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お客さんとともに作りあげ、オーナーシップを生み出す仕組みを備えた飲食店「1K」がオープン

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東京都豊島区に位置する池袋駅、この駅を中心とする一帯を副都心と呼ぶそうです。現在の池袋駅西口のホテルメトロポリタン一帯に存在していた袋型の池が、袋池(丸池)と呼ばれていて、それが現在の地名の直接の由来となったとされているんだとか。

駅の付近には大規模な歓楽街があり、一日に約100万人のお客さんが訪れるとも言われるこの街に、新しい飲食店が一軒オープンします。

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1K 〜TOKYO SHARE DINING〜」は、池袋を居場所にしている人たちのためのシェアダイニング。このお店を訪れる人たちは、自分のお気に入りのお酒を持っていくことができ、 そのお酒を同じようにお店を訪れている人におすそわけすることが可能。持ち寄ったお酒から生まれるコミュニケーションを生み出すことを目指しているお店です。

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プロデュースを手がけるのは渋谷にあるワークプレイス「co-ba」や、シェアライブラリー「co-ba library」のプロデュース・運営をおこなう「ツクルバ」。co-baの運営に着手する以前から「A.P.T.lounge」というカフェを運営し、飲食店運営をしていた同社が、co-ba、co-ba libraryの運営で培ったノウハウや気づきを、飲食店に活かしスタートさせる飲食店。

飲み食いする場にかける想い

A.P.T.loungeは、2011年に池袋にオープンしたカフェ。現ツクルバの二人と、遠藤さん・工藤さんというツクルバ村上さんの友人の4人でスタート。自分たちで店を立ち上げるという経験に楽しさを見出し、ツクルバが立ち上がりました。

A.P.T.loungeを立ち上げるときにも、その場所を通じて、友人たちが交流するようになってくれたら、という想いを描いていた、と遠藤さんはおっしゃいます。

渋谷のシェアードワークプレイス「co-ba」

渋谷のシェアードワークプレイス「co-ba」

その後、co-baの運営を経て得た経験、ノウハウを活かし、新たな飲食店の運営ができるのでは、そう考え今回「1K」のプロデュースをおこないました。そのお店には、飲食店のそもそもの存在意義に対するメッセージも込められています。

ご飯は家でも食べられるものです。ですが、こだわり始めると食材の調達にも手間がかかるし、工程が複雑になってしまいます。今は、飲食店側が作りすぎてしまっているのでは、サービスしすぎているのでは、そう考えています。

作りすぎてしまうと、お客さんの関わり方を制限してしまう。お客さんが「こんなふうにお店を使いたい」、そんな想いに柔軟に対応していきたいと考えています。

貸切営業でない時間、通常営業の時間でもお客さんにオーナーシップがある状態のお店。「1K」というお店の名前は、広い空間にキッチンのスペースだけは決められているけれど、それ以外のスペースは自由に使ってもらいたいという想いを込めて付けられているそうです。

co-baの運営を経て気づいたこと

ツクルバがスペースを作る際、大切にしているアプローチが「半仕上げ」というもの。最初からすべてを完成させてから、提供を開始するのではなく、自分たちでは半分くらいを作り、あとの残りはその場所を使う人たちとともに作り上げる。そんな場のつくり方。

こうした場を設計する際の考え方はco-baの運営を通し、co-ba libraryの立ち上げを通じて培ったものだとツクルバの二人は語ります。

シェアライブラリー「co-ba library」

シェアライブラリー「co-ba library」

半仕上げで場を作ることで、その地域らしさがでやすくなります。その場所を頻繁に訪れてくれる人たちと一緒に作るお店。彼らにカスタマイズしてもらいながら、お店を作り上げていきたいと思っています。

オーナーシップをもってもらうためのシェアの仕組み

「1K」には、SAKE Libraryと呼ばれるシェア酒棚システムが存在します。これはお店を訪れる人が、自分のお気に入りのお酒をボトルキープのような形でお店に置いておく。そのお酒はその人だけではなく、ほかのお客さんも飲むことができるというもの。

「おすそわけ」とツクルバの人々が呼んでいるこの仕組は、お客さんがボトルキープしてるお酒を他の人に「おすそわけ」すると、そのお客さんにサービスチケットが発行されるという仕組みです。

自分の好きなお酒を持ち寄る

自分の好きなお酒を持ち寄る

お客さんと一緒に場所をつくり、お店の専門性をお客さんに担ってもらうためにはお酒がいいのでは、そう考えたことがお酒をシェアするきっかけとなりました。

co-baの入居者が始めた日本酒の定期購入サービス「SAKELIFE」を近くで見ていて、お酒好きな人は語りたい人も多い、そう感じました。「1K」を酒好きがうんちくを語るための場、酒好き同士がお酒を通じてつながるためのプラットフォームにしていきたいと考えています。

人と人がつながるきっかけを生み出すような仕組みを備えたお店は、その地域のハブになれる可能性を持ちます。オーナーの人柄が、人と人がつながるきっかけの役割を担うことはありますが、それを仕組み化し、他の場所でも応用していけたらおもしろいのでは、とツクルバは考えているそうです。

都市の住まい方への提案

「所有しないで利用する」。都市での暮らしは自由に使える場所が少ないため、逆にそれを楽しむことも大切なのではないでしょうか。例えば公園は共有の庭で、コンビニは共有の冷蔵庫。街の中に、自分の生活をアウトソーシングしていく。

これは公共空間の捉え方を変えることにつながるかもしれません。「1K」も、ホームパーティを街でやるような感覚で使ってもらいたいですね。

様々な実験と、提案が込められた飲食店「1K」は今週の土曜日にオープンします。オープン日の土曜日にはオープニングパーティも開催されるそうですので、「1K」が気になった方はぜひ足を運んでみてください。

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