みなさんは、いま何か学びたいこと、教えたいことはありますか?
今回紹介する「Street Academy(ストリートアカデミー)」は、「教えたい人」と「学びたい人」をつなぐサイトです。これまでに誰かと学び合うことから生まれる小さなコミュニティをたくさん作っています。
具体的には、自分のスキルや趣味を用いて、自分だけの授業が告知・開催できるというもの。これまで学校や地域学習以外での学びの場づくりには場所や時間、そして集客が難しいといういくつかのハードルがありました。
しかし、このサービスでは、すでにウェブサイトを活用することで何人もの講師を生み出しています。そこでストリートアカデミーを運営する「IntheStreet」代表の藤本崇さんにお話を伺いました。
教える場・学ぶ場を提供するために
Q.立ち上げまでのストーリーを教えてください。
藤本 過去に、アメリカ留学をしていたときにさかのぼります。ある時、私の妻がアメリカでケーキ教室を開いたんですが、ヘルシーということもあって、非常に話題になったんです。アメリカでは砂糖のたっぷり入ったケーキばかりですから、肥満が問題となっているなか好評でした。
しかし、その後日本に帰ってきてから、また東京でケーキ教室を再開しようとしたら、激戦区ということもあり、うまく集客できずに、結局彼女は教える活動を断念してしまいました。その時に思ったのが、この集客の違いは何なのかということでした。東京でも英語をしながらケーキづくりをしようとか、無添加とか砂糖の代わりに蜂蜜でケーキをつくるとか、色々工夫はしてたんです。でも、ハードルになったのは、集客だったのです。
彼女はソーシャルメディアを全く使っていなかったので、同じような関心の人を巻き込む発信力がなかったこともありました。これは一つのきっかけなのですが、コンテンツを持っていて、教えたくても、ターゲットとなるような人に出会えない現状が他の人にもあるのではないかと思ったのです。
ウェブを活用すれば解決できそうだと考え、サービスをつくり始めました。ウェブはあくまで仲介なので、オフラインで人を結びつけるサービス、学びのロングテールを目指すことに。同じものを教えても、様々な人に学びを提供することが面白いと思いますし、そういうことを追求していきたいと思っています。
土から手作りする「こけだま」ワークショップなど、ユニークな講座も
教室はワーキングスペース
Q.これまでにいくつかのコワーキングスペース、シェアードスペースとも提携されていますが、実際にストリートアカデミーというサービスの感触はいかがでしたか?
藤本 これまでにコワーキングスペースなどを25ヵ所回ったのですが、サービスと場のインセンティブが合うこともあり、同じ方向を向いて進むことができています。人が集まるコミュニティでなにか文化をつくりたいという思いの中で、学び合うことはイベントとして何回も継続的にできるので、これからも協力関係を築いていければと思っています。
教えるという軸をベースとした良質なイベントの種として、ストリートアカデミーはスペースへの集客を助けることができます。特にドロップインで利用できるスペースは、教える先生にとっても、参加者人数に応じて費用が払えるので活用しやすいです。
渋谷の電源カフェbeezや原宿のTHE TERMINALなどでは、すでにいくつもの教えるイベントが開催できていますし、ママ支援にフォーカスしたコワーキングのハニカムステージやココチなどでも、”女性”というキーワードで集客できる講座が出てきています。
好きなときに好きなものを学ぶ
Q.サービスをはじめられて半年ほどたちますが、どのような講座が人気で、多いですか?
藤本 やはり英語は多いですし、人気がありますね。しかし、一口に英語と言っても多種多様なのです。例えば、通訳メソッドをベースとした英語を教える人もいれば、TEDを活用したり、パブリックスピーキングを教える人まで。一度マーケットプレイスをつくると、競争が生まれるので、良い感じに違ったコンテンツが生まれています。また、僕が参加したなかで面白かったのは、3Dプリンターでものづくりをするというものですかね。
自分自身の学び方や気分によって、TPOによって使い分けることができることも大きな特徴です。ストリートアカデミーの学びの形は、専門学校でも同じことはできますが、学ぶ人にとっては入学金などをはじめとする煩わしい誓約などもあります。私はパートタイムで講座を開くことを推奨しているので、無理なく1ヶ月に1回とか年に1回とか、毎週やる人もいたり、様々なモチベーションの人が、多ジャンルの人がうまく混在できるようなサービスになればと思います。
集客のためのアプローチ
Q.現在までに120以上の講座が開催されてきましたが、ビジネス的に目標にしている数値などはあるのでしょうか?
