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「コミュニティの鍵は貢献にある」ミラツク代表・西村勇也さんが考える、未来をつくるための”コミュニティデザイン”とは?

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。
このコラムはグリーンズで発信したい思いのある起業家、ライター、研究者などの方々より、無償でご寄稿いただきました、感謝!寄稿にご興味のある方は、こちらをどうぞ。

どのようにコミュニティをデザインするかは、コミュニティ自体の設計図を考えるところから始まります。NPO法人ミラツクでは、組織、地域、ユース、NPOなど様々な場面を通じて今も試行錯誤を繰り返しながらコミュニティの構築と発展に取り組んでいます。


ロゴはNosignerのデザイン

ミラツクのロゴはNosignerのデザイン

コミュニティ・デザインについて考える

コミュニティ・デザインを考える時に何が必要だろう。

コミュニティは、人の集まりだ。そこで、最初にやることは、ネットワークやチームとの違いを明確にすること。コミュニティとネットワーク、チームは何が違うのか。この違いが見えないまま、コミュニティ・ビルディングを目的にしながら、実際にはネットワーク作りやチームビルディングになってします。そういう事例は様々なところで見られる。

震災復興に関わるアメリカの財団の助成担当の方と話していた時に、「”コミュニティビルディング”とアプリケーションに書かれていても、見に行ってみるとただのイベント。ネットワークは作れるかもしれないけど、コミュニティの構築には全く関係なかったりする。これは、単純に日本人のスキル不足と知識不足。」という話が出た。

これまで同一民族で移動も少なく、地域コミュニティが強い力を持っていた日本では、「コミュニティの育て方」に関するスキルや知識が不足している。

ネットワーク、チームとコミュニティの違い

では、ネットワーク、チームとコミュニティの違いは何か。確かに、これら3つは全て人が集まっているという共通点がある。しかし、ネットワークは人のつながり、チームは目標達成のための活動体、そして、コミュニティは互いに貢献し合う関係が元になっている。

ネットワークについて例を挙げると、交流会に見られるような名刺交換会はネットワークを生み出している。また、話し合いなどの要素が入り、相手のことをよく知り合えるようなものでも生まれたものが人のつながりであればネットワークとなる。

ネットワークは、人と人が知り合うことによって成り立っている。これまでの活動の中で”ダイアログBar”というカフェに集まってワールド・カフェを行ってきた。ダイアログBarでは、当初からネットワークづくりを目的にしていた。僕の友人が互いに出会って話し合い、つながっていく仕事帰りの第三の場。それがダイアログBarが目指していたものだ。名刺交換に比べて話し合える時間があることでネットワークの質は高めるが、あくまでもそれはネットワークの範疇に収まる。

チームの特徴は、より簡潔に言い表すことが出来る。メンバーと共に取り組むことがなくなると解散する。これがチームだ。取り組むことがあるからチームが成立する。

よく目にするのが、イベント運営のためにチームを作り、その後コミュニティに変えようとするパターン。これは一見理にかなっているようで実際は思っている以上に難しい。チームからコミュニティに変わるには、取り組むことが無くなった後も様々な悩みや想いを互いに共有し合える関係ができるかどうかが鍵を握っている。

コミュニティの鍵は「貢献」

コミュニティの鍵は、貢献にある。

貢献は、例えばお互いにリソースをシェアすることや(例えば、地域コミュニティでは「おすそわけ文化」や「里山文化」)、お互いに協力することができるかどうかという行動によって見ることが出来る。そして、この貢献行動の基盤となっているのが「信頼」と「共有」だ。

自分の持っている大切な物を出すための「信頼」。そして、互いに何を求めているかを背景と未来への想いを「共有」。この2つが存在する関係の中で協力が生まれ自然にリソースのシェアが起こる。ここまでがコミュニティ・デザインの入り口だ。


ミラツクのウェブサイトより

ミラツクのウェブサイトより

コミュニティ・デザインの実践

では、実践に移すために何が必要か。信頼と共有を生み出すことを目指すとき、対話の力が発揮される。これは、同時に、普通の話し合いと対話の違いを知らないと、今度は延々話し合いを続けていて信頼と共有の構築にはつながっていかないことを示している。つまり、コミュニティ・デザインを実践するために対話のデザインが必要になってくる。

