シャッター街と化した地方の商店街は、今やすっかり見慣れた光景になってしまいました。新しいお店が参入するにも、来客が見込めなかったり、従来の組合のやり方と合わなかったり、問題が多いのが実状です。それでも一方で「自分たちの町は自分たちの手で守ろう」と意識が高まっているのも事実。そんな中、青森県十和田市の商店街に、地元の魅力を資産として捉え、企画やデザインで付加価値をつけて広めようとするコミュニティセンターが新しくオープンしました。
十和田市の魅力を最大限に
青森県十和田市はにんにくが特産品で、最近ではB1グランプリで8位を獲った牛のバラ焼きや伝統工芸品の南部先織などが有名な所。他の地方都市と同じように十和田市商店街もここ数年来、寂しくなる一方でしたが、2008年には近くに十和田市現代美術館がオープンしたことで、商店街を通る若者も増えているのだそう。ところが、せっかく人が訪れても、商店街で売っているのは昔ながらの日用品に近いものばかり。結果、皆素通りしてしまうという悲しい状況に。
そんな中、商店街の中心部にbank towadaというコミュニティ・センターが立ち上がりました。手掛けたのは、株式会社オアゾの松田龍太郎さん。松田さんは、ご自身も青森県の出身で、これまでにも仕事で十和田市と関りがあった方。現代美術館で行われていたアートワークショップの企画を行ったり、黒にんにくの加工品をPRするプロジェクトでは、十和田市役所より委託を受けてパッケージデザインや販売促進のプロデュースを担いました。斬新なデザインで付加価値を付けて世に出し、ミュージアムショップでも展開するなど新しい売り場、売り方を開拓してきました。
十和田市との一連の取り組みがきっかけとなって、松田さんは、ヒト・コト・モノ全てにおいて十和田には魅力的なものが揃っているのに、うまく活用できていないのではないかと考えるようになります。
「もともと地元がもつ資産に、企画やデザインで+αを加えることで、経済効果を生み出して地元に還元することができないか?」
この発想が、bank towadaへとつながりました。
2011年5月28日、十和田市にbank towadaを設立しました。
街のコミュニティ・ハブへ
bank towadaには、大きく二つの顔があります。
一つは、新しい仕事を生み出す場としての顔。デザインやコピー、商品に付加価値をつけることでモノが売れるしくみを作り、これまでにはなかった仕事を生み出すことです。“bank ~”という名には、十和田のもつ資産価値を高める意味が込められています。(bank towadaを構えた交差点に、青森銀行、みちのく銀行、Softbankが顔を突き合わせて建っていたから、という洒落の効いた理由もあります)
そしてもう一つbank towadaが目指すのは、人々が自由に交流できるコミュニティ・ハブとしての顔です。
bank towadaは、仕事じゃなく家庭でもない場として、皆さんが気軽に立ち寄れるスペースになったらいいなと思っています。今はまだオープンしたばかりですが、早速色々な方にぶらりと寄っていただいています。ここに来ると面白い人に出会える、そんな場所になったら素敵ですね
「十和田の黒」のような商品販促だけでなく、十和田の町を自転車で巡ってもらおうと、レンタサイクルのサービスを始めたばかり。自転車をレンタルするだけでなく、十和田の町や人、イベントをつなぐ目的があります。現在は自転車と合わせて、十和田乗馬倶楽部で乗馬体験ができるプログラムを提供中。十和田は明治時代より馬の育成の町としても有名な所なのです。
今、地方にとって必要なのは若い人たちの働く場。活気がない商店街を元気にしていくには新しい仕事の創出が欠かせません。デザインやコピーライティングなど、クリエイティブな仕事を都心に負けないレベルで実践していける力を、地方のコミュニティセンターが発揮できたら、それほど将来を明るく照らすものはないでしょう。