藤本 半年以内には、500くらいの講座にはしたいですね。講座は模倣の要素が大きくて、講座の参加者が自分にもできそうと思って自分で講座をスタートすることもあります。キャンセルの場合どうしようとか、ライティングどうしようとかを、一緒にプロデュースしていき、イベントをつくっていきます。いまは、自発的に講座をつくってくれる人が増えてきました。
量はまだまだ少ないですが、増える速度が上がってきたので、参加する人もさらに多くなっていてほしいです。また開講に関しては一応、承認制度を設けているので、内容の確認やアドバイスを行っています。
Q.これまでどのようなアドバイスを行ったりしましたか?
藤本 本当は教えるのに情熱がある人なのに、見せ方や発信の面で伝わりきっていない講座がいくつかありました。プロフィールやコンテンツの文章も一行で反応は変わってくるので、この辺りはアドバイスすることは多いですね。
例えば、「素人です」と書いてしまっていてアピールが足りていませんよとか、何を学べて何ができるのか、どう生かせるのかというのが明確に謳っていきましょうと言っています。
他にもメイクの講座がありまして、最初は「メイクの仕方が分かっていない人に教えてあげましょう」というような発信の仕方でした。しかし、女性は一人ひとり個性があって、自分の個性を活かしたメイクの仕方次第できれいになれるということを前に出して、「あなたのきれいを見つけましょう」というコピーに変えると、よりコンスタントに集客ができるようになったという事例もあります。
サービスからコミュニティづくりへ
Q.これまでの反応や手応えはどうですか?
藤本 今はコミュニティに参加してくれている人が3タイプいます。それぞれ教える人、教わる人、場所を提供している人です。
教えてる人、場所を提供している人に関しては、共感していただけることが多いです。サービスの利用者にはもっと使い勝手の良いようにしていきたいと思っています。また、講座を立ち上げると、しっかり参加者が集まってくれて、教える人にコメントがついたり、支持が集まり、ブランドになるようになると嬉しいです。
現状でも教える人に関してはパワーユーザーもいます。何回も講座をひらいたり、60人くらいに教えたりということを趣味や好きなことを通じて行うことができています。イベントレポート、講座や感想に関しては、自社ブログを通じても発信していますのでぜひ見てみてください。
趣味的なものだけでなく、プログラマ向けのイラストレーター教室も人気
Q.今後、ストリートアカデミーの向かう先はどこでしょうか?
藤本 全国展開を目指しながら、ローカルでも活用されるサービスにしていきたですね。その土地土地のコミュニティが自然にストリートアカデミーを使うことでコミュニティ形成をしていくと理想的です。特に、所属するコミュニティを越えて、高齢者と若者が互いに学びを共有できる環境を提供したいですね。
そのようなコミュニティが自然発生していく仕組みをつくりながら、最終的にはアジア圏に行きたいと思っています。教育×ITという領域が流行っているのはもちろん、モバイルの成長もあるので。国内外で、地域の寺子屋のような学びの場がひらけてくると良いなと思います。
教えたい人が安価で学び合い、教え合うようになり、学びのコストを下げる。自分の好きなことや趣味に幸せに感じることができるようになって、みんなが主体性を持って教えて学べる場づくりをしていきたいです。教えたい人が教えて、学びたい人が学ぶ、個人にエンパワーするということを大切にしています。サービスというよりはそういうコミュニティとして認識してほしいですね。その延長線上では、ネット上は単なるきっかけに過ぎないので、リアルな場のコミュニティ形成を大切にしつつ進んでいきます!
みなさんもきっと好きなこと、趣味にしていることは持っていると思います。小さな学びの場、好きなことを共有するコミュニティをつくりたい時は、ストリートアカデミーのようなサービスが活用されるようになってくるかもしれませんね。