やりたいことをプロジェクト化し、仲間を集めて、いざNPOを立ち上げたはいいものの、継続的な運営に欠かすことができないこと。それは、お金の運用・管理です。
NPOの方々にとって、自分たちの活動に共感してもらった方々からの寄付が運営資金となっているケースは多いと思います。寄付の申込みへの対応や、日々の活動・取引に使用したお金の決済・領収書等の発行といった様々な場面で、経理は大事な仕事のひとつです。
しかし、お金の管理・運用がどうも苦手…という方も少なくないと思います。本来やりたかった活動に時間を割きたいのに、事務処理に一日を費やしてしまった、なんてことも…。
そういったお金や情報の流れを上手にコーディネートできれば、活動がより充実し、寄付していただいた方々の思いも大切にできて、とってもポジティブな循環が生まれてくるのではないか?
今回は、そういったNPOのお金の流れのサポートを行なっている「KISIN-寄進-」の活動をご紹介します。
小額寄付システム「KISIN-寄進-」とは?
NPOのお金や情報の流れは、まず寄付の申し込みに対応し、日々の活動で使ったお金を管理し、最終的に活動によって生まれた成果を報告する、こういったサイクルを上手に回すことが肝心です。どの段階で「KISIN-寄進-」はどのようなサポートを行なっていくのか、スタッフの荒井さんにお話を伺いました。
荒井さん
まずはNPOの寄付集めのお手伝いからスタートします。NPOの持つWEBサイト内にシステムを提供し、継続的な運営のための寄付集めを効率よく行えるようにします。
寄付する側はWEBサイト内のシンプルな手順に沿って寄付することができます。そして寄付を受け付けた後に発生する、領収書の発行といった手間のかかる事務処理はシステムが効率的に処理していくため、お金の流れが円滑にコーディネートされていくようになります。
ここでの1番のポイントは、「KISIN-寄進-」自体がプラットフォームになるのではないということです。サイト内に寄付を募集するNPOをずらりと一覧掲載し、寄付する側は気に入った団体をセレクトするという、いわば「競売形式」のサービスもありますが、「KISIN-寄進-」のサービスは、各NPOのWEBサイトにシステムを導入すること、言わば裏方です。そういった立ち位置をとることが大事だと荒井さんは考えています。
「KISIN-寄進-」はあくまでもNPOのお金の流れを、影からサポートすることに徹したいんです。そして、NPOには活動の充実に時間をたっぷりと割いてほしい。活動の充実こそが団体の本業であり、それこそが寄付していただいた方々の願いですから。そのために「KISIN-寄進-」は全力で影からサポートしますよ、ということなんです。
きっかけは、自らの苦い経験から
自分たちが主役になるのではなく、影からのサポートに徹して社会に貢献していく。多くのマイプロジェクトを立ち上げた方々とは、少しスタンスが異なる「KISIN-寄進-」の活動。立ち上げたきっかけは、ファウンダーの塙さんの過去の苦い経験が発端だったそうです。
塙さん
在学中にインターネット通販の会社を創業したんです。業績は順調に伸びたのですが、クレジット決済代行会社の倒産の煽りを受けて、事業継続を断念しました。
会社としてはサービスレベルを上げることや新しいサービスを考えたりすることに一番力を注ぎたい。それなのに、お金周りの処理に時間をとられ、事業を前進させる時間がとれなかったんですね。結局足元までもすくわれてしまったんです。
結局、一番大切にしていたはずの全てのお客様にもご迷惑をおかけしてしまった。お金の流れをきちんとコーディネートする大切さを、身に染みて体感しましたね。
お金周りの管理・運用という作業は、実際にNPOを立ち上げて活動してみないと分からないことだと思います。欠かすことができないけど、そこに時間を取られたくもない。そのジレンマを塙さんは痛いほど体感されたそうです。
現在NPO法人は約45,000団体認証されています。特にここ2、3年、リーマンショックや震災といった社会を揺るがす出来事が相次いただため、社会の問題に真剣に取組み、自ら進んで世の中をよりよくしたいと思い、活動する人たちが増えてきました。皆さんとってもチャレンジングで純粋な思いをお持ちで、素敵な方々ばかりです。
しかし、団体の運営にお金は欠かせません。お金がないとせっかくの思いや仲間、そして信頼といったものまで失っちゃうんです。経験者は語るですよ(笑)。
会社を清算したあとは、司法試験に挑戦した塙さん。法律を学んで力をつけて、「力のなかった過去の自分にリベンジしたいという気持ちがどこかしらあった」と言います。
日々試験勉強していたときに、たまたま「寄付税制が変わる」という新聞の記事が目に入りました。「寄付」がより一般的に広がり、多くのお金がやり取りされる時代がやってくるにあたり、過去に私が経験したような、お金の流れに苦労する人たちが出てくるんじゃないか、と感じました。
「多くの人に迷惑をかけた経験がある自分だからこそ、できることがある」と思った塙さんは、自らの苦い経験をエネルギーに、今度は多くの人達をサポートすることを決めたのです。やがてその思いは、荒井さんをはじめとした仲間やスタッフを惹きつける魅力となっていきました。
「ポジティブな共感」が生む理想の寄付文化を根付かせる
一口に寄付といっても様々な形があります。その中でも多いのは、災害にあった人々へのお見舞金のような顔の見えにくい寄付です。もちろんそういった寄付は今後もあるはずですが、「KISIN-寄進-」がフォーカスしているのは、「寄付する側・寄付される側でお互い”顔の見える寄付文化”をつくっていくこと」と荒井さんは答えてくれました。
ポジティブな寄付文化を日本に根付かせたいんです。おそらく日本人が寄付をするときの気持ちとして、かわいそうとか同情とか、少しネガティブな感情から入ることが多いのではないでしょうか。でもそういった感情から始まった寄付を長く持続させることはなかなか難しい。一時的な波で終わってしまいます。
寄付する者、寄付される者、この関係を長く持続させるために必要なのは、ネガティブな感情ではなく、行動する人たちへのポジティブな「共感」です。「素敵!」「面白そう!」「一緒にやりたい!」そういったポジティブな気持ちが継続的な寄付を生み出すはず。そこで大事なのが、顔の知らない「誰かから誰かへ」という関係ではなく、お互い顔の分かる「あの人からあの人へ」という関係だと思います。
NPOが持つ魅力に共感した支援者が、寄付を行う。そんな正の循環をより大きく生み出すことが、「KISIN-寄進-」の描く夢なのだそうです。最後に塙さんがこう締めくくってくれました。
今後NPOが増え、その活躍がますます注目されていき、寄付もより一般的になっていくと思います。もちろん「KISIN-寄進-」はお金の流れを陰ながらサポートすることが主な活動ですが、その団体の魅力とは何かを一緒に考えてくこともお手伝いできればと思います。それによって寄付の相互関係を多く作ることができれば、必ずポジティブな寄付文化が日本に一般的に根付くと信じています。
チャレンジしたいと思う人を、寄付という気持ちのこもった行為で応援する。そんな社会が今よりもっと広がれば、世界はもっと「共感」と「愛」にあふれた世界になるのではないでしょうか。
(Text:和保皓介)
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