最近みなさんは、いつ紙の本を手に取りましたか? もしかしたら、スマートフォンやタブレットで電子書籍を読むことが増え、紙の本を手に取らなくなったという方もいらっしゃるかもしれません。
電子書籍で読むのもいいですが、実際に手で紙を触りながら読み進めていくことができる、本ならではの魅力ってありますよね。そんな本は、ご存知の通り、木からできています。でも、本を楽しむときに、自然資源を用いてつくっていることを毎回思い出す方は少ないのではないでしょうか?
そんななか、アルゼンチンで出版された本「Tree Book Tree」が話題になっています。
気になる本の内容は、少年が彼の父の冒険をナレーターとして語り、読者に自然の中の人間や動物、そしてそれらの生息地の破壊について考えてもらうというもの。確かに環境のことについて書かれている本ですが、これだけでは特に大きな驚きはありませんよね?
この「Tree Book Tree」の驚くべき点は、本のストーリーではありません。なんと本そのものが環境に配慮した製本がされていて、不要になった際には自然にかえすことができるのです!
「Tree Book Tree」には、環境に優しいインクや中性紙が使われているだけではなく、紙に中南米原産の木の種が埋め込まれています。本を読んだ後に不要になった際は解体などせずに、そのまま土に埋めるだけで、自然と紙とインクが土の中で分解され、種だけが残るという仕組みになっているのだといいます。
とはいえ、「本当に芽が出るの?」と不思議に思いませんか? そんな疑問に答えるべく、とある本屋さんでは、この本を植えた鉢を窓際に置き、芽を出し育っていく様子を実演しました。
実際の実演の様子を収めたビデオ
「Tree Book Tree」の狙いは、8〜12歳の子どもたちに「本はなにからできているのか」を学んでもらうこと。
アルゼンチンでは、月になんと600万部の本が発行されており、一日あたり4500万ページ以上が印刷されていることになるそう。そんな紙の使用状況を踏まえて、子どもたちに「本がなにでできているか」を改めて説明するだけでなく、「本をつくるのに必要な自然資源の大切さを実感しながら学んでほしい」という思いから、この本はつくられました。
本来であれば、絵本などの子ども向けの本は、何度も読み返されるものであり、このように数回読んだだけで、土の中に埋めてしまうのはもったいないのかもしれません。
しかし、このキャンペーンで「木と子どもたちが共に成長できる」ということがうたわれているように、子どもたちが紙の本を手に取り、それを土に埋めて自然に返すという体験をすることで、自然の大切さをより深く学ぶことができそうですね。
日本でも私たちが気づいていない意外なものから、自然の循環を感じることができるかもしれません。まずは、自分の身近にあるものが、どこからどのように生まれて手元に届いたのか、思いを馳せてみませんか?
[via GOOD, ADWEEK, psfk, TreeHugger retrieved June 2015]
(Text: 岩崎史香)