信頼と共有は対話から生まれる

対話に至るプロセスを簡潔にまとめると4つのステップで表せる。

まず背景を知り合うこと(1stステップ)、そして考えを共有すること(2ndステップ)、感覚的なものを話し合えるようになること(3rdステップ)、そして想いについて話し合えるようになること(4thステップ)。これら4つのステップを共にクリアーしていくことで、一人一人が互いに対話を行える状況へと導かれていく。

対話の場を支える役割をHostと呼んでいるが、Hostが行っているのは、こうしたステップを出来る限り早く進めていくために、自分自身が対話の位置で待っているということだ。人は、未知の世界に飛び込む時に誰かが先にやってくれると歩みを進め易くなる。また、同時に4つのステップを意識的に進めていくために、話し合いのテーマやグループの人数などを変えながら対話の場をデザインしていっている。

時に、Beingや在り方といった言葉が用いられるが、これらの言葉の概念の理解よりもHostに求められる要は対話が実践出来ているかどうかだろう。つまり、4thステップにいるために常に想いを言葉にできているかどうか。想いを話し合える集団は、未来を生み出しやすい。創業期のベンチャーがチームであると共にコミュニティとして成立しているのは、想いを話し合える場が自然に存在するからだろう。

「コミュニティをデザインする」と言うときに必要なのは、設計図を持つことだ。意識的にコミュニティを目指し、同時に実践のための対話のプロセスのデザインを行えることがコミュニティ・デザインを実現してくれる。


コミュニティを力強いものにするために

コミュニティの鍵は貢献だが、貢献には一つの特徴がある。貢献は、自らが先に行うことで後に必ず返ってくる。この「先に行う」を実践するとpay forwardと呼ばれる活動になる。コミュニティの中にpay forwardを実践する人がいると、コミュニティはその人を中心に育っていく。コミュニティは、内側から自らの力で意識的にパワフルにすることができる。

pay forwardは人生と豊かにする

貢献について、1つの明確なルールがある。それは、人から受け取った貢献は受け取った分を返さないといけないというものだ。

これは、倫理観や貸し借りの話ではなく、先に貢献した場合pay forward循環が回ることで返ってくるため、先に受け取ってしまったらその分をまずは返さないと自分を中心としたpay forward循環が回らない。自らが循環の中心となるために、先に受け取った場合それを返しきる必要がある。受け取った分を返しきったとき、ようやく自分が中心になるサイクルが始まる。

そうすると、自らpay forwardによって貢献を起こすことは率直に自らの人生を豊かにするためにある。これは、豊かな実りを得るために種を蒔くことに似ている。もちろん、育つのに時間がかかる。一方で、一度実が成り始めたらその後はとても楽になるだろう。

受け取ったものをまた次にpay fowardすることで循環が回り続ける。実から種を得て、また種を蒔くことでサイクルが回り続ける。楽にもしくは自然に身の回りに対して絶えず変化を起こしている人の特徴は、このpay forward循環にある。

自ら貢献出来る機会を得るということは、pay forwardの循環に入れるチャンスに他ならない。信頼と感謝によって人生のサイクルが回っていく。

pay forwardが循環する=未来を生成するコミュニティ

結果として、pay forwardは生成のサイクルになる。有限のものを刈り取るのではなく、循環の中から得続けれるサイクルだ。このサイクルがコミュニティを豊かにしてくれる。また、何かを与えられることを待つ必要がないため、受け取ってくれる相手さえいればこのサイクルは自ら生み出せる。

コミュニティは、受け取ってくれる相手を提供してくれる。そして、コミュニティの中で誰か一人がpay forwardのサイクルを回し始めると、コミュニティ内でリソースが枯渇すること無く共に豊かさを増しながら循環を進めることができる。この循環がコミュニティを力強いものへと押し上げてくれる。

(Text: 西村勇也・NPO法人ミラツク代表)

編集長YOSHより(思いの外、長くなりました)

最近よく「メディアの本質はコミュニティである」と言われます。本当にそのとおりだと思います。と同時にコミュニティづくりそのものがゴールではなく、”失敗”を挑戦と歓迎し、”成功”をみんなで分かち合えるような仲間をつくることは、何か「こうなったらいいな!」という思いを試行錯誤しながら実現していくためのひとつの手段なのだと思います。

