皆さんが集結しました!
大切なたねのことを、おいしく楽しく伝える
まずは、おいしくなくっちゃ始まらない!食べておいしいと感じなければ、たねを守ると言われてもピンとこないもの。イベント当日には、在来種の野菜やお米、大豆などを販売するマルシェのほか、古来の種を大事に考えるお店の飲食ブースが出店。1日中大盛況で、たくさんの人で賑わっていました。
また、会場の一室では、豪華ゲストによるワークショップも開催。種採りをしている農家さんによる種取りワークショップや、 在来種の種を広めている方など全国で活躍しているシードセイバーの方々をゲストに、お話を聞いたり交流するワークショップ。こちらもたねに関心の高い参加者が集まり、素敵な時間が流れていました。
「たねを守るひとパートナーシップ」を結成
そして会の最後に行われたのは、集まった7人のゲストが「たねを守るひとパートナーシップ」を結ぶセレモニー。
周知のとおり、種の現状はとても厳しいものです。多国籍バイオテクノロジー企業による遺伝子組み換え、本来的な自然を否定する、種取りのできないF1種、たねの生産を海外に依存し、自立性を担保できない状況下、TPPはこれらをさらに加速させ、指をくわえていることは、安全な種や人間と自然の共生を放棄することに繋がるでしょう。
こうして、たねを取り巻く危機的な状況について確認した後、パートナーシップを結ぶ宣言がなされました。
我々は問いかけます。たねは誰のものか。バイオテクノロジー産業の知的財産でしょうか?それとも、毎年飼い続けなければいけない経済商品でしょうか?私たちは違うと判断します。たねは自然のものでしょう。土に根ざした生命(いのち)は花を咲かせ、虫や小鳥や風を味方に結実し、糧や次の生命になるべきものです。今日参加したメンバー、この会の主旨に賛同する皆様の手によって、少しでも多くの残すべき種を育て、食べ、交換し、広めましょう。
7人のゲストの方々は「たねを守るひとパートナーシップ」を結んだ証としてそれぞれの残していきたい大切な種を持ち寄り、交換!
・ ナチュラルシードネットワーク代表の石井吉彦さんからは、小松菜と冬瓜の種。
・ warmerwarmer主宰の高橋一也さんからは、のらぼう菜の種。
・ NPO法人トージバの神澤則生さんからは、神崎在来の大豆の種。
・ seeds of life代表のジョン・ムーアさんからは名前のない大豆。800年前に日本に伝えられた種。名前がないことは誰にも所属しないしできないということだから、そこが大事!とのこと。
・ 「今日はいい天気だファーム」の松島裕太さんからは黒千石という黒豆の種。
・ ネットワーク農縁代表、高橋保廣さんからは秘伝の豆。
・ poco a poco農園の和知さんからは、白いオクラの種。
未来に種を受け継ぎ守りゆく人たちの新たな提携が、これからどんな楽しくおいしい活動につながっていくのか、とても楽しみです!「在来種がよくて、F1種は良くない」とF1を否定するのではなく、大いなるその恩恵に感謝しつつ、それ以外の選択肢としての在来種というものの存在を知ること。それがまたひとつ、食やその向こう側のストーリーを楽しめるきっかけになりそうですよね。