こちらのコラムでは、コミュニティ・デザインの鍵は貢献であり、対話であると書かれています。それはグリーンズのコミュニティにおける哲学でもあります。

green drinks Tokyo や green school Tokyo など、グリーンズの場づくりは、対話的な時間を大切にしています。今ここの時間をどう過ごすか、時間の価値がますます尊くなる中で、貴重な時間を割いてイベントに来ていただくのであれば、「聞いて」→「帰る」というよくあるパターンではなく、「聞いて」→「話して」→「気付いて」→「!」して帰っていただきたいと思っているのです。(『知がめぐり、人がつながる場のデザイン』にも相当お世話になりました!)

もちろん対話の力、その大切なエッセンスを教えてくれた先輩たちがいます。それが今回ご登場いただいたミラツク西村勇也くんをはじめ、home’s vi嘉村賢州くん、TEDxTokyo井口奈保さんという”アラサーファシリテータートリオ”です。

当初、僕にとっては対話の場はセラピーのようなものでした。言い換えれば日常とは違う非日常的な空間です。2010年秋に那須で開催された一泊二日のXYZ Actionでは、ワールドカフェやオープンスペースなどの手法を体験。特にNosignerの太刀川くんとペアを組み、3時間ひたすら自分の話をし、相手の話を聞くというAI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)では、その数時間で人と人がこんなにも深くつながれるのか!と感動したのを覚えています。

震災後の2011年8月には、山梨県清里で行われた「ユースコミュニティリーダー・ダイアログ」に参加しました。そこでは2泊3日、外の素晴らしい自然(+温泉!)も堪能しながら、自分自身から沸き上がるオーセンティックな(自分らしい)思いと向き合い、「自分ごと」同士だからこそホンモノの仲間と根っこでつながれるという強烈な経験をしました。総勢60人がひとつの円をつくってのチェックアウト(3日間すごした感想のシェアの時間)では、3日前とはまるで違うスイッチが入ったそれぞれの晴れ晴れとした顔が印象的でした。

二度目の参加となった11月のときには、対話の場のデザインの背景にはどんな仕掛けがあるんだろう?と、ホスト側のデザインミーティングに張り付き、そのエッセンスを学んだりしました。何か考えるための心の「スペース」であったり、対話のスピード感や一日の使い方を含めた時間の「リズム」など、なるほど!と思えたキーワードはいくつかありますが、そのとき明確に持ち帰ることができたことのひとつは、「みんなキラキラした何かを秘めていて、それは状況をととのえることで引き出すことができる」という確信です。

その気づきの後、”対話の場づくり”は非日常から日常へとシフトしました。かけがえのないグリーンズというコミュニティの当たり前の風景として、”対話的な”あり方を取り入れようと思ったのです。四六時中ワールドカフェをするということではありません。ひとことで言うなら「どうすればその人が秘めているキラキラした部分を引き出すことができるのか?」と問い続けるということです。

僕の編集長としての仕事のひとつは、「greenz.jp」に関わることに誇りを感じてもらえるような場をつくることです。「greenz.jp」に関わっていて嬉しいっていう状況をつくり、その温度を保つためには、なかのひとが常にグリーンズの可能性を開墾するだけでなく、関わる人に寄り添うことに時間をかけることが大切になってきます。

といいつつも対話の場づくりへの理解(+多少のスキル)は、編集長やいわゆるリーダーと言われている人に限らず、あらゆる人にとって必要なリテラシーだと信じています。深い部分の自分自身を発見してマイプロジェクトをはじめるのも産みの苦しみがありますが、つづけることも同じくらい一筋縄ではいきません。だからこそ”ないものねだり”をするのではなく、今ある人だけで、今手元にすでにあるものから未来を生み出すための格好の手段なのです。

では、どうすればそのリテラシーを高めることができるのでしょうか?それにはまずは参加者として場の可能性を感じることが近道です。僕自身も内面がググっと引き出され、思いも寄らない言葉を語ってしまったことが原体験にあります。これからもミラツクの理事として僕自身が勉強しながら、そのような入り口になれるような場をグリーンズとしてつくっていきたいと思っています。

というわけで西村くん、本当に素晴らしいコラムをありがとうございました!

編集長も理事を務めるNPO法人ミラツクについてもっと知ろう!